「はぁ、はぁ」
森の中を一人の少女が息も絶え絶えに走っていた。
何故そんな事をしているのか?っと問われれば、そうしなければ命を落とすからと答えるしか無い
「待てよ人間ッッッ!!」
少女の後を猛スピードで追いかけるのは鋭い牙と爪を持つ、爬虫類型の妖怪。
RPGに風に言うならばリザードマンか…
「あっ…!?」
追ってくる妖怪達に気をとられ、足下を見ていなかったためか、突き出していた木の根に足を引っ掛けてしまう
「ゲヒヒ…観念しなお嬢ちゃん」
「いや…!来ないで…!」
ニヤつきながらジリジリと詰め寄る蜥蜴妖怪
「いきなり喰ったりしねェって。まずは楽しまなきゃな……!」
「ひぃ…!…や、やぁ」
恐怖からかまともに悲鳴すら出てこない
そうしてる間にもにじり寄ってくる妖怪
「それじゃあ早速………誰だお前?」
「…?」
急に妖怪の注意が他に向いた。
正確には少女の後ろ…
いつの間にか立っていた一人の男に
「趣味でヒーローをやっている者だ」
「なんだその適当な設定は……。」
「えっ…え?」
突然の乱入者に少女は状況を飲み込めないでいる
「気にすんな。言ってみたかったセリフベスト10の内の一つが言えて余は満足じゃ」
「巫山戯てるのか?それとも舐めてるのか?」
「ん?…両方」
妖怪の問いに軽く笑いながらそう答えた瞬間、額に青筋を立てた妖怪が牙を剥き出しにして飛びかかって来た
「死ねェェェ!人g……ホゲエェェェ!?」
なのでワンパンで沈んで貰いました
殴られた妖怪は辺りの木々を薙ぎ倒しながら体操選手も吃驚の空中回転を決めつつ地面にめり込み、ピクピクした後動かなくなった
「大丈夫か?」
「……」
放心したまま動かない少女
「おーい」
「へっ?わわっ!ひゃ、ひゃい!!」
目の前で手を振ってもう一度呼びかけると少女はパニクりつつも返事をした
「怪我とかないか?って膝擦り剥いちまってるな……」
見ると転んだ為か片膝から血が出ている
「だ、大丈夫です!こんなの直ぐに治りますから!!」
「何言ってんだ。そう言う過信が取り返しのつかない事に繋がるんだよ。ホレ、包帯巻いてやるから診せてみな」
本当は絆創膏があれば手軽でいいんだけど。
まだこの時代は不便な事が多い
「ほ、本当に大丈夫ですから…」
?…妙に嫌がるなぁ。
ハッ!まさか……
「そ、そうだよな……見ず知らずの男に手当てしてもらうとか気持ち悪いよな……ごめん」
別に下心とか無いんだけどなぁ……
マジで心配だっただけに些かショックだ
「ち、違います!別にそう言う訳じゃ…!」
「いやいいよ……今更気を使わなくて。
なんかゴメンな?」
「あーもう!!そうじゃ無いんですってば!」
「…ならどうしてあそこまで嫌がったんだ?」
「それは……!私が…ぅ…だから」
「えっ?」
「私が半獣だからです…!」
ーーー
「へぇ、白沢ね」
「……はい」
目の前の少女、上白沢 慧音は人間と妖獣が合わさった半獣と呼ばれる存在らしい。
っと言っても生まれつきと言うわけではなく、後天性のものらしい。
半獣ならばちょっとした怪我なら直ぐに治る。先程手当てを受けるのを拒んだのも、半獣だと知られたくなかったからだそうだ
「それで?なんでこんな所に一人で居たんだ?この辺はタチの悪い妖怪が多いってのに」
「私……帰るべき場所が無いんです」
「ん?そりゃどういう……!」
そこまで言って理解した
追い出されたんだ、慧音は。
突然半獣として覚醒し、その姿を村人にでも見られたんだろう。
人間は自分達と異なる存在を排除しようとする。
理由は怖いから。身を守る術を持たない人間は集団になって身を守ろうとする。
異端を消し去る事で安心を得ようとする。
この時代の連中なら尚更か……
「柊さん、先程は助けて頂いてありがとうございました」
それでは…っと立ち去ろうとする慧音を呼び止めた
「慧音!…一ついいか?」
「はい…?」
「お前は、人間と妖怪が共存する世界ってのがもしあったら…どう思う?」
「人間と妖怪が……共存?」
「そうだ。この際あり得るあり得ないは置いといて、考えてみてくれ」
突拍子もない質問。
だが半獣である慧音だからこそ聞きたかった
「………私は」
「住んでみたいですね。そんな世界なら」
少女は微笑みながら答えた
「…そうか」
それだけ聞ければ十分だな
俺は何も無い空間に向けて叫んだ
「紫!」
「はぁーい」
すると目の前の空間が裂け、中から(ry
「話は聞いてたな?頼めるか?」
「ええ。歓迎するわ」
「えっ?何も無い所から女の人が……えっ?」
慧音はまだ状況が飲み込めていない
「慧音、よく聞け」
俺はまた思考がショートしそうな慧音の肩に手を置き向かい合った
「わわっ!!ひ、柊さん!?」
「さっき言った世界なんだが……実は実際にあるんだ」
「……えっ?」
〜半年前
「でもそんな世界創るなんて本当に出来るのか?さっき自分で言っといてナンだけど」
すると
「ふふっ、よくぞ聞いてくれたわね」
っと、得意げに胸を張る紫
「実は土台となる世界自体は殆ど完成しているのよ。後は生活出来る様に環境を整えたりするだけ。それと…」
「そこに住む住民か?」
「ええ。そこで隼斗にお願いがあるんだけど…」
「お願い?」
「もし隼斗の知り合いで私の創った世界に住んでもいいって方がいたら誘ってもらいたいのよ」
「ふーん、まあそれくらいならいいぞ」
「でね?その世界の名前なんだけど」
「おっ、そういや聞いてなかったな。なんて言うんだ?」
「ふふ、人と妖怪が共存出来る理想郷……称して…」
〜〜
「『幻想郷』と呼ばれる場所だ」
「幻想郷……」
「今はまだやっと土台が出来たばかりの場所だが、此れからも住民はどんどん増えるだろう。だから慧音には主に人間側の長になって貰いたい」
此れにはちゃんとした理由がある。
幻想郷とて人間は人間。万が一に備えてその身を守るには強い存在が必要だ。
そこで半獣でありながらも人の心を持つ慧音に人里の守護者を担って貰おうと考えた
「はっきり言って無茶な頼みをしてるのはわかってる。だが敢えて問おう。上白沢 慧音。お前が必要だ、幻想郷に来てはくれないか?」
暫しの沈黙
「……私は、自分という存在が嫌いでした。あんなに仲の良かった皆が揃ってこう言うんです。「人の皮を被った化け物」って」
「…っ」
「だから思ったんです。村の皆が変わってしまったのも、こんな悲しい気持ちになるのも、全部私自身のせいだって」
「慧音それは…」
「いいんです。それでも……それでもね?さっき隼斗さんから幻想郷の話をされて、必要だって言って貰えて凄く嬉しかったんです。ああ、私でも役に立てることがあるんだなって」
「…」
「柊さん!そして……えっと…」
「八雲 紫。紫でいいわ」
「では紫さん!先程の件、謹んでお受け致します。私を幻想郷へ連れて行って下さい」
「いいんだな?本当に」
「はい!」
決意の篭った真っ直ぐな瞳。
久々に見たな
「紫、頼む」
「ええ。では一名様ご案内〜」
紫が空間を指でなぞると、スキマが展開される
「さあどうぞ。この先が幻想郷に繋がってるわ」
「ありがとうございます。紫さん、柊さん。」
「隼斗でいい」
「えっ?」
「俺だけその呼び方だとアレだし。名前でいい」
少女は「では、」っと言いつつ最後に此方に向き直り、
「隼斗さん!お世話になりました。このご恩は決して忘れません。いつかお礼は必ずします」
「ああ。達者でな、慧音」
俺はスキマの向こうへ消えていった少女に小さく呟いた
ーーーまた会おう