遅れて永遠亭組。
「大分出遅れちゃいましたね」
そう言って早足に歩みを進める鈴仙は、前を行く師の背に語りかける。
「仕方ないわよ。今日は急患も多かったし、何より突発的なイベントだものね」
どこからともなく取り出した一部の新聞記事をひらつかせ、永琳は迷うことなく夜の林を歩いていく。
「にしてもお師匠様、どうして途中から歩きに変えたのさー?あのまま飛んでけばよかったのに」
一同の最後尾を退屈そうに追従するてゐは、すっかり暗くなった空を仰ぎ見ながらぼやいた。
「こら」っと鈴仙。
同じく弟子の立場であるてゐのその砕けた話し方に引っ掛かり、小さく窘める声を飛ばすが、当の本人はどこ吹く風だ。
「参拝って言うのはそういうものなのよ」
永琳が端的に応じ、続いてやや浮かれた調子の輝夜が、周囲を見渡しながら告げる。
「ふふっ、私は散歩してるみたいで中々悪くないと思うけどな。『風情がある』、って言うのかしら。まっ、てゐにはわからないかしらね」
「あらあら、普段から閉じこもってる姫様にはなんでも新鮮に見えて羨ましいですわ」
売り言葉に買い言葉……とまではいかないが、今自分は揶揄われたのか、と判断してからのてゐの返しは迅速なものだった。
対して、輝夜はキッと目線を下方の兎耳小女に合わせ、反論を述べる。
「あら失礼ね!私だってごくたまに外を散歩することくらいあるわよ!あの焼け野原と勝負する時だって───」
「へっ、それは屋敷の中でやったらお師匠様に叱られるからでしょ。それにごくたまにって───」
「はいはい、お話はその辺でお終い!」
危うく白熱しかけた口争を、鶴の一声で抑制した永琳は、歩みを止めて目の前に続く石階段の先を指した。
一同が見上げた先には目印となる鳥居が見え、何やら賑やかな音が耳に届く。
「やっぱり、私達が最後…ですかね」
不安げな様子の鈴仙。
しかし輝夜とてゐはくすりと笑みを溢した。
「なーに心配してるのよ。別に時間の取り決めがあったわけでもなしに」
「そーそー、皆んな集うべくして集ったって感じだしね」
鈴仙は互いに意見を同調させ合う二人を見て、先程の口争はやはり冗談だったのかと胸を撫で下ろした。
──
永琳達が境内に入った時点で、予想通り、既に多くの参拝者が集っていた。
その多くは見知った顔で、もちろんはじめましての者もちらほら。
その大半が各地を代表する者達なのだから、参拝にきた面子としては中々に豪勢だ。
月や魔界と比べ、決して広大とは言い難いまでも、そこそこ広い幻想郷で長年過ごしてきた永琳でさえ、直接関わりを持つ者は少ない。
全ては彼が今まで築き上げてきた絆の結晶であり、自分達もその一部だ─────
「なんだかお祭りみたいで楽しそうね」
「うぅ…、知らない人がいっぱい。ちょっと緊張してきた」
「鈴仙、いつからそんな
───何よりそう思えることが誇らしい。
「さっ、私達も行きましょう」
一つ、また一つと繋ぎ合わさっていくパズルのピースは、確実に一つの形を成していく。
誰に命令されたわけでもなく、ましてや綿密な示し合わせを行い、具体的な目標を掲げていたわけでもない。
最初は胸の内で静かに浮かぶ
それは使命感だったり、自己満足だったり…、ただ何となくと答える者もいるだろう。
だからきっと、彼女らに後悔はない。
だってこれは彼女達が一歩踏み出すための、通過儀礼のようなものなのだから。
数分後、帰宅した先代
「……異変だ」
今年も残すところ僅かとなりましたが、今月はもう一回投稿を予定していますので、年末のご挨拶はその時にさせていただきます。