魔界って聞くとガッシュ・ベルを思い出す
こどもでしょうか?いいえ、大人です
ほんのりと明るい光を纏いながら現れた聖 白蓮。
既に感極まった乗組員達が、彼女の周りに駆け寄って各々の言葉を述べている
『ーー!ーーー!!』
それを遠目で見ている巫女・魔法使い・神の三名は、自分達が空気になりつつある事を自覚しながら、今後のことについて思案していた
「どうする?一応今異変を起こした連中の親玉はあの僧侶っぽいけど」
「別に何か悪さしたわけでも無いですし、このままでも良いんじゃないですか?」
「兎に角事情を聞いてみないことには何とも言えないわね」
そうこう話している内に聖が目の前まで歩み寄り、深々と頭を下げてきた
「貴女方が私の封印を解く為にご援助して下さったと聞きました。まずはお礼を申し上げます。ありがとうございました」
「あっいえ、どうも」
釣られてお辞儀を返す早苗を尻目に、霊夢は後方に視線を移した。既に村紗含め他の乗組員が運航の準備に取り掛かろうとしている
「既にご存知かも知れませんが、私は聖 白蓮と申します。もし宜しければ貴女方のお名前を伺っても?」
「東風谷 早苗です」
「霧雨 魔理沙だぜ」
「博麗 霊夢よ。……結果的にそうなっただけだし気にしなくていいわ。それより一ついい?」
「はい、何でしょう?」
「貴女、人間も妖怪も平等な世界を望んでるんでしょ?私は異変解決屋である前に妖怪退治も受け持ってる訳なんだけど……もし後ろのアイツ等を退治するって言ったらどうする?」
「……」
その質問に聖は表情を変えた。和やかなものから真剣な顔付きへ。
しかし決して敵意を出さず、飽くまで話し合うスタンスを保ちつつ話し始めた
「……私は彼女等を護ります。以前はそうしなかったが為にあの子達まで地下深くに封印されてしまった。あの子達は千年間もこんな私を慕ってくれていたのですから」
「なら妖怪側について、『人間の敵』になるって言うのね?」
「私とて元人間の身。人間の味方でもあります。唯、今まで虐げられてきた妖怪達を護る為なら戦う覚悟もある……というだけです」
「……そう」
霊夢はそれ以上何も言わず、暫しの睨み合いが続く
「ん?」
そんな空気の中、魔理沙は結界内部のある変化に気が付き、周囲を見渡した。
それを見た早苗も同じ様に見渡すが、特に異常は認められない
「どうかしたんですか?」
「……なんだろう、此処の魔力が強まってる気がする」
日頃から魔力を扱っている者だからこそわかる僅かな変化。それは同じくして聖も感じ取っていた
「このまま睨み合いを続けていてもキリがありません。それより皆さん、早く船に乗って下さい」
「……どういう事?」
「説明は後で。どうやら良くないものが作動した様です」
その言葉に怪訝な顔をする霊夢と早苗。しかし魔理沙は二人の肩を叩いた
「二人とも、ここは素直に乗った方が良いぜ。『此処は何かヤバい…!』」
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ドーム状に広がっていた結界はいつしか薄れ、徐々にその形を失いつつあった。
それと並行して、結界の外に漂っていた瘴気や魔力と言った魔界本来の成分がその場に一気に流れ込み始める
既に誰が見ても視認できる程に魔力の渦が法界を覆っていた
「さっき言ってた良くないものってアレの事?言っとくけど瘴気程度ならどうとでもなるわよ?」
「瘴気や魔力自体はさしたる影響はありません。皆さん何らかの手段で防護しているのでしょう?」
「だったら……一体何が?」
聖は険しい表情を浮かばせながら答えた
「……問題なのは、この場に今まで無かった魔力が集束している事なんです」
ーーー新たな異変が起きたのは次の瞬間だった
『グオオオオオォオオォオッ!!!』
「!?」
突然響き渡る獣の様な咆哮。
乗船した一同は目を見開いた
「やはり集まってきましたか…!ムラサ、速やかに離陸を!」
「りょ、了解!」
聖はすぐ様声を飛ばし、村紗も舵輪を握るが、途端にその表情は愕然としたものに変わった
「駄目だ聖…!船を飛ばすだけの法力がもう残ってない…!!」
「!?……そんな」
「おい、彼処!何か色々出てきたぜ…!!」
魔理沙はそう叫ぶと、その方向を指差した。
先程まで聖が封印されていた法界の謂わば中心部……
「何っ……アレ!?」
誰かが思わず声を漏らす
『グルルルルッッ!!』
鋭い眼光で此方を睨みつけている数多の影。
『三首の獅子』を始め、『火炎を纏った怪鳥』、『体表が岩の鱗に覆われている大蛇』。更には船と同サイズの『火龍』など、様々な魔獣が法界に集結していた
「これって……もしかしなくてもヤバい展開だよな?」
「わ、私初めて見ましたよ。本物のドラゴン」
「でも何で急に……さっきまでこんな殺気立った気配は感じなかったわよ…!」
狼狽する三人は、自然と聖の方へ視線を向けた
「……恐らくは先程湧き出した魔力に釣られて集まって来たのでしょう。この世界の獣は皆、魔力を喰らって己の糧としていますから」
「仲間に船の準備をさせてたのはその為ね。何故言わなかったの?」
「確証がありませんでした。……ただ妙に胸騒ぎがしたのは確かです」
「聖!マズイよ…!アイツ等この船を狙ってる…!!」
一輪が叫び、見ると魔獣達が牙を剥き出しにジリジリと迫って来ていた
「おいおいどうするんだ…!船が動かなきゃどの道帰れないぜ!?」
「……私が船に動力源たる法力を注げば再び動き出します。しかしそれをするだけの時間が無い…!!」
既に臨戦態勢に移りつつある魔獣等を見て、聖は決心したかの様に拳を握り締めた
そして隣に立つ霊夢へ、そっと呟いた
「……霊夢さん。身なりからして貴女を巫女とお見受けしますが宜しいですか?」
「……何よこんな時に」
「私が何とかあの獣達を追い払います。その間、皆さんと船に被害が及ばぬ様結界を張っていただけませんか?」
「……一人で戦う気?纏ってる力にしたってアイツ等相当強いわよ?しかも理性が無い獣だから手加減なんてしてくれないだろうし」
「ええ、わかっています。しかしもうこの方法しか無いんです」
『クエエエエエェエエェエッ!!』
数匹の巨大な怪鳥が翼をはためかせ迫る
「……死ぬわよ?」
「それでも私は、皆を護り抜くと決めたんです」
ーーー迫る脅威に立ち向かう為、聖は足裏に力を込め跳んだ
「聖!?」
後方では自身を呼ぶ声がした。
聖は振り返らない。退く訳にはいかなかった。千年前救えなかった彼女等を、もう失いたくなかったから
聖はそのまま真っ直ぐに怪鳥へと向かう
「霊符『夢想封印』!!」
「恋符『マスタースパーク』!!」
「秘術『グレイソーマタージ』!!」
ドオオォオォンッッ!!
両者の間に挟み込まれた弾幕は、大口を開け迫る怪鳥を吹き飛ばした
そして霊夢・魔理沙・早苗の三人は、聖の前に躍り出る
「この方法しかないですって?妖怪退治の専門家を前によくそんな事言えたわね」
「船に力を注げるのはお前だけなんだろ?だったらアイツ等は私達に任せとけ!」
「さあ、今の内に!」
「……ッ!」
聖は三人を引き止めようと言葉を発しかけ、しかし口を噤んだ。
自分でもわかっていた事だ。この場における最良の選択肢は、一刻も早く船を動かし此処を離れる事。
わかってはいたが、他者を巻き込みたくないと言う自身の思想が其れ等から掛け離れた選択をしてしまっていたのだった
「……頼みますッ!」
そう一言残し、再び船へと戻った聖は、すぐ様準備に取り掛かった
「皆、聞いて下さい。これから私は船に法力を注ぐため此処を離れられない。どうかその間彼女等の手助けをお願いします…!」
船員達は口を揃えて答えた
『了解!!』
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「うわっ熱ちちッ!?アイツ火吐いたぞ!」
「流石にドラゴンは強いですね!かく言う私も、モンスターをハントするゲームでは何回3落ちしたか……」
「何の話よ!それよりしっかり戦ってよね!!」
「わかってます!」
次々と襲い来る魔獣。
人間界の生物とは比較にならない戦闘力に加え、生半可な弾幕など物の数ともせず弾いてしまう頑強な身体を持つ彼らに、霊夢等は苦戦を強いられていた
「こうなりゃ纏めて吹っ飛ばすぜ!二人とも下がってろ!!」
魔理沙は八卦炉を構え叫んだ。
魔界には豊富な魔力が大気中を漂っている特性上、普段よりも強力な力が充填されていく
「恋符『マシンガンスパーク』!!!」
ーーー轟ッッ!!
多方向に打ち出されたマスタースパークは、広範囲に及んで周囲を吹き飛ばした。
当然近場を飛んでいた魔獣は地上に叩きつけられ、地上を走る魔獣もその衝撃に足を止めた
「うわぁ……凄い威力ですね」
「へっへーん!どうだ見たか!!」
声高らかに笑う魔理沙。しかしフッとその身体を影が覆った
「!?…魔理沙!上ッ!!」
霊夢が叫び攻撃に転じようと動き、同時に魔理沙も振り返るが、既に眼前には竜の鉤爪が迫っていた
「あっ……」
ドグシャァアアッ!、
原作主人公組の共闘……いいですねぇ。
約1名マリったけど……
この回も後1.2回で終わりそうです