東方万能録   作:オムライス_

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今回はいつもより長めです

……はい、ネタに走ってしまいました

途中、長ったらしいセリフ文がありますが、面倒だったら読み飛ばして下さい( ̄▽ ̄)多分見たらわかります


105話 お騒がせな神様

先の激しさが嘘の様に静まり返り、静寂を取り戻した灼熱地獄跡。

漸く降りられる様になった足場で今異変を起こした犯人に対し、取り調べが行われていた

 

 

「そんで?お前さんに力を与えたのは何処の神だ?」

 

「……アレ?力を神様に貰ったって私言ったっけ?」

 

「一妖怪が神クラスの力を容易に手に入れられる訳ねーだろ。そんな事が出来るのは同じ神位だ」

 

「当たり。私に力を授けたのは神様だよ。ある日此処にやって来て聞かれたの。『この辺の地獄鴉で一番強い者を捜してる』って。だから『それなら私です』って答えたら貰えちゃった♪」

 

「貰えちゃった♪ってアンタねぇ……お陰でこっちはこんな恐ろしく暑い所に来る羽目になったって言うのに……誰よ、その神様って」

 

「…………さあ?」

 

「なら特徴とかは?格好とか容姿とか」

 

「……うーん…………忘れちゃった」

 

「………やっぱ鳥頭だったか」

 

「どうする?上の主人に頼んで記憶とか読んでもらう?」

 

「いや〜、本人が忘れてるのに記憶って読めるもんなのか?」

 

 

だが次の瞬間、お空の口から聞き覚えのある言葉が飛び出し、隼斗と霊夢は眉を顰めた

 

 

「あっ…!でもなんか『その二人は山から来た』って言ってたような…」

 

「……山?」

 

「……二人?」

 

 

その二つの単語から連想される人物……

該当者は二人、いや二組と言うべきか

 

一組目は秋を司る神の『秋姉妹』。毎年夏が終わると妖怪の山を中心に紅葉を広げたり、人間の作る穀物や果実を豊作にしたりと、戦闘が苦手な秋限定の神様である

 

しかし二人の頭の中に出てきた神は彼女等ではなかった。

神として強い戦闘能力を持ち、妖怪に神を宿らせることが出来るほどの力を持った神……

 

 

 

二人は口を揃えて言った

 

 

 

 

「「……また守矢か」」

 

 

 

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

 

 

「お疲れだったねぇ、隼斗」

 

「どーも。ってか随分静かな店だな」

 

 

異変解決を終えた隼斗は、旧都の酒屋にて勇儀と共に酒を仰いでいた。

前回入った店とは違い、何処か落ち着いた雰囲気のある店だ

 

 

「一見、表通りからはわからない隠れ家的酒屋さ。以前の隼斗の要望通りね。悪くないだろ?店も酒も」

 

「まあ、な。他の連中はどうした?」

 

「ヤマメ達の事かい?一応誘おうとしたんだけど、普段から一緒に居るわけじゃないしね。そっちこそ連れの巫女は?」

 

「霊夢なら先に帰った。疲れたから早く温泉に入りたいんだと」

 

「ありゃ残念。まっ、飲む機会くらい後々出来るだろ」

 

「なんなら勇儀も地上来いよ。歓迎するぜ?」

 

「!……そ、それってもしかしてプロp「違ぇよ」

 

 

即座に差し込まれたツッコミに勇儀は調子の良い様子で笑い、隼斗も釣られて微笑を浮かべた

 

 

「まあ冗談抜きでよ、地上の連中だってお前らに危険が無いとわかりゃ危険視もしなくなるだろ。面倒くせー蟠りなんてさっさと解消しちまおうぜ」

 

「そうだねぇ……地上にいる旧友の事も気になるし、今度出てみようか」

 

「その代わり暴れんなよ?お前を止めるのは骨が折れる」

 

「はははっ、なんなら今からヤるかい?」

 

「おいおい勘弁してくれよ」

 

 

 

 

 

未だ地上は白銀の幻想郷。

異変によって湧き出てきた地霊も収まり、博麗神社近くには間欠泉のみが残った

 

 

「……まっ、温泉が出来たって言っても参拝者が集まるとは限らないか」

 

 

博麗神社居間では霊夢が溜息と愚痴を漏らしていた。

当初の見立て通りにはいかず、集まったのはいつもとお馴染みの連中のみ。

何処から嗅ぎつけたのか白黒魔法使いや、自分を地底に送り込んだスキマ妖怪まで勝手に温泉を堪能している始末

 

 

すると突然襖が開き、今の今まで地底にいた隼斗が現れた

 

 

「あっ、やっと帰って来た」

 

「おっす、遅くなったな」

 

「何っ?結局一晩中酒盛りしてたの?」

 

「ああ、昔話で盛り上がっちまって、ついな」

 

「隼斗も酔い覚ましに温泉入ってく?」

 

「いや、また今度入らせてもらうよ。酒なら店を出た瞬間から抜けてるし」

 

「あら残念。今入れば紫と魔理沙と混浴できたのに」

 

「知ってるよ。さっき此処へ来る前に鉢合わせたからな」

 

「えっ、それでそれで?」

 

「なんで食いついてんだよ……。まあ、二人共赤面して動かなくなったな。特に魔理沙はテンパって「こここ、ここは土足厳禁だぞ!」って。ソコじゃねーだろって思ったけど」

 

「あはははははっ何それ、今度酒の席でイジってみようかしら」

 

「?」

 

 

普段とは違い、ヤケに腹黒い霊夢を見た隼斗は軽く察した

 

 

「アイツらお前の怒りを買うような事したのか?」

 

 

 

「……ふん、図々しきはバチが当たるのよ」

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「……っで、結局俺が行くのかよ」

 

 

妖怪の山を登山中の隼斗は、愚痴を交えながら雪道を進んでいた。

目的は当然、守矢神社のお騒がせ二柱を咎めに行く事だが、霊夢からは『とっちめる』様に言われている

 

その本人が同行しないのはどうかと一度考えた隼斗だったが、途中で面倒になり考えるのをやめた

 

空を見上げるといつも通り警備に当たる天狗達が巡回している。

隼斗は以前、友人である犬走 椛と将棋を指した際、彼女が『冬場の警備は霜焼けができて大変』っと愚痴っていた事を思い出した

 

 

(天狗も大変だなー)

 

 

 

「天狗も大変だなー、とか思ってる?」

 

 

隼斗は視線を空から自身の腰ほどの高さへ落とした

 

 

「こんにちは!」

 

「おう」

 

 

突然挨拶してきた少女に対し、隼斗はいたって冷静に答礼した。

その様子に、少女は少し驚いた顔をする

 

 

「普通いきなり現れて挨拶されたら驚くと思んだけど?」

 

「いきなり?さっきからあんだけ堂々とついて来てた癖にか?」

 

「!……へぇ〜、お兄さん『私の存在を意識できるんだ?』」

 

 

少女は楽しそうに隼斗の周りを回った。

まるで珍しいものでも見つけたように好奇の目を向けて

 

 

「何?お前幽霊?」

 

「違うよー。ほら、足あるでしょ?」

 

「知り合いの亡霊も足あるけどな」

 

 

そして気は済んだのか少女は目の前に立ち止まった

 

 

「まあ幽霊でも何でもいいがあんまり長居するなよ?警備中の天狗に職質されちまう……」

 

 

隼斗はそこに違和感を覚えた。

自身が今いる場所は妖怪の山山頂付近。近場に天魔の屋敷のある此処ら一帯は特に警備が厳しく、顔パスのできる自分でさえ確認の為声を掛けられる程だ

 

 

「……因みに、この山には何しに来た?」

 

 

少女は笑顔で答えた

 

 

「ふふっ、山の神様に会いに♪」

 

 

 

 

 

 

東風谷 早苗は目を細め、遠方より歩いてくる知り合いの男を凝視していた

 

 

「………えーと、確かにアレは隼斗さんだよな〜?」

 

 

瞬きし、よーく目を凝らして見てみるも、結果は同じ。

間違いなく『柊 隼斗が少女を肩車して』歩いて来ていた

 

やがて早苗の目の前で歩みを止めた隼斗は、やや疲れ気味に挨拶をした

 

 

「……よお」

 

「……どうも。………えと、お子さん居ましたっけ?」

 

 

改めて隼斗の頭上に目をやると、楽しそうに周囲を見渡す少女の姿があった

 

 

「はぁ、俺はさぁ……俺はだよ?タダ異変解決の仕上げの為に山を登ってきたんだ。ウチの巫女は人使いが荒いからな。……それが何で子守しながら登山する羽目になるんですかねぇ?教えて下さいよ早苗さん」

 

 

半ば八当たり気味に早苗へモヤモヤを向ける隼斗。

早苗は少し考えた後、掌にポンっと拳を乗せて二言

 

 

「成る程、この幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね!」

 

「……よくおわかりで」

 

 

隼斗は肩の上に跨っている少女を両手で掴むと、ゆっくり地面に降ろした

 

 

「……あれ?肩車はもう終わり?」

 

「終わりだ。目的地に着いたからな。…でだ早苗、神奈子と諏訪子はいるか?」

 

「はぁ、お二人でしたら今留守にしてますけど……」

 

「はい骨折りパターン!」

 

 

隼斗は顔を手で覆い、天を仰いだ。

そのままヤケクソになって意味も無く最大火力の破道をぶっ放したくなる衝動に駆られたが、何とか僅かな自制心で押さえ込む

 

 

「……『こいし』、残念ながら互いのターゲットは不在だとよ」

 

「みたいだねー。うーん、どうしようかなー?…………あっ、そうだ。ねぇ隼斗」

 

「ん〜?」

 

 

無気力状態で雪道に突っ伏している隼斗へ、少女はゆっくり近づき見下ろしながら言った

 

 

「私と勝負しない?」

 

「……」

 

 

普段なら即答で「なんでだよ」っと一蹴している隼斗も、この時ばかりは迷った

 

 

「お姉ちゃんから聞いたよ。昨日地霊殿でお空を倒したんでしょ?」

 

「……知っててついて来てたのか?」

 

「うん。私も山の神様にペットを強くしてもらおうと思って♪

でもその前にお姉ちゃんでも手に負えなかったお空を倒したって言う人間に興味が出てきたの」

 

 

相変わらず表情は和かながら、見た目に似つかわしくない力の質を、隼斗は感じ取った

 

 

「そゆことね。……いいぜ、丁度俺も不満を発散したいと思ってたところだ」

 

「やった♪じゃあ早s「ただし…」

 

「俺に勝てなかったらペットの件は諦めな。また異変解決に行くのは御免だからよ」

 

 

その条件にこいしは不満の声を漏らす、と同時に無意識なのか挑発めいた言葉を口にした

 

「えぇー!?………うーん……でも『勝てばいいんでしょ?』」

 

「ああ、勝てればな」

 

「ちょっ!?神社の前でやらないで下さーい!!」

 

 

ーーーカッ!!

 

 

早苗の悲痛な叫びは両者の繰り出した弾幕によって掻き消された

 

 

 

 

 

ーーー後にこの戦いを茫然と眺めていた東風谷 早苗(巫女)はこう語った

 

 

「勝ったのは隼斗さんです。まあ大体予想はしてましたが……。

 

それはもう開幕直後から激闘でした。何しろ人外同士の戦いですからね。

……はぁ、その割には周囲にあまり戦跡が見当たらないって?

 

皆さんスーパーアーマーってご存知ですか?そうです、如何なる攻撃を食らおうと『ダメージを受けたモーションが起こらず、一方的に攻撃ができる』アレです。

……正にスーパーアーマーを纏った隼斗さんは、飛び交う弾幕を物ともせず、生身で叩き落とし始めました。

 

…えっ?。弾幕ごっこは被弾したら負けではないか、ですか。

確かにルール上ではそうなります。

でもそれはどちらかが『敗けを認める』と言った形で行う自己申告の様なものなので、戦える状態であるならば継続する事もあるんです。

 

……話を戻しますね。そんな『半無敵状態』となった隼斗さんはどんどん少女との距離を詰めます。最初は少女も負けじと弾幕を打っていたんですが、段々と狼狽の色を見せ始めました。

 

無理もありません。止めようにも自身の攻撃が全て力技で完封され、尚且つ確実に距離を詰めてくる六尺男。私だったらトラウマものです。

 

そしていよいよ少女が戦意を喪失した頃、勝負は決まりました。隼斗さんは一発の小さな霊弾を放ちコツンッと少女に当てて一言。

 

『参ったか?』

 

 

……最後こそ優しく勝ちましたが、戦闘中の彼の姿は鬼神そのもの。余程苛立っていたんでしょうねぇ。そんな時に少女は勝負を挑んでしまった…と。気の毒に。

 

最後になりますが、私はこの戦闘を見てこう思ったんです。

 

 

 

……『大人気ないなぁー』っと」

 

 

 

 

 

昼過ぎ頃、守矢が一柱・洩矢 諏訪子、カエル

 

 

「あれ?隼斗来てたんだ?」

 

「確保」

 

 

ガシッと面と向かって頭を掴み上げられた諏訪子は、宙ぶらりんのまま苦笑いで尋ねた

 

 

「あ、あれあれ?もしかして隼斗、怒ってる?」

 

「そう思うか?」

 

 

冷ややかな返答。

諏訪子は何故か無意識の内に、掴み上げられたまま気を付けの姿勢を取っていた

 

 

 

 

「産業革命…?」

 

「うん。……ほら、此処で科学的な事が出来る所と言えば『河童の工場』でしょ?」

 

「……ああ、前にロケランで撃たれたの思い出した」

 

「ロケラン?……でも外の世界と比べても技術とか遅れてるじゃん?それで神奈子は資源を得るために核エネルギーに目をつけたって訳。神奈子はそう言うの好きだからねー」

 

「はぁー、それで異変にまで発展してたら世話無ぇだろ。こちとら灼熱地獄に観光行く羽目になったんだからな」

 

「あはははは……、お騒がせしました」

 

 

隼斗はそれだけ聞くと、早々に踵を返した

 

 

「……よし。じゃ、帰るわ」

 

「神奈子には会っていかなくていいの?もうすぐ帰ってくると思うけど」

 

 

すると隼斗はある一点を指差して叫んだ

 

 

「八坂 神奈子!きさま!見ているなッ!……なんてな」

 

 

そして帰路につく隼斗

 

指された方向へ振り返り、ひそかに笑う諏訪子

 

柱の陰で狼狽する神奈子

 

 




※こいしについては戦闘後、大人しく帰りました´д`

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