東方万能録   作:オムライス_

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12話投下です


12話 諏訪大戦

 

 

大和と諏訪の間に位置する平原

 

 

「来たか。洩矢の神よ」

 

「ああ。お前が八坂神奈子だね?」

 

何もない殺風景な平原に立つ二柱

と付き添いの神々と人間

 

この場に俺がいるのは、万が一不正行為があった場合どちらにも属しておらず、公平なジャッジが出来る者が必要になる。

だから両者から頼まれたと言うわけだ

 

そして二神による、国を賭けた戦いが始まった

 

諏訪子は弾幕を飛ばし、その中でチャクラムを飛び交わせて神奈子を翻弄しようと試みる

 

だが神奈子は戸惑うどころかその場から動かず御柱と弾幕を操りそれを撃ち落としていく

 

「やっぱり、大和のトップだけあって戦い慣れてるな」

 

今まで色々な国との戦争に打ち勝ってきた神奈子とそうではない諏訪子とでは、戦闘経験に差がありすぎる

 

「くぐってきた修羅場が違うか…」

 

だが諏訪子も負けてはいない

能力を使い、土を盛り上げ、地割れを起こし、そこから溶岩を噴き出させる

 

これには神奈子の顔にも焦りの色が見える。

確か『坤を創造する程度の能力 』だったか?改めて見ると凄いな…

 

 

 

 

 

 

それからこの戦いの決着が着くまでそう時間は掛からなかった。

 

 

勝者は八坂 神奈子

 

あの後諏訪子による攻撃は続いたが、徐々に技を見切っていく神奈子に押され始め、最後には武器であるチャクラムでさえも神奈子がかざした蔓によって忽ち錆び付いてしまった。

これが決め手となり諏訪子自身の口から神奈子の勝利が告げられた

 

「あ、あはは負けちゃった……」

 

「ああ。立派だったぞ諏訪子」

 

俺は力無く笑う諏訪子を優しく撫でた

 

「さて、神奈子。信仰の件だが」

 

「隼斗。気持ちはわからなくも無いけどこれは正当な戦いの末に決まった事なのよ。今更取り消すわけには…」

 

「違うそうじゃない。唯少しばかり妙案が浮かんでな」

 

「妙案?」

 

「実はな、最近住民から聞いた話なんだが、洩矢では祟りの影響で他所の神を信仰しては祟られてしまうって考えの奴らが多いらしいんだ」

 

「祟りって、ミシャクジ様の?」

 

「ああ。だからこのままじゃ神奈子は信仰を得られないかもしれない」

 

「…ならどうすれば良いのよ」

 

「それはなーーー

 

俺の考えた案は至って単純。

 

新たに神奈子とも諏訪子とも違う架空の神を創りだし、その実務を諏訪子が行うことで対外的に神奈子が国を支配した様に見せかけることができ、尚且つ信仰が得られると言うものだ。ついでに名前も洩矢改め、守矢とすることで信憑性を高めることができる

 

 

 

結果は見事に成功。

信仰も今まで以上に集まる様になった

 

 

 

ーーあれから100年程経ち此処、守矢神社には現在二人の神が住んでいる。

 

大和の頭、八坂 神奈子

 

土地神、洩矢諏訪子

 

諏訪大戦の後、神奈子は守矢神社の神として密かに君臨する形になった。

 

最初は些細な事で喧嘩も多かった二人だったが、今ではお互い仲良く……

 

「あっ!諏訪子!今私のオカズ取ったでしょ!!」

 

「へっへーん。ボケっとしてるのが悪いんだよーだ!」

 

「巫山戯るな!このチビ蛙!!」

 

「何をゥ!?このガンキャノン!!」

 

ギャーギャー

 

 

 

…まあ以前よりかは多分恐らく仲良くなってねェなこりゃ

 

っと此処で神奈子と諏訪子、どちらかの足が卓袱台を蹴飛ばし、卓上の夕飯が宙を舞う。

 

ガシャーン

 

「「あっ…」」

 

同時に声を漏らす二柱

 

味噌汁を頭から被る隼斗

 

「………」

 

「は、隼斗…?」

 

「ち、違うんだ!今のは諏訪子が…!」

 

何やら必死に弁明してるみたいだが、

 

……取り敢えずお前ら

 

「表出ろ」

 

「「す、すいませんでしたー」」

 

 

 

 

 

このやり取りが大体3年程前の話。

あれから暫くして俺は再び旅に出る事にした。

二人との生活も悪くなかったけど、いつまでも同じ場所に留まるのはつまらない。いい加減刺激が欲しかった

 

出て行くって言った後二人を説得するのが大変だった。

 

諏訪子は愚図るし、神奈子も寂しそうな目をして「そうか……寂しくなるね」とか言うもんだから俺の決心が鈍った。

あれ?これ手を焼いたの諏訪子だけじゃね?

 

 

まあ色々あったが人生まだまだ長いんだ、楽しまにゃ損々

 

 

 

 

 

 

 

「…で?さっきから覗いてるお前は誰だ?」

 

何もない空間に声を飛ばす。

 

すると目の前の空間が裂けた。

裂け目の両端にはリボンが付いていて、中からは多数の目玉が覗いている

 

「…いつから気づいていたのかしら?力は抑えてた筈なんだけど」

 

中から出てきたのは長い金髪に、白と紫で彩られたドレスが特徴的な美女、もとい妖怪だった

 

「初めから。生憎と妖怪の気配には敏感でね」

 

「ふふ、流石は人妖大戦で唯一生き残っただけはあるわね」

 

「!……お前何モンだ?」

 

人妖大戦。それは遥か昔に起きた人間と妖怪が存亡を掛けて繰り広げた戦争の事だ。

今や伝説として語り継がれ、大抵の者は知っていてもおかしくない。

だがコイツは俺がその生き残りだと言うことを知っていた。

 

「そんなに警戒しなくてもいいでしょう?心配いらないわ、貴方に危害を加えるつもりはないから」

 

まあ加えようとしても返り討ちだけどな

 

「私は八雲 紫と申します」

 

「…俺に何の用だ?」

 

「では、単刀直入に言わせて頂くわ」

 

八雲と名乗った妖怪は薄く笑う

 

「柊 隼斗。貴方には私の式になってもらいたいの」

 




紫さん初登場です

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