東方万能録   作:オムライス_

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前回に引き続きシリアスが続きます。
ネタを挟みたいけどそこはグッとこらえて…!



118話 隼斗の魔界探索記 ⑤

 

紅茶のお代わりを要求した神綺の為、新しく淹れたての紅茶を手に部屋を訪れた夢子は一礼した後周囲を見渡した

 

 

「……神綺様、あの男はどこに?」

 

「行ったわ。……一応、止めたんだけど、焚きつけたのは私だしね」

 

 

その場に隼斗の姿は無い。

主人が客として接していた為、仕方なく用意したもう一つのカップを夢子は呆れ顔で下げた

 

 

「あの男に例の桜をどうこう出来るようには思えませんが……」

 

「……………ええっ。『殺される』わ」

 

「!」

 

「………」

 

 

 

神綺は窓の外を見つめ、静かに紅茶を口へと運んだ

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

隼斗は荒野を駆けていた。

前回とは違い、無駄な消耗を防ぐため瞬閧のエネルギーを脚のみに留め、ひたすら走る

 

既に都市とは目視できない距離まで離れており、周りに見えるのは岩場や少しばかりの植生だけ

 

 

(……あと少しか)

 

 

隼斗はある一方を凝視する

 

 

 

 

〜〜〜

 

…少し前

 

 

 

「……『本体を叩く』ってのはどう言う意味だ?」

 

「そのままの意味よ。アレと戦って討つ事が出来れば貴方の力は元に戻るでしょう」

 

「いや、だけど……!」

 

「封印の事を気にしてるの?だったら問題ないわよ。さっき言った様に人間界にある化け物桜は唯の分身。それに掛けた封印なんて精々表面上くらいにしか効果を発揮していない。……つまりコッチの本体とのリンクは切れてないってこと」

 

「!」

 

「更に言うなら……貴方、一時的とはいえ過去に何度か特殊な方法で力を取り戻していたって言ってたわね?」

 

「……ああ。霊力と引き換えに俺に掛けられた封印を抑え込む形でな」

 

「やってみなさい。今ここで」

 

「あ?……だがよ、時間切れになった後は暫くの間霊力が使えなくなっちまうんだ。それに意識だって……」

 

「いいから」

 

 

まるでどうなるかわかっているかの様に神綺は淡々と告げた

 

 

「………マジかよ。ったく…!」

 

 

隼斗は溜息混じりに渋々立ち上がると、ゆっくり瞳を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………あれ?」

 

 

思わずそんな声が出た。

現状、胸の痛み以外身体に不調は無い。傷は塞がっているし霊力だって十分残っている

 

しかし身体に力は戻らない。

どれだけ試しても一向に変化が表れない

 

 

「……どうなってんだ?」

 

「やっぱり」

 

 

隼斗は一人納得する神綺に若干の苛立ちを覚えながら尋ねた

 

 

「自分だけ納得してねェで教えてくれ。知ってんだろ?」

 

 

神綺は言った

 

 

「貴方が力を取り戻せていたのは『内に潜んでいた西行妖の影響だった』のね」

 

「はあ?何言って……」

 

「まだわからない?貴方が封印を抑え込んでいたんじゃないわ。『西行妖が注がれた霊力を喰い終わるまで』の間、一時的に『奪われた力』が戻っていただけってことよ」

 

「ッッ!?」

 

「そもそも接触していたからと言って対象外の者まで封印の影響を受けると思う?貴方は力を封印されたんじゃない。西行妖に奪い取られたのよ」

 

 

隼斗は完全に言葉を失った。

自身の鼓動が煩いくらいに耳に響く

 

 

「貴方の中にいたヤツの一部も又、本体とのパイプ役。あわよくば力の全てを奪うつもりだったのかも知れないけど、龍神の介入によってそれは叶わず消滅。その瞬間から晴れて奪われた力は本体へと送られたってところね」

 

「………だから、本体から奪い返せば力は戻る…ってか」

 

「言うは易く、行うは難し。……いいえ、限りなく不可能に近いわね」

 

 

事実だった。幼子でもわかる程の紛れも無い事実……。

それをわかった上で隼斗は言った

 

 

「……一ついいか?本体をぶっ潰した後幽々k…封印の媒体になった奴はどうなる?」

 

「………本体が死ねば分身とのリンクも切れる。西行妖は唯の桜の木へと戻るでしょうけど、封印自体は桜を対象としているから問題ないはずよ」

 

「それを聞いて安心した」

 

 

隼斗は踵を返し部屋の出口へ向き直った

 

 

「ここまで話した私が言うのも何だけど、戦う気ならやめておきなさい」

 

「……」

 

 

黙ったまま歩みを進める

 

 

「力の大半を奪った相手に本気で勝てると思ってるの?逆に殺されるだけよ」

 

 

扉を開け、隼斗は一度神綺の方へ振り返り言った

 

 

「ありがとな。それと壁に穴開けて悪かった」

 

 

 

「………」

 

 

 

 

神綺は窓の外に視線を向けたまま、ゆっくりとカップをテーブルへ置き、呟いた

 

 

「馬鹿ねぇ……。貴方も私も」

 

 

 

 

〜〜

 

 

 

都心から大分離れた頃、段々と魔獣等の気配が濃くなってきた。ここら一帯は人間界で言う所のサバンナやジャングルと言った野生の獣が生息する場所に当たる様で、魔界人の様に安定した気配は一つも無い

 

以前とは違い少々大胆に進行している為か、隼斗の気配を嗅ぎつけた魔獣等が後を追って来ている

 

 

「!」

 

 

しかしそれも束の間。

突然後方の魔獣達は追跡を止め、蜘蛛の子を散らす様に去っていった。

それを合図に隼斗は一層足裏に力を込め、一気に前方へ跳ぶ。

生い茂る木々の切れ間を抜け、パッと景色が開けた場所へと変わった

 

 

「アレが……本体…」

 

 

 

ーーー草の根一つないその場所の中心に存在する『悪夢の根』。

隼斗は拳を握りしめ、ゆっくりと近づいて行く

 

 

 





アレ?心なしか隼斗にフラグ立ってね?
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