東方万能録   作:オムライス_

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去年の終わり頃から始めて、なんだかんだ100話目となります。何か感動( ̄▽ ̄)

これからもちょこちょこ書いていきます。
応援よろしくお願いします!


100話 鬼の住む町

旧都へ続く橋上で弾幕戦を繰り広げていた少女二人。

当初は見守るスタンスだった隼斗も、いい加減長引きそうだと判断したのか、只単に待ちきれなかったのか無理やり割って入って止めた

 

 

「……落ち着いたか?霊夢」

 

「私は初めから落ち着いてるわ。吹っかけてきたのは向・こ・う!」

 

 

霊夢は未だ此方を睨みつけている金髪緑眼の少女を指差し、向こうは新たに現れた隼斗を見て表情を険しくしている

 

 

「男連れ…?ますます妬ましいわ!」

 

「パルスィも会う人会う人嫉妬してたらキリないよー。本来は橋姫でしょ?」

 

 

一先ず両者を落ち着かせる事に成功した隼斗とヤマメは、互いに溜息を吐く

 

 

 

 

「へぇ、結構賑わってんだなー」

 

「見渡す限り鬼がいっぱい………私萃香以外で鬼見たの初めてかも」

 

 

ヤマメの案内により旧都内を歩く隼斗等は、地上と変わらぬ賑わいに驚いていた。

ただ違うものを挙げるならば、その住人の殆どが鬼であり、やたらと酒屋が多い事くらいだろう

 

 

「まっ、驚くのも無理ないかもね。でもこの旧都を発展させたのは鬼なんだよ。酒屋が多いのはそのせいだね」

 

「どの酒屋に入っても大抵どんちゃん騒ぎしてるから、ゆっくりお酒も飲めやしないのよ。妬ましい」

 

「……なんか悪いな、そっちの娘まで案内に付き合わせちまって」

 

「……水橋 パルスィよ。別にいいわ。あんな所で立ってても暇なだけだし」

 

「おやパルスィが余所者に優しいなんて珍しいね。今日は雪でも降るんじゃないかい?」

 

「雪って……地下にそんなもの降らないでしょ」

 

 

ーーー思わず呟いた霊夢のツッコミに、横から答える者がいた

 

 

「ところがどっこい。此処にも雪は降るんだよ。不思議な事にね」

 

 

その場の視線が一斉にそちらへ向く

 

 

「おっ」

 

「あっ」

 

 

隼斗、そしてその女性は同時に声を漏らした。

金髪のロングヘアに、星マークの付いた一本の赤い角。手には大きな盃を持っている鬼

 

 

「隼斗じゃないか!!アンタ今までどこ行ってたのさ!中々会いに来てくれないから心配してたんだよ!?」

 

「いや、どこ行ってたはこっちの台詞だっての。妖怪の山から消えたと思ったらまさか地底に居るとはな。勇儀」

 

 

嘗て伊吹 萃香と同じく鬼の四天王の一人であった鬼、『星熊 勇儀』は豪快に笑った後、隼斗に詰め寄り肩を組んだ

 

 

「まあ色々あったんだよ色々!それより久しぶりの再会だ!そこの飲み屋で一杯やろうじゃないか!」

 

「オヤジか。相変わらずだなお前は」

 

「ちょ、ちょっと隼斗!?」

 

「あー、悪りい霊夢。旧友と再会しちまったから少し付き合う事にするわ。先に行くか、どっかその辺で時間潰しててくれ」

 

「そうこなくっちゃねー!さっ、行くよ!」

 

「わかったわかった。わかったから運ぶな、運ぶなって」

 

 

半ば連行される形で酒屋へと消える隼斗を

呆然と見送った霊夢は、ヤマメの計らいにより最寄りの茶屋へと御招待された

 

 

 

ーーー

 

 

「……昼間っから随分客の多い飲み屋だな」

 

「いつも通りさ。私ら鬼は茶屋感覚で酒を喰らうからね」

 

 

店内は既に鬼の客でごった返していた。よく見れば店員の鬼までも、ちょこちょこ酒を口に運んでいる

 

 

「よし隼斗、此処座りな!」

 

 

隼斗が店内を見渡している間に逸早く席を確保した勇儀が叫ぶ。

すると店内の鬼が隼斗の存在に気付き一斉に視線が集まった

 

 

「ありゃぁ人間か?鬼の酒場に入って来るなんて命知らずな」

 

「人間ってのはすぐ潰れるからなー。酒も喧嘩もからっきしだ」

 

「おい待て勇儀さんの知り合いみたいだぞ。羨ましい!」

 

「死ね」

 

 

途端に店内は隼斗の話題でザワつきだした

 

 

「はっはっは。早速人気者だな、隼斗」

 

「なんで酒屋入っただけで肩身の狭い思いしなきゃいけねーんだ………あと死ねっつった奴後で殺す」

 

「まあまあ。この店は比較的若い連中が多いから隼斗の事を知らないんだろう。でもほら、店主は違うみたいだよ?」

 

 

勇儀が顎で指した方向を見ると、厨房入口の暖簾から顔を出して会釈する店主の姿があった

 

 

「ほれ隼斗。まずはグイッといきな」

 

「おっ、サンキュ」

 

 

再び勇儀の方へ視線を戻した隼斗が、御猪口を手に取った瞬間、店内に笑いが起きた

 

 

「くくくっ、おいおい兄ちゃん!一杯ってまさか『ソレ』でってこたぁねーだろ?」

 

「いくら酒が駄目だからって、勧められたら初めの一杯くらい豪快にいかねーとな!」

 

「そう言ってやるなよ可哀想に。人間と俺たちじゃ身体の作りが違うんだぜー!」

 

 

所々からヤジが飛び交い、若い連中が隼斗を捲し立て始める

 

 

「……はぁ。いくら知らないとは言え、命知らずはどっちかね。どれ、一つ喝を入れてやるか」

 

 

そう言って立ち上がろうとする勇儀を、隼斗は引き止めた

 

「…………いやいや別ニ?若者が言った事だ。全然キニシテナイヨ?」

 

「………瞳孔開いたままの笑顔で言われてもねぇ。夢に出てきそうだよ」

 

 

勇儀は「それに…」と付け加え、隼斗の手に視線を落とした

 

 

「御猪口粉々だけど……?」

 

 

粉々と言うか最早粉末状になった御猪口だった物を、なんとも言えない表情のまま指摘した

 

 

「こうなりゃ俺が酒の飲み方ってのを教えてやるとするかぁ!」

 

 

そこへ現れた空気の読めない若き鬼が一匹。

彼も酔っているのか図々しくも隼斗の正面に座ると、一升瓶を卓上に置いた

 

 

「酒ってのは飲まなきゃ強くならねぇ。だから俺が鍛えてやろうってんだ。どうだ?」

 

「アラ、嬉シイ……是非御教授願エマスカァ?」

 

(……最初はコイツらの為にも止めてやろうかと思ったけど………なんか私もムカついてきたし、もう知らね)

 

 

遂に唯一のストッパーにまで見放された鬼は、そうとも知らずに瓶の栓を抜いた

 

 

「いいか?ちょびちょび飲んだって酒が勿体無ぇ。こう言うのはガブッと一気n……」

 

 

刹那、彼の持っていた一升瓶の飲み口から下が消失する

 

 

「ゴクんっ」

 

 

消失した酒瓶は目の前で見つかった。

一瞬にして中身を飲み干した人間の手に握られていた

 

ザワついていた店内が静まり返る

 

 

「……へっ?」

 

 

「お前の言う通りだ。確かにちょびちょび飲んでちゃ勿体無ェわな」

 

 

空になった酒瓶を静かに卓上に置いた隼斗は、店主のいる厨房へ入り、『酒樽を二つ』抱えて出てきた

 

ドンッ!と目の前に置かれるかなり大きめの酒樽に、鬼は呆然としたまま隼斗を見た

 

 

「それお前一人分な。俺の奢りだ、遠慮せず飲め」

 

 

言い終わると同時に指を突き刺し一口大の穴を開けた隼斗は、そのまま豪快に飲み始めた

 

周りが唖然とする中、1分とかからぬ内に酒樽は空になり、コトッと言う軽い音と共に床に置かれた

 

 

「どうした?早く飲めよ。一気な」

 

「いや、その……流石にこの量を一気は……」

 

 

最早完全に酔いが冷め、酒とは関係無しに顔を青くする鬼に対し、隼斗は容赦なく言い放った

 

 

「『勧められたら最初の一杯は豪快に』……だろ?」

 

「……うっ」

 

 

その傍らではいそいそと帰り支度を始める鬼が数名

 

 

「待てコラ。誰が帰っていいっつった?」

 

 

隼斗は一瞬で回り込むと、纏めて鬼達を掴み上げた

 

 

「痛てててっ!?こ、こいつどんだけ馬鹿力だよ…!?本当に人間か!?」

 

「そうか、そう言やお前ら人間は喧嘩もからっきしとか言ってたな。なんなら表出るか?ん?」

 

 

すると一人の鬼が静観している勇儀に助けを求めた

 

 

「ゆ、勇儀さん……お助け」

 

「……喧嘩を吹っかけたのはお前らだ。ったく揃いも揃って情けない。お前らも鬼の端くれなら売った喧嘩くらい自分で責任持ちな!」

 

「……そ、そんな〜」

 

「とりあえず外行こうか」

 

 

色々悲鳴が混じり合う中、外へと連行される鬼達。

隼斗の申し出により一対全員を許可され、再び調子に乗った若者達は皆、3秒後に地面に頭から埋まっていた

 

一人酒樽を抱えて残された鬼は、勇儀監視の元酔い潰れるまで飲まされたと言う(余りは隼斗が飲んだ)

 




そう言えばこち亀の両さんは、25メートルプール分の酒を飲めるだとか

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