東方万能録   作:オムライス_

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お待たせしました。



140話 暗躍する英雄

 

龍神は怪訝な表情を作りながら、髪を掻き上げつつ答えた

 

 

「頼み、か。まっ、一応私とてお前には悪い事をしたと思っている。聞くだけ聞こう」

 

 

どのみち龍神クラスの神に『自分から会いに来れる』レベルの男に対し、帰れと一蹴したところで素直に応じるとは思えない

 

 

「死の天使を倒す上で力を借りたい」

 

「はあ?」

 

 

隼斗は思わず呆れた声を漏らした龍神に構わず続けた

 

 

「アイツは間違いなく、アンタ等クラスの神が動かなきゃならないレベルの奴だ。俺も特記戦力なんて言われちゃいるが、正直今のままじゃお手上げ状態…、いくら力で勝ってようが、暖簾に腕押しじゃ意味がねェ」

 

 

その言葉の意味を理解した上で、龍神は鼻で笑う

 

 

「はっ、お前が奴を倒す?確かにこの世の人間にしては規格外の力を有しているが、だとしてもッ、……そいつは些か高慢ちき過ぎやしないかね?更に手を貸せと?」

 

 

捲し立てる様に言葉を連ねる龍神に対し、隼斗は一言で返す

 

 

「そうだ」

 

 

龍神の眉が動く。

その一言で僅かに持ち上がっていた彼女の口角は下がり、同時にジリジリと周りの空気にかかる圧力が強まっていく。

既に常人なら心身ともに押し潰されてしまうであろう力の奔流を無視して隼斗は続けた

 

 

「前に言ってたよな?この世界で起きる事象は俺達の問題…、本来は自分が干渉するべきじゃねェって」

 

「……こうも言った筈だ。世界のバランスが崩れる危険性がある時が私の動く時だと。今がまさにそうだろう」

 

「いいや。まだグレーゾーンだ」

 

「………………おいおい、いい加減にしておけよ人間」

 

 

ここにきて、苛立った口調を隠そうともせず龍神は吐き捨てるように言った

 

 

「分をわきまえろ。お前達に任せて世界が奴の手に堕ちてしまったらもう取り返しはつかないんだぞ。そうなる前に私が……」

 

 

遮る様に隼斗は言った

 

 

「例え『世界ごと無に帰した』ところで同じ事だ。奴は平然と復活してくるだろうな」

 

「……」

 

 

音も無く、何の予兆も無く飛び出した真空の刃が隼斗の喉元へ突き付けられる

 

 

「なら貴様に何ができる?」

 

 

躊躇は無かった。

突き付けられた刃は、その者が返答するよりも速く押し込まれた

 

 

だが聞こえてきたのは……。

 

 

「……仕方ねェな。そんなに信用ならねェなら……」

 

 

ーーー瞬間、爆風が発生し、真空の刃は掻き消された

 

目の前の男からドス黒い力の塊が一気に噴き出し、周囲を包んでいた龍神の気が塗り替えられる

 

 

「ッ!?柊 隼斗……、お前」

 

 

一歩、龍神は後ずさった。

 

 

《証明してやるよ》

 

 

エコーのかかった声がその場に重々しく響く

 

 

 

ーーー

 

 

迷いの竹林・深部。

人気の無いこの場所で、白髪の少女 藤原 妹紅は全身から滝の様な汗を掻き地面に突っ伏していた

 

身体の外部へ放出しようとする霊力を、繊維に負荷を掛ける事無く通過させる特殊なインナー。

その背部は凄まじい熱気により、陽炎の様に揺らいでいる

 

 

「くそ…!駄目か……」

 

 

妹紅はいつも着ている白いワイシャツを傍に置いていた

 

理由は単純。

着たままでは弾け飛んでしまうから

 

 

「やっぱり簡単にはいかないか」

 

 

彼女は修行中だった

 

 

〜〜〜

 

数日前

 

 

妹紅は師である柊 隼斗から久々に修行を見てもらっていた。

今異変によって大きな被害と今後の危機を抱える事となった幻想郷で、『戦える者』の側にいる妹紅は、近い内に訪れるであろう戦闘に備えて『更なる力を付ける方法は無いか』、と訪ねたのだった

 

 

「瞬閧?あの師匠がよくやるやつ?」

 

「そうだ。短期間に力を付けたいなら修得しといて損はないぞ」

 

「そっか。よしやろう」

 

 

何の疑いも無く袖を捲りストレッチを始める妹紅を見て、隼斗は微笑ましく思いながら軽く瞬閧を発動させた

 

 

ズンッ!!と、竹林全体が震撼する

 

 

隼斗の背から噴き出す高濃度の霊力は、一見すると荒々しく描かれた羽のようだった

 

 

「おおっ……!」

 

「瞬閧は圧縮した霊力を炸裂させる事で、爆発的な火力を生む技法だ。鬼道を僅か数年で使えたお前なら修得自体は難なく出来るだろ」

 

 

隼斗は『だが』と付け加え、

 

 

「問題なのは発動してからだ。こいつはやたら燃費が悪いから、余程霊力量に自信のあるやつじゃなきゃ数秒と維持出来ねーだろうな。それじゃあ、とても戦闘への導入は無理だ」

 

「じゃ、じゃあどうすればいいの?」

 

 

首を傾げる妹紅へ見せるように、隼斗は背から噴き出す霊力の『形を変えた』。

 

 

「!?」

 

「これが瞬閧の『最終系』。力の無駄な放出を抑え、洗練された形を保ちつつ、力の漏れの一切を無くす。こいつが修得出来れば上々だ」

 

 

〜〜〜

 

 

妹紅は立ち上がり、改めて身体中に霊力を循環させる

 

 

(これで8回目。絶対物にしてやる!)

 

 

その数が表すものは、瞬閧を発動させた回数ではない。

霊力の過剰消費により、『死亡した回数』だった。不死の身体を逆手にとった、とんでもない荒修行…。

 

少女の両肩と背に高濃度の霊力で形成された火炎が噴き出す

 

 

 

 

 

(……イメージだ)

 

 

……僅かに、不安定で纏まりの無い炎が、鳥の翼の様な形状に変化した

 

 

 

ーーー

 

 

人間界某所に出来た異空間で、創造神である龍神は地に膝を付いていた。

その様子を見下ろす人影は、静かに言う

 

 

《悪いな。今回ばかりは俺も引けねェんだ》

 

 

肩で息をする龍神は、これでもかと言うほどの大きな溜息を吐いた

 

 

「そんな哀れんだ瞳を向けるな戯け。こちとら本当に負けるとは思ってなかったんだぞ、まったく!……………その不愉快な物をさっさと外せ」

 

 

目の前に佇む『髑髏状の仮面』を被った男へ、そう悪態付いた

 

男が仮面に手を当て顔の外へ払うと、仮面は散る様に消失した。

中から現れた隼斗は小さく呟く

 

 

「約束だ龍神。今回の件、俺に一任させてもらうぜ」

 

「強引に話を進めといてよく言う。…はぁ、勝手にしろ」

 

 

俯き、片手をパタパタと振る龍神を見つめ、隼斗は踵を返した。そして懐から札を数枚取り出し目の前に放る

 

 

ズッ…!と、宙に浮いた数枚の札が結ぶ区間がぱっくりと割れた。

隼斗はそこへ片足を乗せ、最後に一言呟くと空間の向こう側へ消えた

 

 

一柱、残された龍神は頭をがしがしと掻き、吐き捨てた

 

 

「馬鹿者め」

 

 





龍神はわかるけど、さらっと当然の様に異空間作れる様になってたか隼斗ェ…。


次回の投稿はまだわかりませんが、ちゃんと投稿しますのでよろしくお願いします(_ _)
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