「なあ妖忌」
「む、何かな?」
「あの桜の木はなんだ?」
俺と紫が白玉楼を訪れて一月
今俺は庭で妖忌と組み手をしている
最初は妖忌が日課の鍛錬にもっと磨きをかけたいと言うことで手伝ってたんだが、やってるうちに俺も楽しくなってきて今では俺から誘うほど
…話を戻すと白玉楼には大きな桜の木がある。
唯の桜の木なら俺もそこまで気にしないんだが、どうもあの木からは嫌な感じがする。
「ふむ……やはり気になりますか」
「まあ、な」
「スキあり」
「痛て!?」
見事な兜割が脳天に入った
「それで?アレは一体何なんだ?唯の桜じゃないんだろ?」
組み手後、縁に座って休憩。妖忌は相変わらず素振りしてるが…
「…西行妖」
「西行……『妖』?」
「…少々長い話になりますが宜しいか?」
「…ああ。話してくれ」
ーーー昔、この白玉楼には春になるとそれは見事な花を付ける桜の木があった。
白玉楼前当主にして歌聖でもある西行寺 富士見様はその桜を大層気に入っておられた。
娘である幽々子様が産まれてからも同様に大事にしてきたそうだ。
だがある日悲劇は起きた……
アレは今の様な春の季節。
病を患われていた富士見様はある願いを口にした。
「あの桜が満開になった時、我命も尽きよう。ならば桜の木の下で眠りにつきたい」っと……
富士見様が息を引き取られたのはその三日後の事だった。
満開になった桜の木の下で永遠の眠りついたのだ。
富士見様が亡くなられてから数日後、この白玉楼内で新たな死亡者が出た。富士見様を慕っていた者達だ。
後を追うように、次から次へと。
満開になったその桜の下で死んでいった。その桜は死んでいった者達の生気を次々と吸い取っていき、ついに妖力を放つ様になってしまった。
そしてこの事から妖怪桜、『西行妖』と呼ばれる様になり、毎年の様に死亡者が後を絶たない
・・・
「そんな事が……」
「時に柊殿、幽々子様の能力をご存知か?」
「…いや、知らないけど。何でまた?」
「死に誘う程度の能力」
「!?」
「元々は死霊を操る程度だったはずの能力が西行妖の誕生と共に変化したのです」
「じゃあ、毎年出る死亡者ってのは……幽々子が?」
「……断定は出来ませぬ。唯、死亡者は幽々子様の能力が変化する前から出ている。単にそう決めつける事は出来ませぬ」
「……その妖怪桜をどうにか出来ないのか?切り倒しちまうとか、燃やすとか」
「西行妖は今や人の生命力を吸収し過ぎたせいで莫大な妖力を蓄えている状態。下手に刺激を与えればその力を放出してしまうかもしれない。よって手が出せないのです」
つまり死のエネルギーを持った爆弾ってとこか。
厄介だな。いざとなったら力尽くで破壊してやろうと思ったのに
「あら〜?二人して何の話をしているの?」
「「!?」」
急に声がかかり振り返ると幽々子が歩いてきた
「いや、まあアレだ。妖忌の剣術が凄いもんだから俺にも教えてくれよって頼んでたんだよ!なっ?」
「コホンッ。ええまあ、柊殿程の実力があればその必要は無いと申したんですが」
「あらあら貴方達最初と比べて随分仲良くなったのね〜」
「ま、まあな」
「じゃあ私は紫の所に戻るわね〜」
・
・
・
「聞かれてたか?……俺らの話」
「どうでしょう……何分掴み所の無いお方ですから」
今思えば俺は気付くべきだった……
いや、薄々気付いていたのかもしれない。
俺たちが最初に此処を訪れた時よりも西行妖の気配が強くなっていることに
再び西行妖が満開になったのは、それから三日後の事だった