東方万能録   作:オムライス_

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隼斗のアルコール分解速度は世界一ィィィィ!


101話 地霊殿

 

 

「隼斗……貴方ヤケに酒臭いわね」

 

「……ありがとよ」

 

 

茶屋で時間を潰していた霊夢を迎えに来た隼斗は、彼女から開口一番にそう告げられた

 

 

「まあ色々あって酒樽一杯半を空にしたから無理もないね」

 

「いやこの短時間でどれだけ飲んでるのよ!?……あっ、失恋でもしたの?」

 

 

霊夢は同情の眼差しを送った

 

 

「ヤケ酒で酒樽かっ食らう訳ねーだろ。勇儀の言った通り色々あったんだよ。……あと少しすれば完全にアルコールが抜けるから待ってろ」

 

「樽二杯近くの酒をたった数分じゃ無理じゃないかい?」

 

「さっき言った通りだ。お前の能力が効かなかった様に俺の身体は他とは違う。本来一升程度のアルコールなら5秒と経たず分解できる。今回は量が多すぎたから時間がかかっちまうだけ」

 

 

隼斗はそう言って茶屋の長椅子に腰掛けた。その隣に座っている霊夢を勇儀は凝視した

 

 

「……何?」

 

「ふーん。アンタ人間にしては強い力を持ってるね。隼斗の連れみたいだけど何者だい?」

 

「地上の異変解決屋よ。貴女の名前、どっかで聞いたことあると思ったら前に『萃香』が言ってたわね」

 

 

その名前を聞いた勇儀は口角を上げて微笑んだ

 

 

「ほぉ、これは驚いた。萃香まで知ってるのか」

 

「最近よくウチに入り浸ってるのよ。まあ悪ささえしなければ別にいいんだけど」

 

「……戦ってみたかい?」

 

 

古きからの友。今となってはフラフラと行方知らずの彼女の居場所を勇儀は知らなかった。再開する事を楽しみにしているのも事実。しかし勇儀の口から出た質問は『それ』だった

 

 

「……おい霊夢」

 

 

嫌な予感が脳裏をよぎった隼斗は、霊夢に忠告しようとしたが……

 

 

「ええ。勝ったけどね」

 

「そうか…!!」

 

 

彼女は見事に勇儀のツボを捉えてしまった。

例えそれが弾幕戦(遊び)だったとしても

 

 

「なら私と一勝負してくれないか?」

 

「はあ?どうしてそうなるのよ……」

 

「理由なんて単純さ。アンタと戦ってみたくなった」

 

「……そっちの都合じゃない」

 

 

チラッと隼斗へ助け舟を求める霊夢だが、当の本人は既に面倒になっているのか茶を啜っている

 

 

「まっ、酒が抜けるまでもうちょい掛かる。修行も兼ねて相手してもらえ。モウシラネ」

 

「……そんな〜。はぁ、今日は厄日だわ」

 

 

項垂れる霊夢とは対照的に、上機嫌になった勇儀は敢えて彼女を挑発する様な言葉を掛けた

 

 

「心配ないさ。一応ハンデとして、この『星熊盃』を持ったまま戦う。中の酒が一滴でも溢れちまったら私の負けでいいよ」

 

 

勇儀の手には通常より大き目の盃があり、中には一升分の酒が入っていた

 

 

「……ハンデですって?幾ら何でも舐めすぎじゃないかしら?」

 

「ククッ、そうである事を願ってるよ」

 

「程々にな。……おーい団子くれー」

 

「地上の住人も負けず劣らず血の気が多いねぇ」

 

「ねえ、私もう帰っていい?」

 

 

 

ーーー

 

 

戦闘もとい弾幕戦は、当初隼斗が予想していた時間よりも長く続き、霊夢の勝ちに終わった

 

 

「はぁーあ。無駄に疲れたわ…!」

 

「いやー、やっぱり強かったねぇ!負けたよ」

 

 

勇儀はそう言いつつも尚盃を口へと傾け、それを見た霊夢は皮肉っぽく返した

 

 

「それを持ったままアレだけアグレッシブに動き回っといてよく言うわ。萃香もそうだったけど、鬼って言うのは手加減が上手いのね」

 

「いんや、本気だったさ。確かに全力では無かったけど、手を抜いた覚えはない。私は確かに『負けたんだ』」

 

「霊夢、勇儀含め鬼ってのは嘘を嫌う。コイツが此れだけ言うってのはお前の力にそれだけ驚かされたって事なんだ。もっと自身持て」

 

「…うぅ〜、わかったわよ」

 

 

霊夢を納得させた隼斗は、勇儀に近づき腰を低くして小声で告げた

 

 

「…………こんな感じの解釈で宜しいでしょうか、勇儀さん?」

 

「はははっ、悪いね」

 

「あの二人も相当仲良いね。昔馴染みって言ってたけど、隼斗って幾つなんだろ?」

 

「妬ましい……!」

 

 

旧都を抜け、更に奥へと進んで行く一同を出迎えたのは、元々地獄として機能していたであろう灼熱地獄跡地。未だにマグマが流れ、辺り一帯は高温に包まれている

 

この状態で暑いと感じているのは霊夢ただ一人だった

 

 

「何よコレ〜。途端に暑くなったわ」

 

「霊夢、身体の周囲に薄く結界を張っとけ。この先人間にはキツい場所になるだろ」

 

「ああ、その手があったか。今度から夏場暑い時は使お」

 

 

周囲に熱気が漂うその場所に、高々とそびえる屋敷。その正門付近で猫車を押す人影が見えた

 

 

「あっ、丁度良いところにお燐がいた!おーい、お燐ーっ!」

 

 

それに対しヤマメが大声で叫ぶと、お燐と呼ばれた少女が此方に気付き近付いてきた

 

 

「ありゃ、ヤマメじゃないか。それに鬼と橋姫まで。今日はどうしたの?……っと後ろにいるのは見ない顔だね」

 

「この二人は地上から異変調査の為に降りてきた人間さ。私は此処までの案内で、勇儀とパルスィは成り行き…かな」

 

「そっかそっか。あたいは火焔 猫燐。でも長ったらしくて好きじゃないから『お燐』って呼んでね!」

 

「俺は柊 隼斗。『シルヴェスター・スタローン』と呼んでくれたまえ」

 

 

隼斗は何処から取り出したのか、葉巻を咥えてそう言った。

当然霊夢がツッコミも兼ねて、弁慶の弱点へ爪先を叩き込んだ

 

 

「長ぇし原型ないじゃない!!まったく、いきなり巫山戯ないでよね。……コホンッ、博麗 霊夢よ」

 

「あはははっ!地上人って案外面白いね!気に入ったよ」

 

 

自己紹介を済ませて早々に、ヤマメ含め同行して来た三人は別れを告げた

 

 

「じゃあ後はお燐に任せた。隼斗・霊夢、事が済んだら私の友達を紹介するよ。いつも桶に入ってる娘だけど」

 

「ちゃっちゃと片付けて今度はゆっくり飲もう。ちゃんと店は選定しておくからさ」

 

「じゃあね。……ああ、妬ましい」

 

 

去っていく三人を見送った隼斗らは、お燐の先導の元正門前まで歩き出した

 

 

「アイツ終始『妬ましい』しか言ってなかったな」

 

「それより飲みに誘われてたけどまた飲む気?」

 

「言っとくが霊夢、お前もだぞ?」

 

「貴方達随分仲が良いね、羨ましいわ。……さて」

 

 

急に立ち止まったお燐は、ゆっくりと振り返った

 

 

「どした?」

 

「霊夢、スタスタロン……実を言うとね、二人を此処へ招いたのはあたいなんだ」

 

「!」

 

「……どういう事?」

 

 

 

ーーー「………私の友達を助けて欲しいんだ」

 

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

「おい、スタスタロンってなんだ」

 

「そっちはどうでも良いでしょうが!」

 

 




補足
霊夢は勇儀相手に、弾幕を当てた上で勝利しております

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