東方万能録   作:オムライス_

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今回で西行妖編終わります


19話 封印

ーーー隼斗の拳を躱し、命を刈り取る無数の枝が紫へと向かう

 

「……っっっクソッタレがァァァ!!!」

 

 

ザシュゥゥッ

 

 

無数の枝が突き刺さり、鈍い音が響く

 

鮮血が飛び散る

 

 

 

 

 

 

 

 

八雲 紫は手で顔を覆い、来るべき衝撃に備えていた。

無論そんな事をしても防げる訳が無いのだが殆ど反射の様なものだ。

術式の展開中でなければ、能力を使い防げたかもしれない。

 

 

しかし幾ら経っても衝撃は来ない。

痛みすらない

 

紫は瞑っていた目を開けた

 

「えっ……?」

 

紫の目に飛び込んできたのは、身体の彼方此方を無数に貫かれながらも西行妖から自分を守る様に立ち塞がる隼斗の姿だった

 

「う、そ……隼斗、そんな…!」

 

思わず駆け寄ろうとする紫に声が掛かる

 

「っっっ!紫…!!」

 

「!」

 

「俺ごとでいい……封印を掛けろ!!」

 

「!?…そんな事をしたら貴方が!」

 

 

 

本来なら対象を定めた封印術は他者を巻き込むことはない。飽くまでその対象のみを封じる為に組まれた術式だからだ。

 

だが隼斗は西行妖の枝に捕まり生命力を吸われている

 

つまり今隼斗は一時的に西行妖とリンクしている状態

 

そんな状態で封印術を掛ければ、隼斗にまで影響が出てしまうかもしれない

 

隼斗もそんな事は理解している

 

「……俺は大丈夫だ」

 

「でも「躊躇うな!!」…っ!」

 

「……今この妖怪桜を止められるのはお前しかいないんだ!だから躊躇うな、紫…!」

 

 

 

 

 

 

 

「………一つ、約束して」

 

「…」

 

「貴方は……貴方だけは居なくならないで…!お願い…!」

 

もう二度と友を失いたくない。

もうこんな思いはしたくない。

 

だから…!だから…!!

 

 

 

「安心しろ。俺は死なない」

 

「…ありがとう」

 

 

紫が封印術式を発動させると幽々子を媒体に術式が浮かび上がり、眩い光が西行妖を包んだ

 

そして光が消えたと同時に辺りを包んでいた禍々しい妖気も消えていた

 

 

「終わっ…た?………ハッ!隼斗!どこにいるの!?」

 

「……落ち着け紫、此処だ」

 

「隼斗…!!よかった……って酷い怪我!直ぐ治療しないと…!」

 

「……心配ねェって……俺は…大丈……」

 

「隼斗!?……と!ーー!!」

 

此処で意識は途切れた

 

 

 

 

 

 

 

ーーー3日後

 

 

「ん……うん?」

 

目を覚ますと見覚えのある部屋に寝かされていた。

 

「おや、気がつかれましたかな?」

 

「……妖忌か」

 

襖が開き、妖忌が入ってきた

 

「あの後俺はどうなった?」

 

「…まだ詳しい事はわかりませんが、恐らく過度な出血と封印による影響で一時的に昏睡状態に陥ったものかと」

 

「…そうか。紫は?」

 

「居間で談笑しておられます。それでは私は此れで」

 

そう言って部屋を後にする妖忌

 

 

ーーー談笑?

 

妖忌は今し方此処に来たのだから紫は今一人の筈だが……?

 

「まさかアイツ今回のショックで頭がパーに……!」

 

俺は勝手な推測を立て急いで寝室を飛び出し居間に向かった

 

ダダダダダダッ

 

バンッ!

 

「紫!!」

 

「隼斗…!?貴方目を覚まして…」

 

「馬鹿野郎!気をしっかり持て!!」

 

「は、はぁ?」

 

「幾らショックでもお前!おま……え?」

 

「あらあら随分賑やかな方ねぇ〜」

 

「………………はっ?」

 

「もう!人が折角心配していたのに開口一番馬鹿野郎とは何よー」

 

そう言って膨れる紫だがちょっと待て

 

 

「何で幽々子が此処に……!?」

 

今俺の目の前には死んだ筈の幽々子が茶菓子を頬張りながら不思議そうに此方を見つめている

 

 

「あら〜?私貴方に会った事あったかしら?」

 

「………紫、どう言うことだ?簡潔明瞭に二十文字以内で教えてくれ」

 

「無理よ」

 

ーー

 

さて紫から話を聞いたが理解が追い付かないので箇条書きで纏めてみよう

 

 

 

 

・幽々子は間違いなく一度死亡している

 

・あの世では閻魔が幽々子の今後の処遇を決める際、幽々子の魂は肉体ごと封印されている事に気付く

 

・死者は肉体から魂が離れる事であの世に送られ、初めて裁く事が出来る。つまり現状幽々子を裁く事が出来ない

 

・閻魔は亡霊となった幽々子を冥界と呼ばれる場所の管理者にする事で現世に留まる事を許可する。

 

・その際幽々子の能力を『死を操る程度の能力』に変化させる事で安定させた

 

・亡霊として蘇った幽々子に生前の記憶はない

 

・紫は友達が少ない

 

 

「成る程、なんとなくわかった」

 

「ちょっと!最後のは可笑しいでしょう!?」

 

お約束のボケに紫がツッコミを入れていると、幽々子は微笑みながら俺に話しかけてきた

 

「ねえ、貴方の名前を教えて頂けるかしら?紫のお友達なのでしょう?」

 

「……」

 

ああ、そうか。記憶が無いんだもんな。

 

西行妖の一件も、俺達の事も……

 

 

 

 

「俺は柊 隼斗。よろしく頼むよ」

 

「ふふ、西行寺 幽々子よ。此方こそよろしくね〜」

 


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