閃の軌跡 SSオリジナルカップリング集   作:雷電丸

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クロウ×ヴィータ

 かつかつと音を響かせながら廊下を歩いていくヴィータ。自分が所属する貴族連合を統括する役にあるカイエン公の付き添いを終えて、ようやくこのパンタグリュエルに戻ってきた彼女は、疲労した身体を癒そうと、自分の騎士をつとめてくれているクロウがいるであろう部屋へ向かっていた。

 

 

「…あら?」

 

 

 だが、曲がり角の向こうからクロウの声が聞こえてきたので足を止める。それからこっそりと様子を窺う。何故こそこそするのかと言うと、クロウ以外に少女の声があったからだ。

 

 

「アルティナ?」

 

 

 珍しい組み合わせだった。貴族連合に協力している黒の工房から貸与された少女、アルティナ。彼女はクラウ=ソラスと呼ばれる漆黒の傀儡を使って戦うのだが、えらく事務的な喋りをするので少し浮いている節がある。

 

 任務を忠実にこなすため、ヴィータも何度か任せたことがあるのだが、だからこそクロウとアルティナが接する時間は少なかったように思う。なのに今、2人は話し込んでいる。

 

 

(まぁ、クロウは自分以外に甘いものね)

 

 

 まったく妬いていないと言えば嘘になるが、今は寧ろクロウを弄りたい気持ちの方が強かった。しばらく2人を眺めていると、クロウがアルティナの頭を優しく撫で始めた。

 

 

「…ふーん」

 

 

 アルティナは喜ぶどころか「ロリコンですね」と冷たく言い放ち、苦笑いするクロウをジト目で睨んでいた。

 

 

「クロウってば、ロリコンのね」

 

 

 絶対に否定してくるだろうが、ヴィータは自分の出した結論に異論など挟ませない。相手がクロウならなおさらだ。

 

 

「ちょっと、遊んであげようかしら」

 

 

 意地の悪い笑みを浮かべ、ヴィータは1度部屋へ戻った。そして本棚から古びた書物を取り出してぱらぱらと捲っていくと、すぐに目的のページを見つける。

 

 

「さぁ、楽しませてもらうわよ」

 

 

 妖艶な笑みを深めながら、ヴィータは楽しそうに言った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「ったく……アルティナのやつ、手加減なしかよ」

 

 

 ただ頭を撫でただけでクラウ=ソラスを呼び出しては攻撃しようとしてくるアルティナに、クロウは頭を抱えていた。なんだかんだで面倒見のいい彼は、アルティナを妹のように見ているのだ。

 

 

「あー……一眠りするか」

 

 

 部屋に戻り、さっさとベッドで寝ようかと思ったクロウだったが、そのベッドの上にちょこんと座っている人物を見て立ち止まる。

 

 

「……誰だ、お前?」

 

「こんな美人を捕まえておいて、誰だなんて……酷いわね」

 

 

 確かに座している少女の容姿には見覚えがある。だが、どうして小さくなったのかが理解できないのだ。

 

 

「で? 何でお前はそんなにちっこくなったんだ、ヴィータ?」

 

「お気に召さなかったかしら」

 

 

 ベッドの上で足を組みながら笑うヴィータ。その笑みはいつもの妖艶なものだった。

 

 

「ロリコンの貴方なら、泣いて喜ぶと思ったのに」

 

「お前は俺をどんな人間だと思っているんだ」

 

「私だけの騎士でありながら、アルティナに欲情しているロリコンでしょ?」

 

「んな訳あるか!」

 

 

 憤慨するクロウをよそに、ヴィータはぶかぶかの服を着たままベッドから降りて傍まで歩み寄る。見た目は13歳~15歳と言ったところで、いつもの大人びた顔つきは陰を潜めてあどけなさが色濃く見える。だが、ただ1つだけ子供らしくない点があった。

 

 

「…子供の割には、デカくないか?」

 

「……エッチ」

 

「うるせぇ。大きいままのお前が悪いんだろうが」

 

 

 年の割には不相応な程豊かな胸。普段のものより小さくはなっているが、それでもまだ大きいようだ。

 

 

「まさか失敗したとか言わねぇよな?」

 

「私を誰だと思っているの?」

 

 

 失敗ではないかと指摘すると、ヴィータはあからさまにむっとした表情を見せた。どうやら今の大きさで間違いないようだ。

 

 

「…あぁ、いつもより小さいから不服なのね」

 

「違う。自意識過剰もいいところだぜ……」

 

「それこそ、不服なのかしら?」

 

 

 ぎゅっとクロウの腕に抱きつき、上目遣いに見詰める。いつもよりも背丈が低いこともあり、豊かな胸が二の腕に押し付けられた。

 

 

「は・な・せ!」

 

「いけず」

 

「何でだよ!」

 

 

 その柔らかさは確かに心地好いが、それを受け入れるわけにはいかない。そういったものは、ちゃんと然るべき手順を踏むべきだと思っているからだ。古臭い考え方だと言われるかもしれないが、これだけは譲れない。

 

 

「…で、どうやって戻るんだ?」

 

「もう戻っていいの?」

 

「俺はロリコンじゃないからな」

 

「ふーん」

 

「……お前、まさかと思うがアルティナに妬いているとか言わねぇよな?」

 

「言ったら、どうしてくれるのかしら?」

 

 

 妖艶に笑み、ヴィータは再びクロウに抱き着く。その瞳には期待が確かにあり、クロウは少し答えに詰まる。

 

 

「…さぁな」

 

「逃げないでちゃんと言いなさい」

 

「はっ、お前こそはっきりと言えよ」

 

 

 互いに素直に言えず、ただただ睨み合うだけ。不毛なのは分かっているが、言わせておきながら自分は何も言わないつもりだろう。

 

 

「ふーん。オルディーネに導いてあげたのに、そんな偉そうなことを言っていいのかしら?」

 

「それを今、引き合いに出すのかよ……」

 

「なにより……クロウ、貴女は私だけの騎士でしょ」

 

「……やっぱり妬いてんじゃねぇか」

 

「あら、私はそんなこと一言も言っていないわよ」

 

 

 ぷいっと顔をそむけるヴィータ。その仕草が今の子供の姿と妙にマッチしており、どこか可愛らしい。

 

 

(まぁ、それを言ったら主導権握られるからお断りだが)

 

 

 口が裂けても言えはしないが、確かに彼女は可愛いと思う。そんなことを考えながら、なんとなくヴィータのことを見ていると、その視線に気づいてにんまりと笑う。

 

 

「やっぱり、子供の姿の方がそそるみたいね」

 

「だから、違うっての」

 

「どうかしらね~。クロウはただのロリコンなんだし」

 

「あー……ったく、分かったよ」

 

 

 頭を手荒く掻き、クロウはヴィータを後ろから抱き締めた。そしてゆっくりと、静かに言葉を続ける。

 

 

「俺が好きなのは、普段のヴィータだよ」

 

「……ふふっ、素直な子は好きよ」

 

「へいへい」

 

 

 満足げに笑うヴィータに、思わず舌打ちする。やはり彼女に折れるしかないようだ。しかし言わされたのが不服なのか、クロウは剥れた。

 

 

「…どうしたの、そんなに剥れちゃって」

 

「うるせー」

 

 

 分かっているくせに、また言わせようとしてくるヴィータのこの性格だけは、どうしても好きになれなかった。そう、この性格だけ。

 

 

「せっかくのかっこいい顔が台無しよ」

 

 

 子供の姿なのに、笑うと大人の色香が醸し出されてあの妖艶な笑みが思い起こされる。優しくて、温かくて、そしてすべてを包み込んでくれそうな愛らしさがあって───。

 

 ヴィータは座っているクロウの両足の上に跨り、自分の額をそっと当てる。互いに目をつぶり、聞こえるのは間近にある相手の息遣いだけ。それに彩りを添えるように、女性特有の甘い香りが漂ってきた。

 

 

「ちゃんと言ってくれてありがとう、クロウ。

 今はこんな姿だから、お礼はお預けだけど……嬉しかったわよ」

 

 

 その言葉に安心したかのように、ヴィータを優しく抱き締める。彼女を傷めないよう、ゆっくりと身体をベッドに預け、瞼を開く。目の前にはあどけなさよりも、いつもの大人びた顔があり、どこか安心感を与えてくれた。

 

 

「…ヴィータ」

 

「もう、甘えん坊なんだから。私だけの騎士は、随分と手がかかるのね」

 

「…お前だけには言われたくねぇよ。

 だいたい、それなりの付き合いなんだし、少しは素直になれっての」

 

「……考えておくわ」

 

「ほんっとに手のかかるお姫様だよ、お前は」

 

 

 そんな憎まれ口を叩いてはいるが、クロウの顔には嫌気など一切ない。それを分かっているから、ヴィータは目を閉じたまま微笑んだ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 数時間後───。

 

 少し寝ようと提案してから目を覚ました時、隣で寝ていたはずのヴィータの姿がなくなっていた。まだ眠っていたい欲求をなんとか堪えながら身体を起こすと、普段のドレスに着替えようとしていたヴィータがいた。

 

 

「げっ……」

 

「あら」

 

 

 思わず声を上げてしまったせいで、ヴィータもこちらに気が付いた。振り返った彼女はまだブラを身に着けておらず、豊かな乳房が見えそうになる。幸い、長い艶やかな髪によって僅かながら隠れていたので、クロウは慌てて背を向ける。

 

 

「顔、真っ赤よ。そんなに恥ずかしい?」

 

「当たり前だろ! つーか、もうちょい羞恥心持てよ」

 

「いいのよ、別に。貴方にしか見せないもの」

 

「そういう問題かよ……!」

 

 

 溜め息を零し、呆れるクロウ。そんな彼の気持ちなど露知らず、ヴィータはいつものドレスを着ないまま彼に近づき、そして後ろからぎゅっと抱き締めた。

 

 

「お、おい……!?」

 

「なぁに?」

 

「ふざけるのも大概に……!」

 

 

 苦言を呈そうとした首だけ後ろに向けたクロウだったが、その口が急に塞がれる。それも、あろうことかヴィータの唇で。

 

 

「んっ……ふざけているように、思った?」

 

「お、お前なぁ……」

 

 

 服を着ていないせいで、いつもよりもはっきりとヴィータの温もりを感じることができる。そのせいで更に緊張していると言うのに、彼女はお構いなしだ。

 

 

「……で、いつ戻ったんだ?」

 

「今さっきよ。クロウが中々離してくれなかったから」

 

「嘘つけ。単に離したくなかっただけだろ。

 お前は手のかかるお姫様なんだからな」

 

「…よく分かっているじゃない。

 そう。私は面倒なお姫様なのよ。だからちゃんと構ってくれなきゃ嫌よ。私の、クロウ」

 

「へいへい」

 

「あぁ、それと……あまり黒兎にばかり感けていると……後が怖いわよ」

 

 

 その言葉が嘘ではないと証明するかのように、ヴィータはクロウの首筋に噛みついた。

 

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