東方万能録   作:オムライス_

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もうすぐクリスマスか……


今回新しい表現として《》を入れて、同じ名前・表記のものを分けています


119話 隼斗の魔界探索記 ⑥

半径僅か数百メートルに渡って、『生命』という存在が消滅した土地。

その中央には不気味に根だけを残した姿で元凶が大地より顔を出していた

 

 

 

その根の中心に深々と突き立てられた刀は封印の役目を果たし、長年『死の侵食』を抑え込んでいる

 

 

(……妖忌はいねェか。丁度いい)

 

 

隼斗は根の前まで来ると、突き立てられた刀の柄に手を伸ばした。

そしてその刀が展開している封印術式を読み取りながら干渉を行う

 

 

 

ーーー封印を解くためではない

 

 

自身を『因縁の元へ送るため』、柄頭に触れながら力を流し込んだ

 

 

 

グンッッッ!!

 

その瞬間身体全体を強い力で引き寄せられる様な感覚に襲われる。

徐々に身体から力が抜けていき、刀を支えにしなければ立っていられない

 

 

「……ッ!」

 

 

そして視界も暗転を始め、ゆっくりと意識を手放した

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

 

真っ白な世界。

その場所を一言で表すならば、誰もがそう答えるであろうだだっ広い空間が広がっている

 

 

(……何もないな)

 

 

隼斗は静かに歩き出した。

周囲には障害物どころか、足先を引っ掛けるような出っ張りや、窪みすら無い。

空気の流れも無ければ、気温の変化も感じられない。

遠くに目を凝らしても、地平線すら存在していない様に見える

 

 

しかし隼斗は此処が何処なのか理解している。自身が望んで訪れた場所だ

 

 

 

 

「……いつ迄隠れてやがんだ」

 

 

隼斗は立ち止まり、そう呟いた

 

 

 

ピチャッッ………

 

 

 

刹那、水面に雫が落ちたように、真っ白な空間全体へ波紋が広がった

 

空間が不可思議に揺れ、やがて波が治まると、天と地が水鏡の様に変化し、隼斗の姿を映し出した

 

 

「……漸くテメェの面拝めると思ったら……」

 

 

 

ズズズズッッ……、と水面から浮き出る様に一人の男が現れ、それを見た隼斗は溜息混じりにこう吐き捨てた

 

 

「まさか『自分』と対面する事になるとはな」

 

 

そこには髪色や身に着けている衣の色こそ異なるものの、確かに『柊 隼斗』が立っていた

 

 

《此処へ何しに来やがった?》

 

白髪の《柊 隼斗》は、エコーの掛かった声でそう尋ねる

 

 

「驚いたな。喋れるのかお前」

 

《……難聴か?質問の答えになってねェが》

 

「成る程、出来はそこまで良くねェってワケだ。口の悪りィ野郎だぜ」

 

《お前が言うかよ》

 

 

 

 

ーーー直後だった

 

 

 

隼斗の背部から高濃度の霊力が吹き出し、その推進力のまま《隼斗》へ拳が叩き込まれた

 

 

轟ッッッ!!と凄まじい衝撃波が生じる

 

 

 

「テメェをぶっ飛ばしに来たぜ……!」

 

《そうか。……まあ知ってたけどな》

 

 

隼斗の一撃を片手で容易く受け止めた《隼斗》は、拳を掴んだまま掌に妖力を集約させる

 

 

《『蒼火墜』》

 

「!」

 

 

隼斗は咄嗟に腕を蹴り上げ離脱する。

狙いが上空へ逸れた爆炎は通常の数倍の威力で炸裂した

 

 

《何だよ、片腕吹き飛ばしてやろうと思ったのによ》

 

「野郎ッ……!、人の技まで真似やがって」

 

 

 

そう言って一足前に出し、同時に瞬閧の推進力を合わせながら高速で《隼斗》の背後をとった

 

 

ただ回り込んだだけではない。

一度正面で『赤火砲』を放ち、挟み撃ちにする形で更に破道を錬った

 

 

「破道の八十八『飛竜撃賊震天雷砲』」

 

 

術は互いに衝突し、威力の高い後者の破道はそのまま前方の彼方へ消えていった

 

 

 

 

《……結局よォ、互いに使える手は同じだからある程度はわかっちまうんだよな》

 

 

声は後方から。

振り返れば宙に浮いたままポケットに手を突っ込み気だるそうにする《隼斗》の姿があった。

その行為に苛立ちを覚えながら、隼斗は向き直る

 

 

「こちとら長い年月を掛けて修得した技術だ。テメェの猿真似と一緒にすんじゃねェよ」

 

《いや、だからよォ……》

 

 

指先が隼斗へ向けられる

 

 

《その年月とやらも同じ様に経験してきてんだって》

 

 

隼斗の周囲から六つの光の帯が迫る

 

 

「チッ…!」

 

 

……無詠唱。しかし精度は完全詠唱と変わらぬ『六杖光牢』が打ち出され、隼斗はギリギリのところで上へ逃れた

 

そして隼斗はハッとする。

これが自身を上方向へ誘導する為のフェイクだと言う事はわかっていた。

だから腕に瞬閧を纏わせ、迎撃態勢を整えていたのだ

 

 

視界の先にはドス黒い瞬閧を纏った《隼斗》が、踵を振り上げていた

 

 

《同じ技術を持った者同士が殺り合った場合、勝敗を決するのは単純に『力の差』だろ?》

 

 

 

ズドォォンッッ!!と、踵が振り下ろされた。両腕を構えガードしたものの、その重い一撃にメキメキッと音を立てる。

隼斗は空中で踏ん張る間も無く地面に叩きつけられた

 

 

「っっ……!!」

 

 

受身はしたが、一時呼吸が止まるほどの衝撃が身体全体を襲う。

ガードした腕は痺れ、鈍い痛みが走っていた

 

 

蹴り落とした勢いのまま空中で一回転した《隼斗》は、膝をつく隼斗の目の前に降り立った

 

 

《テメェに勝ち目は無ェよ。柊 隼斗》

 

 

容赦なく振るわれる。

拳が。蹴りが。

 

どれも自信が扱う戦闘技術の筈なのに、相手の攻撃を受け切る事が出来ない

 

何が繰り出されるかはわかっているのに、力で押し負けてしまう

 

そして防戦一方で後退る隼斗の土手っ腹に隙をついた拳が突き刺さった

 

 

「ごっ……、あっ!?」

 

 

隼斗の身体はくの字に折れ、吐血しながら吹き飛ばされた。

しかしそれでも《隼斗》は距離を詰め、次の攻撃を仕掛けようと迫る

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉおぉぉお!!!」

 

 

激痛に悶えている時間は無い。

隼斗は吼え、迎え撃つため地を蹴った

 

背に纏う瞬閧の出力を最大まで跳ね上げ、僅か百メートルにも満たない距離を、音速の数十倍の速度で突っ込んだ

 

 

《!》

 

 

その勢いのまま、すれ違いざまに顔面へ拳を打ち出した

 

 

ズジジジジジジジッッッ!!!と地面との摩擦で速度を殺しながら、スケートの様に身体を回転させ停止する。異空間であるためか地面に焼け焦げた痕は無いが、通過地点には白煙が上がっていた

 

 

《……今のが全力か?》

 

 

《隼斗》は頬から流れる一筋の血を親指で拭いながらもう片方の手に黒い瞬閧を纏わせてそう言った

 

 

フッ……

 

 

「!?」

 

 

蝋燭に灯る火が消える様に《隼斗》の姿が消失し、一瞬で目の前に現れた

 

 

《弱ェな。お前》

 

 

 

 

ーーー振り上げられた手刀は、殆ど反射的に出された隼斗の左腕を斬り落とした

 

 

 

鮮血が迸り、隼斗は傷口を押さえながら力無く膝をつく

 

 

《次、首いっとくか?》

 

 

《隼斗》は手刀を水平に構え、首筋へ狙いを定めながら冷たい声色でそう尋ねた

 

 

「……、……。」

 

 

 

《あ?》

 

 

 

「………詰めが…甘ェよ」

 

 

斬り落とされ、宙を舞う腕が赤黒く焼き焦げ始める

 

 

 

《まさか……!》

 

 

 

この戦いで始めて《隼斗》の表情が強張った

 

 

 

 

 

 

「破道の九十六

 

ーーーーーー『 一 刀 火 葬 』」

 

 

 

左腕を媒体に放たれたその破道は『刀身のように天高く聳える巨大な業火』を生み出し、《隼斗》諸共広範囲を包み込んだ

 

 

 

 




この作品では中々無い主人公ボコられ回でした。
次回も引き続き戦闘回です
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