東方万能録   作:オムライス_

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お待たせしました!漸く108話投稿です




108話 法界に囚われし僧侶(後編)

 

その昔、肉親を亡くしたばかりの僧侶が居た。

僧侶は最愛の家族の死から、『死そのもの』を極端に恐れるようになり、その日から彼女の死に対する抵抗が始まった。

元来学んでいた法力を捨て、妖力・魔力による術を身に付ける事により、彼女は晴れて不老長寿を手に入れた

 

 

ある日一匹の小妖怪が僧侶の住む寺へ現れた。

事情を聞けば、近隣にある村に立ち寄ったと言うだけで武器を手にした村人から追い回されたらしい

 

僧侶は妖怪を寺に匿った。

それは善意からではなく、飽くまで自身の魔力を維持する為に。

以降、僧侶は己が欲のためにそう言った妖怪を救済し続けた

 

 

 

そうした日常を送る中で、僧侶はある事に気がついた

 

 

ーーー助けた妖怪は皆身体に傷を負い、悪意のある無しに関わらず人間から迫害を受けている事に………

 

 

彼女に心境の変化が訪れたのはそんな妖怪達を見て来たからなのかも知れない

 

いつしか僧侶は本心から妖怪を護りたいと思う様になった

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

静まり返った船内。

しかし壁や床に付いた弾痕を見れば、つい先程まで弾幕戦が繰り広げられていた事がわかる

 

その中で壁に寄りかかるのは、この船の船長である村紗 水蜜。

目の前に立つ二人の巫女との弾幕戦に敗れたのだ

 

 

「全く、手間かけさせないでよね!」

 

「二対一とは言えここまで強いとはね。参った……降参だよ」

 

 

村紗は両掌を目の前で上げた後、埃を払いながら立ち上がった

 

 

「そっ。なら先に進ませて貰うわね」

 

 

そう言って立ち去ろうとする霊夢だったが、村紗の言った次の言葉で再びその足を止める事となった

 

 

「どうぞご自由に。宝は元より、この船には私の仲間と貴女達以外何も『載ってない』もの」

 

「…………へっ?」

 

 

素っ頓狂な声を漏らし、時が止まったかの様にその場に静止した霊夢へ、村紗は片手を立てて謝罪した

 

 

「いや〜ゴメンゴメン。あれ、貴女達二人をこの船に留まらせておく為の方便なんだ」

 

「…………OK、遺言はそれで良いわね?早苗、追加であと百回コイツぴちゅらせるわよ」

 

「落ち着いてください霊夢さん、瞳孔開いてますよ。……えっと、何故そんな事を?」

 

 

霊夢を羽交い締めにしながら、早苗は事情を尋ねた。それは彼女も一巫女として、村紗の軽い言葉の中に含まれていた、とある想いを感じ取ったからなのかも知れない

 

 

そして二人は、村紗の口からその目的を告げられる

 

 

「一千年前……魔界に封印された僧侶、『聖 白蓮』を助け出す為だよ」

 

 

 

 

 

 

 

僧侶はその人柄からか人間からの人望も厚く、妖怪問わず多くの者から親しまれていた。

ある日村の外で道に迷ったと言う少年を保護した。少年は寺で平穏に暮らす妖怪達を見て大層驚いていたようだ

 

 

少年は僧侶に問うた

 

 

『何故妖怪と暮らしているの?父ちゃんが言ってたよ。妖怪は人間を食べちゃうんだって』

 

 

僧侶は答えた

 

 

『皆が皆そうではありません。中には争いを好まない妖怪もいる。人間と同じなのです。こうして歩み寄ることだって出来るのですから』

 

 

少年は純粋にその話を聞き入れていた。

彼女が村まで送り届ける仕度を整える迄の間、寺の妖怪達とも打ち解け、共に遊ぶ程に

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー明くる日、寺に数名の人間が訪れた

 

 

編笠に独特の法衣、印の書かれた札が巻きつけてある錫杖……

 

 

『……ッ』

 

 

僧侶は悟った。この連中が挙って現れる時、それは即ち『妖怪退治』を意味している事を

 

 

 

 

『……聖 白蓮だな?』

 

 

 

 

ーーー彼らは近隣の村で雇われた陰陽師だった

 

 

 

偶々どこかで見られたのかも知れない。

昨日助けた少年から此処の話を聞いたのかも知れない。

元々目を付けられていたのかも知れない

 

要因となるべき事項はいくら考えても霧が無く、妖怪との関係が露見すると一転、これまで築いてきた人望など無かったことの様にひっくり返ってしまった

 

 

 

『……ふん、妖怪に加担する悪魔め』

 

 

 

死を拒み、人の道をも捨てた

 

元人間の身でありながら妖怪との共存を望んだ僧侶は、この日を持って人間界から追放された

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は嘗て人から恐れられて妖怪となった身。そんな念縛霊だった私をあの人は解放してくれた。だから何としても助け出したいんだ」

 

「恩返し……ですか」

 

「でも、私達をこの場に足止めする理由は何?」

 

 

村紗は、霊夢等の持っているUFO型オブジェクトを指差して答えた

 

 

「貴女達の持っているその破片は、聖の封印を解くために必要な物。だから『魔界に着くまで』時間を稼ぐ必要があった」

 

「ふーん、このヘンテコな物体がねぇ………ん?魔界に着くまで?」

 

 

一度間を置いて反復する霊夢へ、村紗はまたも軽い調子で謝罪を入れた

 

 

「この船は元々魔界に向かう様自動操縦にしてあるの。だから……ゴメンね?」

 

 

 

 

ーーー

 

 

法力の力を使って幻想郷を飛び回っていた船は、『飛倉の破片』を持った霊夢達が乗船した事により、自動的にその進路を魔界へと変えていた

 

異次元の壁を越え、瘴気漂う魔界へと到着した船の甲板では、魔理沙が呆然と一変した景色を眺めていた

 

 

「凄ぇなー。此処が魔界かぁ……」

 

 

人間界とは大きく異なる緋色の空。そこに太陽や月は無く、しかしそう言った明かりが無くとも大地はしっかりと目視できた

 

周囲に建造物も無ければ誰かが生活している集落すら無い。あるのは岩場と荒野の様な景色ばかり

 

隣に立つ一輪も初めての魔界には少なからず驚いている様で、興味深そうに眼下を眺めている

 

 

「!、見つけた…!」

 

「んん?……おっ、大それた結界が張ってあるな」

 

 

一輪の視線の先を追うと、地上からドーム状に広がる浅葱色の結界が展開されていた

 

 

「このままじゃ船が降りられないな。さっき言ってた何とかの破片があれば解けるんじゃないのか?」

 

「うーん、その筈なんだけど……。『星』が言うにはそれで封印を解くための法力が溜まるって」

 

「星?」

 

「元妖怪の毘沙門天。まあ代理だけどね。彼女も聖を助けようとしている仲間の一人なの」

 

 

 

「……『大事な物』を失くす位のそそっかしい性格が玉に瑕だけどね」

 

 

二人の会話に割って入ってきた声。

振り返れば船内から現れた妖怪鼠が甲板に上がって来ていた。

怪訝な顔をする魔理沙を他所に、一輪は慣れた様子で話し掛けた

 

 

「ナズーリン、戻って来てたの?」

 

「うん、今し方。……中で巫女二人に会ったよ。飛倉の破片を集めてくれたみたいだね。ありがとう」

 

「でも結界とやらは解けてないぞ?」

 

「心配ないよ。ご主人がその為の準備をしている。後は君の持ってる破片を合わせれば完成だ」

 

「なんだ、合わせないと駄目なのか。じゃあ霊夢達と合流するかな」

 

 

 

「……にしても、折角捜索に出て貰ったのに無駄足になっちゃったわね」

 

「いんや、案外そうでも無かったよ」

 

「?」

 

 

船内へ駆けて行く魔理沙を見送ったナズーリンは、やれやれといった感じで笑った

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

霊夢達の持っていた飛倉の破片が合わさった事で、飛倉の本体である船が光を帯び始めた。

船首の上では、何処と無く虎をイメージさせる風貌の僧侶『寅丸 星』が、その手に宝塔を持ち、合わさった飛倉の破片に翳した

 

 

ピカッ!ピカッ!と結界と船が共鳴するかの様に数回瞬き、やがて結界は淡い光に包まれた

 

 

「……これで封印は解けた筈です。地上へ降りましょう」

 

 

村紗操縦の元、船は魔界の地へと降り立った

 

 

 

 

 

先程まで物理的干渉を阻んでいた結界内部は瘴気など無く、驚く程に空気が澄んでおり、法力の力なのか清浄な場所となっていた

 

 

そして奥へと進む一同を出迎えたのは、一人の女性。

長めの金髪に紫のグラデーションが入った髪、黒を強調したドレスに裏地が赤色のマントを羽織っているため、一見してみると寺の僧侶と言うよりも教会の修道女の様な見た目であった

 

 

イマイチ反応の薄い霊夢等三人とは対照的に、彼女を慕う面々は歓喜の声をあげた

 

 

 

 

「永らく見ていなかった。この世界に光が満ちている」

 

 





此処で漸く聖姐さんの登場です。
そして早々に退場したウチの主人公はどこへ……?
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