東方万能録   作:オムライス_

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なんとか間に合いました。
今回は紫主催の作戦会議の話です



137話 幻想郷首脳会議

 

幻想郷・某所。

異変から数日経ったこの日、各地の代表がとある一室に集められていた

 

室内は空間ごと引き伸ばされた様な不自然な広さがあり、中心に配置されている長机以外何も置かれていない殺風景な部屋となっている

 

部屋全体が重々しい空気を纏っている中で、主催者である八雲 紫の口から集会の始まりが告げられた

 

 

「全員揃ったみたいだからそろそろ始めましょうか」

 

「……その前に一ついいかの?」

 

 

開始にストップをかけた声は紫の真向かいから。室内は薄暗く、明かりは机の中心に置いてあるキャンドルのみであるため、夜目の効く者で無い限り互いの顔を確認することが難しい

 

 

「何かしら?……天魔さん?」

 

 

声の主は妖怪の山を治める天狗の長、天魔の位を持つ『陽高 彩芽』。

その口からやや不機嫌気味の声色で、幻想郷賢者の言葉を遮った理由を告げる

 

 

 

 

 

「何で話し合うというのに部屋がこんなにも暗い?何故カーテンを全て『閉め切って』部屋の明かりを消しているのじゃ?意味あるのか?」

 

「………」

 

 

古風な口調で捲し立てられ、沈黙の賢者。

両肘を机に乗せ、組んだ両手で口元を隠した圧迫面接中の試験監督がやってそうなポーズのまま固まってしまった

 

 

(いや誰でもツッコミ待ちかと思うでしょ)

 

 

そう心の中で呟いた幽香を始め、此処に集まった殆どのものがウンウンと頷いている。

だがここで、スマイルのまま眉だけがひくひくと痙攣している賢者の横合いから幼さの残る声で援護射撃が入った

 

 

「そんなもの決まっている。暗い部屋でやった方がなんかこう悪の組織みたいでミステリアスだし、カリスマチックだし。緊張感ある厳粛な話し合いの場では必要不可欠な演出だろう?」

 

「…………………………………」

 

 

残念ながら自称カリスマを語るちびっ子吸血鬼の援護射撃は誤射に終わった

 

より深くなった沈黙を破る様に、部屋一面に光が差し込む

 

 

「カーテンくらい開けろ」

 

 

そう言って完全に部屋と同化していた、『赤い』カーテンを開け放った長身の男はどかりと席についた

 

 

「だってこの方が集会らしいってレミリアが言うから……」

 

「間に受けんな。話し辛いっつーの」

 

 

 

此処は幻想郷・某所。

霧の湖に建つ館、ーーー『紅魔館』。

 

此処の主であるレミリア・スカーレットは不機嫌そうに机をコツコツと指先でノックする

 

 

「何よ、折角城を集会の場として使わせてやってるのに私の案にケチつける気?」

 

「それについてはありがとう」

 

 

視界の外でブーイングを垂れるレミリアを尻目に、一度咳払いした紫は改めて話し始める

 

 

「今異変のあらましは前もって伝えていた通りよ。首謀者は本気で幻想郷、そしてこの世界を落とすつもりで襲撃してきている。各地域でも襲撃による被害が出たみたいだけど、次に来る時はより強力な兵士を導入すると言っていたから現状よりも戦力を固める必要があるわ」

 

「『地底』の住人である私達も呼ばれたのはそう言った理由ですか。でも確かに多くの負傷者を出してしまったのは事実。勇儀さん達がいなければ危なかったでしょうね」

 

「……まだまだ若い連中とは言え、鬼相手に張り合う奴らだからね。喧嘩は好きだけど、今回ばかりは後味悪いよ」

 

 

地底に存在する地霊殿の主、古明地 さとりに続き、頭に一本角を生やした鬼、星熊 勇儀は腑に落ちないと言った感じで髪を乱暴に搔き上げた

 

更に地上の鬼である伊吹 萃香も心境同じくして呟く

 

 

「私が妖怪の山に駆け付けた時には既に山中化物だらけだったよ。最初の化物発生の知らせを聞いてから10分と経っていないのに、だ。お陰で彩芽の所へ行くのに時間がかかっちまった」

 

「ふむ、とは言え萃香殿、その節は助太刀に感謝致しますぞ。……化物達が現れたのは各地での証言を聞く限り、ほぼ同時刻のようじゃ。つまり、」

 

 

天魔の言葉に被せるように紫は言った

 

 

「敵は任意の場所に化物を投入する事が出来るうえ、此方側は時期も場所も予測する事が出来ないと言うこと。今この瞬間にも、この館を取り囲まれていても不思議じゃないわ」

 

 

一同、光の指す窓の外に視線をやる。小鳥の囀りさえ聞こえてきそうな長閑な風景が広がっていた。この景色が、一瞬にして戦場へ変わるかもしれないのだ。

太陽の畑の妖怪、風見 幽香は想起する怒りに心なしか赤眼をぼんやりと光らせながら低く呟く

 

 

「だったらもう一度捻り潰すまでよ…!」

 

 

今回の一件で太陽の畑はその四分の一が壊滅的な被害を受けていた。

踏み荒らされた花々、見るも無残にひっくり返された畑。彼女の憤怒は花の妖怪である以前に、丹精込めて育て上げた『子』達を奪われた親の怒りのそれだった

 

化物達は根絶した。爪一欠片足りとも残す事なく、虐殺も交え、完全に消滅させた

 

 

「勿論、その時が来たら貴女の力も必要になるわ。其れまで太陽の畑は私の結界で囲っておくから安心してちょうだい」

 

「……その体たらくで張った結界が役にたつのかしら?」

 

「風見幽香!!貴様ァッ!!!」

 

 

主君への暴言に思わず席を立ち、幽香へ詰め寄る藍。

幽香も無言で睨み返すが、数秒の睨み合いの後、掌で顔を伏せ、溜息を吐きながら言った

 

 

「……………悪かったわ。でも今は恩情とか美辞麗句を口にする気分じゃないの。私に非があるから噛み付かれても何も言わない。お好きにどうぞ」

 

「……ッ、」

 

 

複雑な心境のまま、歯噛みしつつ席に着く藍を流し目で見送りながら、守谷の神々は周囲が聞き取れるかどうかの音量で呟いた

 

 

「……死の天使か。本来神に仕えるべき天使が神に匹敵する力を持ち、世界を破滅へと導こうとは……」

 

「……私達が全盛期の力を得たとして………、神奈子、勝算は?」

 

 

諏訪子の質問に、神奈子は即答した

 

 

「ほぼ無し。話を聞く限りじゃ、かの龍神様や魔界の最高神ですら打つ手がなかった奴よ。高々神話『程度』の力しか持ってない私達じゃぁね……」

 

「あれま」

 

 

ニ柱は異変が終息した丁度その日に、様子を見に来た隼斗と会っていた。軽くではあるが、そこで今異変の黒幕について見聞した時には流石に茫然としたものだ

 

『ほぼ』と表現したのは飽くまで可能性が0では無いと言うだけ。幼児とレスラー程の圧倒的力の差があったとしても、同じくして人(この場合は神の力を持つ者どうし)であるならば傷を負う条件は同じだ。奇跡が起きれば万が一にも勝てるかも知れない、と。

唯これはまだサリエルの力の正体について聞かされていない神奈子個人の見解であるため、事実勝率は0%となる

 

 

「……だからって黙ってやられるわけにもいかないけどね。あの子の為にも」

 

 

脳内に浮かぶ、頭に白蛇と蛙の髪飾りを付けた緑髪の少女を見つめ、ニ柱は静かに決心した

 

 

「もしも、今後各地で防衛線を引くのであれば、やはり懸念が強いのは人里だ。あそこにはまともに戦闘を行える者が殆どいない。今回は私や妹紅、そして命蓮寺の協力があったからこそ運良く死者だけは出さずに済んだが、より激化が予想される次回では、な」

 

「確かに。可能であれば里の方達を命蓮寺でかくまう事も一つの案として考えていましたが、先程の話を聞く限りでは実質的に安全な場所など無いようですし、少なからず結界を張ることは有効な防護策なのでしょうか?」

 

 

人里で寺子屋の教師を務める上白沢 慧音、そして同じくして共闘した聖 白蓮は、先程の『太陽の畑を結界で護る』と言う話を聞き、ならば人里も同様にと考えていた

 

 

 

しかし紫は首を横に振った

 

 

「恐らくだけど、貴女達がいくら強度の高い『唯』の結界を張っても効果は無いわ。結界とは外部との干渉を断つ一種の世界形成のようなものだけど、奴らはその世界間を飛び越えて出現してくる。完全に侵入を拒むには特殊な処置を施す必要があるわ。例えば境界を操る能力とかね」

 

「なら、人里にも頼めないか?」

 

「ええ、お安い御用よ」

 

 

二つ返事で了承する紫。

そして、続け様に集会の流れを進める為次の議題に移った。

それはある意味、この集会に於けるメインイベントだった

 

 

「隼斗、約束の時間よ。そろそろ聞かせてもらえるかしら?」

 

「妖忌、貴方もね?」

 

 

ピタッ、と周囲の流れが止まり、その場の視線が二人の男に集まった

 

 

「……わかった」

 

「……むぅ」

 

 

隼斗は困った様な表情を作ると、渋々と言った感じで口を開いた

 

 

「どっから話したもんか。」

 

 




久々の登場、天魔様です

次回の投稿日は1〜2週間後となります
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