東方万能録   作:オムライス_

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前編・後編でわかれます



126話 悪魔の猛威(前編)

緊迫した状況下で、幻月は薄く笑った

 

 

「貴女がどこまで付いてこれるか、楽しみね♪」

 

 

一瞬、その背に生える白い翼がぴくりと動いたのを霊夢が視認した直後だった

 

 

突如頭上に影が掛かった。

思考に空白が生じる。反射的に顔を上げた霊夢の表情が固まった

 

 

「あはっ!」

 

 

視線の先では悪魔の様に口角を吊り上げ、赤く光る瞳をギラつかせた幻月が、拳を振り上げている瞬間だった。

一瞬遅れて彼女が通過したであろう湖の水上が一直線に巻き上がる

 

 

「ッ!!」

 

 

凄まじい衝撃と共に振り下ろされた拳を咄嗟に張った結界で受け止める。

しかし空気が破裂する様な甲高い音が響き、結界は一撃で砕かれてしまった

 

 

「はあああッ!!」

 

 

霊夢はすぐ様霊力を纏わせた複数の御札を前方へ放った。

それは博麗の巫女に代々伝わる退魔の術が込められた護符。相手が『人ならざる者』であるならば、大小あれど効果は十分にある

 

 

しかし悪魔はそれらを涼しい顔で回避した

 

 

まるで子供がふわふわと空間を漂うシャボン玉を目で追う様に、しっかりと御札の軌道を眺める余裕すら見せながら、霊夢の顔へと手を伸ばした

 

 

「!?」

 

 

ボッ!!!と空間が爆ぜる

 

 

悪魔の掌から放たれた光弾は、零距離から霊夢の頭部を吹き飛ばした

 

 

 

 

ーーー

 

 

林の中を駆ける二つの影

 

 

一方は箒に片手で掴まり、低空飛行で木々の生い茂る見通しの悪い空間を器用に潜り抜ける

 

もう一方はそんな悪路などお構いなしに、両手から生える鋭利な刃で障害物を斬り倒しながら突き進む

 

 

「森林破壊もいいとこだな。自然はもっと大事にしなきゃいけないぜ!」

 

「私には関係ないわ。それより早く殺られてよ」

 

「嫌なこった!!」

 

 

距離を詰められぬ様、魔理沙は星型の弾幕を放ち牽制する。しかしメイド服の少女は顔色一つ変えず、被弾などお構いなしに突っ込んでくる

 

 

「鬱陶しいなぁ。攻撃も周りの木も。一層の事全部刈り取ってスッキリさせようか」

 

「声のトーン変えずにおっかないこと言いやがって…!!」

 

 

魔理沙は箒に跨ると、急ブレーキを掛けるように身体ごと横に捻った。

そして八卦炉に宿った魔力を解放し、一直線に向かってくる夢月へ狙いを定める

 

 

「恋符『マスタースパーク』!!」

 

「!」

 

 

今の今まで魔理沙を追跡する形で疾走していた夢月は、進行方向から迫る巨大レーザーを躱すことが出来ず、そのまま呑み込まれた

 

 

「おっと、周りの木も巻き込んじまったか。でも私の場合は意図してやったわけじゃないから所謂事故ってやつだぜ」

 

 

魔理沙は立ち込める土煙の向こう側へそう告げた

 

 

返答はない

 

だが今の攻撃で勝敗が決したとは彼女とて思っていなかった。だからこそ警戒は解いていない。八卦炉を構えたまま、静かに前方を凝視する

 

 

 

ーーー直後だった

 

 

ボゴォッ!!と足元の地面が吹き飛び、地中から巨大な鋼の手が飛び出した。

指先には鋭利な爪が付いており、運良く指の間を擦り抜けた魔理沙の衣服の一部が巻き込まれる

 

 

「ッッ!なんだよ一体!?」

 

 

獲物を捕らえ損ねた手はゆっくりと地中へ帰っていく。そして前方からは淡々とした声

 

 

「あっ、また外しちゃった。やっぱり煙で見えない状態から捕まえるのは難しかったかぁ」

 

 

 

 

煙が晴れ、まず初めに見えたものは人一人分が隠れる程の鋼の盾。やがてその形状を腕へと戻した夢月は、同時に地中に突っ込んでいた片腕を引き抜いた

 

 

 

「今のが大火力の魔法?全然強くなかったんだけど」

 

 

そう言い放った夢月の身体が、鋼色に染まっていく。華奢なシルエットを一変させる様に、文字通り『鋼の肉体』へと変化した

 

 

「いい加減つまらなくなってきたからコレで終わらせるわ。だから動かないでね」

 

 

 

ボッ!!!!と爆発音が響く

 

 

それは夢月が距離を詰めるため、地面を蹴った音。蹴りつけられた地面は爆ぜ、後方に大量の土砂が巻き上がった

 

 

「はい、お終い」

 

 

夢月は拳を固め、魔理沙の脳天へ振り下ろした

 

 





悪魔姉妹の能力については、不明っぽかったんでオリジナルで考えました。夢月さんはわかりやすいけど、幻月さんは多分説明されないとわからないかも?
詳しくは次回!

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