俺と妖忌は禍々しい力を放つ西行妖の猛攻に防戦一方だった。
攻撃自体は単調で、急速に枝を伸ばす事での刺突のみ。
接近戦が得意な俺や妖忌にとって避けるのは難しくない。
だがその枝は避ける事は出来ても、受けることが出来なかった
「妖忌、絶対に枝の一撃は受けるなよ!生命力を吸い取られるぞ!」
「心得ております!」
生命力を吸収する程度の能力
この妖怪桜の力を能力名で表すならこんなとこだろう。
受ける事が出来ない分此方からは迂闊に近寄れず、向こうは一方的に攻撃出来る
だが此方もやられっぱなしって訳にはいかない
「舐めんじゃねェ!!」
拳を握りしめ目の前の空間に向けて拳を突き出す。
これにより生じた衝撃波が空気の弾丸となり迫ってくる枝を粉砕した
「はあァァっ!!」
妖怪も紙一重で枝による突きを避け、すれ違い様に切り落としている。
触れるのが一瞬ならば生命力を奪われる心配がない
「駄目だ!キリがない…」
だが幾ら潰そうとも無尽蔵に湧いてくる枝に対して此方は徐々に体力を消耗するだけだった。
「隼斗!妖忌!」
っと、ここで紫から声が掛かった
俺と妖忌は一旦西行妖と距離を取るため後退した
「紫!もう大丈夫なのか?」
「ええっ……ごめんなさい。私としたことがみっともない姿を晒してしまって」
「いや、気にしなくていい。それより何かいい案は無いか?」
「……あるわ。一つだけ」
「紫殿、その案と言うのは?」
紫の発言に妖忌が尋ねる
「いい?二人とも心して聞いて頂戴。あいつを……西行妖を封印するわ」
「封印?そんな事出来るのか?」
「私一人の力ではあの莫大な妖力を抑え込むことは出来ないわ。だから力を借りるの」
「借りるったって、俺も妖忌も封印術なんて使えないぜ?」
「……そうね。だから……幽々子の身体を使うの」
「なっ!幽々子様の!?」
「妖忌、貴方が驚くのも無理はないわ。我ながら最低な方法だもの」
「…でもそれしか方法が無い。そうだな?」
「…ええ」
「…どうすればいい?」
「いいの…?こんな方法なのに…!」
「やるしかねェ……それでコイツが止められるなら!!最低だろうが何だろうがな」
「…妖忌は?」
「……もし幽々子様が生きておいでなら今の腑抜けた私を叱るでしょうな」
「…妖忌」
「やりましょう紫殿。今は西行妖を止めなくては…!」
「……わかったわ」
・
・
・
・
「二人とも頼むわよ」
「任せろ」「お任せを」
紫は封印の為の術式を組み上げる間は完全な無防備状態になる為、俺と妖忌で西行妖の攻撃から紫を守り抜く必要がある
「!…来ましたぞ!」
再び西行妖の枝が伸びる。
しかも先程とは違い無数に枝分かれし、俺たちを取り囲む様に枝が展開された。
「ちっ!一箇所に固まった所を纏めてってハラか…!」
だが離れるわけにはいかない。
西行妖を封印するには紫を死守しなければ…!
「妖忌、向かってくる枝は全て打ち落とせ!何としても守り抜くぞ!」
「御意!」
そして一斉に枝が四方八方から襲いかかって来た
「シッ!!」
「ふっ!!」
短く息を吐き伸びてくる枝一つ一つに連撃をぶち込んでいく。
妖忌も同様に枝を斬り捨てる。
西行妖の猛攻は止まらない。
寧ろ段々と勢いを増してきている
「くそっ!紫まだか!?」
「もう少し!もう少しだけ粘って!!」
ピクッ
ここで西行妖に変化が生じた。
コイツに明確な思考能力や意思があるかなんてのはわからない。
西行妖にとって紫の組み上げる封印術式は脅威となるだろう。
それを理解したのか………
標的をこの場の全員から紫に絞った
俺たちに分散する形で動いていた枝が蛇の様に巻きつけられる。
枝は一つの束になり、一本の巨大な蔓を形成した。
「!…紫、伏せろ!!」
「きゃあっ!?」
俺は横薙ぎに振るわれる蔓から紫を上から抑え込む形で回避した。
幸い術式も途切れたりしていない。
「くそっ!紫、無事だな?」
「え、ええ……助かったわ」
「妖忌、無事……!?」
「ぐっ……ふ、不覚…」
妖忌だけは避け切る事が出来ず吹き飛ばされてしまっていた
「妖忌!?大丈夫か!?」
「心配は無用です……咄嗟に…半霊を盾にした故…ぐっ…!」
だがどう見ても重傷だ。
とても戦える状態じゃない
「妖忌、まだ動けるなら出来るだけ離れてろ」
「し、しかし……!」
「いいから下がれ」
「っ!」
「!…隼斗、出来たわ!!」
「!」
ここでついに紫の術式が出来上がった
「ひ、柊殿!西行妖が……!」
妖忌の言葉に反応して前方を見ると、西行妖が更に輝きを増し、蔓の先に妖力を集中させている。
「!」
そして蔓は俺諸共紫を串刺しにすべく突き出された。
アレを凌げば俺たちの勝ちだ…!
拳に有りっ丈の霊力を流し込み、迎撃態勢をとる
「はあッ!!」
此方も前に踏み出し全力で殴り付けた。
「!?」
だが最後の最後で西行妖は予想外の動きを見せる
結果から言えば拳は空を切った。
突き出された蔓は一本一本の枝を収束させたもの。
拳がぶつかる瞬間西行妖は収束させた蔓を再び分散させることで、俺を避けつつ紫を狙ったのだ
「……クソッタレがァァァ!!!」
ザシュゥゥゥッ!