東方万能録   作:オムライス_

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125話 悪魔の姉妹

 

対峙する両者。

相手の出方を窺っている霊夢と魔理沙に対し、二人の姉妹のうち、白い翼の少女『幻月』は、前方に手を翳した

 

 

ザパァァァンッッ!!!と湖の水面へ、一つの光弾が撃ち込まれる。

衝撃で打ち上げられた大量の水飛沫が、両者の間に壁を作った

 

 

だがそれも束の間

 

 

水のカーテンを斬り裂き、両腕を刃に変化させた『夢月』が突っ込んできた。

冷たい視線で見下ろしながら、霊夢へ狙いを定める

 

 

 

 

 

 

「魔符『スターダストレヴァリエ』!!」

 

 

宣言と同時に発射された星型の弾幕は、横合いから夢月を呑み込み吹き飛ばした

 

 

「ちょっと魔理沙。アレくらい助けはいらなかったわよ」

 

「へへっ、礼ならいらないぜ?アイツは私に任せな!」

 

「……聞いてないし」

 

 

畔の先にある林へ消えていったメイドを追って飛翔する魔理沙を尻目に、霊夢は目の前の敵へ向き直った。

未だ湖の中心から動いていない幻月は、余裕を崩さず語りかける

 

 

「あら、二人きりになっちゃったわね」

 

「お仲間が心配なら追いかけたら?勿論、背中を見せた瞬間打たせてもらうけど」

 

「必要ないわ。『あの程度』ならね」

 

「なんですって?」

 

 

幻月は翼を広げ、静かに微笑んだ

 

 

 

―――

 

 

「どこいったー?アイツ」

 

 

吹き飛ばした夢月を追って林へ入った魔理沙は、箒から降りると周囲を見渡した。

しかし、これといって気配は感じない。

元々そういったスキルに長けていない為か、特に何も感じ取ることができず、一旦視線を前方へ戻した瞬間だった

 

 

 

―――槍の鋒が。自身の瞳に吸い込まれるように向かってきていた

 

 

「ッッ!?」

 

 

不意を突かれた事により、魔理沙の身体は強張ってしまう。しかしそれが幸いしてか、バランスを崩して尻餅をついた事で、槍の一撃を回避する事ができた

 

 

「ちぇ、外しちゃった」

 

 

魔理沙の後方にある木の幹に突き刺さった槍を元の腕へと戻した夢月は、冷たい声色でそう呟いた

 

 

「お、おまっ…!危ないだろ!!マジで死ぬかと思ったぜ!?」

 

「?。……殺す気だったけど?」

 

 

夢月は不思議そうに首を傾げながらも、腕から変化させた斧を振り下ろした

 

 

「どわあああっっ!?」

 

 

ギリギリで地面を転がり回避した魔理沙の身体数センチ手前を大きく抉り取った一撃。

メイド服の少女には、一切の躊躇いなど無かった。表情を変えることなく、逃げる標的へと視線を動かす

 

 

「……逃げないでよ面倒臭いなぁ」

 

「いや逃げるわ!お前頭のネジ飛んでんじゃないのか!?」

 

「あんな『緩い攻撃』しかできない、頭の緩い奴に言われたくないわ」

 

「……何だと?」

 

 

魔理沙は少女の身体へと視線を落とす。

確かに傷という傷は無く、身につけている衣服には汚れこそ付いているものの、破損箇所は見られなかった

 

 

「貴女ホントに親玉?これじゃあ簡単に終わっ……」

 

 

 

 

ゴオオォオッッ!!!と、夢月のすぐ隣を巨大な閃光が通過する

 

 

 

 

 

「聞き捨てならないな。私の攻撃が緩いだと?」

 

 

硝煙が立ち上る八卦炉を構え、魔理沙は静かな怒りを露わにしながら続けた

 

 

「だったら見せてやるぜ。大火力の魔法をな!!」

 

 

夢月は殆ど変わらぬ表情のなかで、唯一瞳を大きくした後、僅かに口角を上げた

 

 

「………へぇ」

 

 

 

―――

 

 

湖を眼下に、宙に浮かび上がる霊夢と幻月。

相手を警戒し、凝視する霊夢とは対照的に、幻月は相変わらず優雅な振る舞いを崩さなかった

 

 

「来ないの?待っててあげてるんだから仕掛けてきなさいな」

 

 

霊夢は静かに指で印を結びながら言う

 

 

 

 

 

「……もうやってるけど?」

 

 

直後、真下の湖から色とりどりの光弾が飛び出した。

その全てが指向性を持っているのか、一斉に幻月へと向かう

 

 

 

 

 

だが。

 

 

フッと幻月は掌を軽く振るった。

それだけで光弾は軌道を変え、明後日の方向へ飛んで行った後、消滅してしまう

 

 

「ふーん」

 

 

幻月は『水面に浮かぶ複数のお札』に目をやりながら微笑を浮かべた

 

 

「さっき湖の水を打ち上げた時にちゃっかり仕込んでたという訳か。意外と抜け目ないのね」

 

「『夢想封印』が逸れた?一体何をしたのかしら?」

 

 

今の攻撃により、両者による開戦の狼煙は既に上がっていた。

幻月は掌に球状の光を発生させ、頭上に掲げる

 

 

カッ!!!!と一瞬目がくらむ程の光を発し、次の瞬間には視界一面を覆い尽くす程の弾幕が打ち出された

 

 

「ちょっ!多すぎよ!?」

 

 

霊夢は慌てて周囲に陰陽玉を展開しつつ、光弾の雨を躱していく。身体のすぐ横を通過した弾は強大なエネルギーを持っているのか、その一瞬でもわかるほどに高熱を帯びていた。

事実、回避しきれず被弾した陰陽玉の一つが、跡形も無く砕け散ってしまったのだ

 

 

「へぇ、躱し切るなんてやるじゃない。いきなり死んじゃうと思ってたのに」

 

「死んでたまるか!」

 

 

残された陰陽玉を回転させながら、四方八方に弾幕をばら撒く。だが出鱈目に打っているわけではない。幻月の周囲の空間を弾幕で埋めることで退路を潰し、霊夢は真っ直ぐ突っ込んだ

 

敵は明らかに外の住人。決闘ルールについて説いたところで、相手は一ミリも守る気は無いであろうことは先の言動等からわかっている

 

だからこそ、霊夢は敢えてルールを破り、本気の弾幕で逃げ道を塞いだ

 

 

「宝具『陰陽飛鳥井』!!」

 

 

続けて放つ巨大な陰陽玉。多大な霊力が込められたソレは、幻月を押し潰さんと迫る

 

 

「ふふっ」

 

 

幻月は余裕を崩さない

 

それどころか、最初の弾幕から躱す素振りすら見せず、一切の防御態勢をとろうとしていなかった。

そして迫る陰陽玉を見つめ、再び掌を振るう

 

 

「ッ!?」

 

 

霊夢は思わず目を見開いた。

先程放った夢想封印が不可思議な力によって軌道を変えられたことから、今回も同じ様に防ぐのだろうと踏んでいた。その力を見極めようと敢えてわかりやすい攻撃を放ったのだ

 

 

しかし、あろうことか陰陽玉は自身へと返ってきた。幻月の掌の動きに合わせ、その軌道が『捻じ曲げられた』かの様に180度向きを変えた。

次なる攻撃を放つため、前進していた霊夢は急ブレーキを掛け、力の限り上へ飛ぶ

 

ヂッ!!とスカートの端を掠めながら、陰陽玉は空の彼方へ消えていった

 

 

 

 

「さて、私もそろそろ『動こう』かしら?」

 

 





幻月も夢月も悪魔という事で、他とは一線引いた容赦ないイメージ
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