東方万能録   作:オムライス_

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お待たせしました。

気が付いたら今回の戦闘だけやけに長くなっちゃってました…^_^;


128話 魔法の可能性

すっかり更地となった森林内を、二つの影が高速で飛び回る

 

 

魔理沙は周囲に複数の球体を展開し、小型の魔法弾をマシンガンの様に打ち出す。

夢月は腕を変化させた剣でそれらを弾きながら、俊敏な動きで距離を詰めていく

 

 

「照射!!」

 

 

魔理沙が叫ぶと、弾を打ち出していた球体は一度止まり、次の瞬間には白光のレーザーを撃ち放った。

夢月は同じ様に剣先を当てる

 

 

「!?」

 

 

しかし予想を超えた出力に思わず動きが止まってしまう。

瞬時にジグザグにステップし、次々と照射されるレーザーの雨を躱してゆく。

 

 

そして全ての照射が終わっての一瞬のインターバル。

チャンスとばかりに片腕をスライムの様に軟化させ、上空の魔理沙へ向けて勢いよく伸ばした

 

 

「…っとお!」

 

 

魔理沙は鞭の様に振るわれた腕をギリギリのところで降下して回避する。……と、同時に地上の夢月へ向けて高速で突っ込んだ

 

 

「ちょこまかと!」

 

 

夢月の掌が地面に触れ、そこから複数の鋭く尖った土の槍が飛び出した。

だが魔理沙はスピードを緩めない。更に加速し、確実に土の槍を躱しながら、夢月の頭上を駆け抜けた

 

 

「プレゼントだぜ!!」

 

「!」

 

 

そう言って懐から取り出した複数の小瓶をすれ違いざまにばら撒く。

宙を舞う魔法薬の入った小瓶は、落下した衝撃で割れ、手榴弾並みの爆発を起こした

 

だが全身を鋼の様に硬化させている夢月は大してダメージを負っていない。

寧ろ爆発で舞い上がった土煙を鬱陶しそうに払いながら、魔理沙を追って空中へと飛び出す

 

 

「げっ…」

 

 

視界の晴れた夢月の目に飛び込んできたものは、自身を包囲する様に待ち構える複数の球体だった

 

 

「大サービスだ!!」

 

 

カッッッ!!!!と、一斉にレーザーが照射される。一点に集中したエネルギーは高熱を発しながら大爆発を起こした

 

一瞬遅れて爆炎の中から夢月は離脱する。

その鋼の身体に損傷は見られない

 

 

「少しは効いたか?私の魔法は」

 

 

身体の硬質化を解き、どこまでも冷たい瞳で魔理沙を凝視しながら、あっけらかんと答えた

 

 

「別に?」

 

 

 

夢月の身体を黒いオーラが覆い始める。

それは燃え上がる炎の様にも見え、彼女の感情の様に底の見えない不気味さがあった

 

 

 

 

「紅魔館の門番もそんな感じの気を纏ってたな。……感じる気配とか色は全く別物だけど」

 

「……」

 

 

夢月は徐に腕を手前に引いた

 

 

「!!」

 

 

連動するように身体を纏うオーラが巨大な腕へと変化する。

それは夢月の腕の動きに合わせて、風を切りながら一気に伸びた

 

 

 

 

「速いが直線的だぜ!」

 

 

普段から弾幕戦に慣れている為、ある程度の速度があろうと単発ならば避ける事は難しくない。

魔理沙は伸びてくる腕の横を擦り抜け、再び八卦炉を構え反撃に移ろうとした

 

 

「!?」

 

 

次の瞬間魔理沙は目を見開いた。

自身の真横で伸びている巨大な黒い腕の一部分から、少々サイズダウンした新たな腕が生え、伸びてきたからだ

 

 

「コレに決まった形なんて無いよ」

 

 

一本だけじゃない。

主軸となる巨大な腕から、次々とトコロテンの様に無数の腕が飛び出す。

しかも至近距離。間合いを空けようと側方へ切り替えした時には既に逃げ場などなかった

 

 

 

あっという間に魔理沙を呑み込んだ黒い手は集束し合い、再び主軸の腕と一体となった。

そのまま形を変え、魔理沙を取り込んだまま球体となる

 

 

 

夢月は突き出している掌を握り込んだ

 

 

 

「キュッ」

 

 

バキバキバキッッ!!!と、破壊を伴う音が辺りに響き渡る。

それは直径5メートル程あった球体が、握り拳サイズにまで収縮し、中に取り込んだものを圧砕した音だった

 

無残に砕け散った箒だったであろう木片だけが吐き出される

 

 

「一応親玉倒した証って事で姉さんに見せようかな」

 

 

今の今まで戦っていた敵をミンチした。

だが夢月は表情を変える事無く、まるで捕まえた虫を親に見せに行くような気軽さでそう呟いた

 

 

夢月から伸びる黒いオーラは再び巨大な腕へと変化する。…が、別にこれといって意味はない。強いて言うならば、この形が彼女の決めたデフォルトなのだ

 

 

「そう言えば変な液体の効果、いつ消えるんだろ?……それだけ聞いとけばよかった」

 

 

魔理沙の生成した薬品を被った事で、未だに夢月の五感はランダムに遮断されている

 

今は『触覚』。

自身の纏う気を変化させ、創り変えた黒いオーラは、身体の感覚と繋がっていた。

黒い手で何かに触れれば夢月も同じ様に感覚が伝わる様になっている

 

 

 

 

ーーー本当に潰せたか?

 

 

頭の中でそう過ぎった夢月は、一度黒い腕を元のオーラへと戻した

 

 

 

 

「………あれ?」

 

 

……腕の中には肉片どころか、血の一滴たりとも見当たらなかった

 

 

 

 

 

 

ーーーそして。

 

 

 

立ち尽くす夢月の目の前に、八卦炉を構えた白黒魔法使いが突然現れた

 

 

 

 

「ドンピシャだぜ…!」

 

 

ゴォッ!!と、視界一面を埋め尽くす極太のレーザーが放たれ、夢月の身体は一瞬で上空へ打ち上げられた

 

 

「がっ……ぐッッ!…な、なんで…!?」

 

 

鋼を纏っていない生身の状態で受けてしまったダメージに顔を歪めつつ、夢月は上空で停止し、後を追ってきた魔理沙を睨みつけた

 

 

魔理沙は懐から空の小瓶を取り出すと夢月に見える様に顔の横まで持ち上げた

 

 

「五感を狂わせる薬があるんだ。『身体を虫並みに小さくする』薬があっても良いだろう?」

 

「……は?」

 

 

言っている意味がわからなかった。自分の投げ掛けた質問との関連性が見えない

 

 

「まあ、捕まった時は流石に焦ったな。最初は隙間が塞がり切る前に小さくなって脱出しようと思ったのに、間に合わず閉じ込められちまうし」

 

「………何が言いたいの?」

 

 

表情こそは変わらない。しかしその声色は明らかに苛立っていた

 

 

魔理沙は構わず続ける

 

 

「わからないか?小さくなるだけなって、成す術が無かった私を『箒の残骸と一緒に解放した』のはお前自身だってことさ」

 

「!!」

 

「例え偶然だろうと外に出れればこっちのもん。後は効果が切れる頃合いを見計らってお前に接近すれば、ナイスなタイミングで意表を突けるってわけだ」

 

 

魔理沙は得意げにそう告げた

 

 

「……」

 

 

目の前の魔法使いを仕留めきれなかったこと。そして不意打ちとはいえ痛撃をくらわされた事が気に食わなかったのか……。

夢月の中で明確な怒りがふつふつと湧いていた

 

 

 

 

「調子にのるな……ッッ!」

 

 

全身を鋼に硬化させ、尚且つ黒いオーラを無数の巨大な刃へと変化させた

 

マスタースパークの直撃にも耐える鋼の身体に、変幻自在な刃。

例え不意打ちを受けようとも関係ない。確実に仕留め切ると、夢月は躍起になっていた

 

 

対する魔理沙は余裕を崩さない

 

 

「最後に……、もう一つ自信作のお披露目だ」

 

 

帽子の中に手を突っ込み、緑色の薬品の入った小瓶を取り出す。それは現時点で彼女の所持している最後の魔法薬だった

 

 

ーーー栓を抜き、一気に飲み干す

 

 

 

 

「……待たせたな。『大火力の魔法』だ!」

 

 

全長20メートル強の無数の刃が、一挙に振り下ろされる。退路を潰すように全方向から殺到する

 

 

 

魔理沙は静かに八卦炉を構えた

 

 

 

 

 

 

「魔砲『ファイナルマスタースパーク』!!!!」

 

 

 

直後、煌びやかな閃光が空間一帯を虹色に染める。

それは霧雨 魔理沙が八卦炉に宿る火力を『最大出力の上限を超えて』引き出した瞬間だった

 

仮に、通常のマスタースパークの威力が一般女性の平手打ちと例えるなら、この時放たれた魔砲は『プロボクサーのストレート』並みの威力を持っていた

 

 

魔砲は一瞬で巨大な刃を消し飛ばし、鋼の装甲ごと夢月の身体を呑み込んだ

 

 

 

……その日、幻想郷の空は一瞬だけ虹色の閃光に包まれる

 

 

 

 

 

最大火力を上回って酷使した八卦炉からは黒煙が上がり、大きな亀裂が入っていた

 

それを握る使用者の腕には火傷が見られた

 

しかし魔理沙は笑う

 

 

「最大火力を超えたのは最初の一瞬だけか……。『運が良い』な、お前も」

 

 

徐々に熱が冷めていく八卦炉を帽子へとしまい、既に誰もいない空間に語りかける

 

 

「『緑のクスリ』は魔力活性薬ってね。まっ、とある恩人の受け売りさ☆」

 

 

 

霧雨 魔理沙 VS 夢月

 

ーーー勝者『霧雨 魔理沙』

 




〜赤いクスリは体力回復。青いクスリは体力と魔力回復〜

……魔理沙が段々マユリ様っぽく見えてきた。

次回は霊夢VS幻月。こちらも次で決着かと…。


投稿日につきましては、来週いっぱいまでには投稿できそうです

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