東方万能録   作:オムライス_

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連続投稿です

今回結構時間が飛びます


古代篇
2話 防衛軍


「ん……夢か」

 

部屋に響く目覚ましのアラーム音によって俺は目を覚ました

 

「ガキの頃の夢を見るなんて老人みたいだな」

 

あれから数百年。

長いようで、時間はあっという間に過ぎた

 

この世界では元々寿命という概念がないらしく、人々は老いる事はなかったが、百年程前に突如妖怪の数が急増

それと同時に穢れと呼ばれるモノが見つかり、これが原因でこの世界にも寿命が存在する様になってしまった

この世界基準では若く、又超人である俺は大丈夫だったが、元々長い時を生きてきた両親は寿命により30年程前に他界。

 

当時は悲しみにくれ、何も手につかないほどだったが、友人など周りの支えにより立ち直る事ができた。

 

現在俺はこの都市を防衛する軍の部隊長を勤めている

まあ超人になってしまった俺が力を発揮できる所と言ったら軍しか無かったからなんだが

 

超人の力も大分コントロール出来る様になり、何より強すぎる力をセーブすることを覚えた

 

「あら、やっと起きたの?」

 

居間に降りた俺にそう話しかけてきた女性は八意 永琳。

この都市の科学者で、トップレベルの頭脳を持つ存在だ。

 

俺との関係は、遡ること数百年前。

俺がまだ5歳のガキだった頃にお隣さんに産まれた子だった。

お隣さんということもあり、よく遊んだりしていた

俗に言う幼馴染と言うやつで、この世界における俺の大事な親友だ。両親が死んで塞ぎ込んでいた俺を一番気にかけてくれて、元気付けてくれたのも永琳だった。

 

「おはよう永琳」

 

「ふふ、おはよう隼斗」

 

朝の挨拶を交わし一緒に食事をとる。

1日はいつもこうして始まる

 

と言っても別に同居してるわけじゃ無い。

軍に入り、食事を疎かにしていた俺を見兼ねた永琳が「私が作ってあげるからちゃんと食事をとりなさい」と言ってきたのが始めだ

 

なので朝昼晩の食事はいつも永琳が作ってくれる

 

「いつも悪いな、飯作ってもらって」

 

「私が好きでやってることだもの。気にしないで」

 

そんな何気ない朝食を終えると、永琳が真剣な顔になった

仕事の話だろう

 

「最近また妖怪の量が増えてきてるわね」

 

「みたいだな。昨日も都のゲート付近に向かってきていた妖怪とウチの部隊が交戦したけど、隊員は苦戦したらしいし。強い個体も現れはじめてる」

 

ここ最近になって妖怪の動きが活発化し始め、徐々に勢力を増してきている

 

「まあ、今のところ都市内に被害は出てないし防衛も万全な状態だ。そこまで心配することも無いだろ」

 

「だといいけど」

 

 

 

「おっと、もうこんな時間か。今日は部隊長の会議があったんだった」

 

「あらあら、時間は大丈夫なの?」

 

「まあ、少し急げば間に合うから大丈夫だ。じゃあ永琳、ご馳走様。いつもありがとな!」

 

そう言って居間を出て行く隼斗

 

「いつもありがとう…か。」

 

一人居間に残る永琳は隼斗の出て行った扉を見つめる

 

「こちらこそよ隼斗。いつも一緒にいてくれてありがとう」

 

 

ーー

 

「ふう、やっと終わったか」

 

時刻は丁度昼を回ったところ

 

今俺は会議を終えて防衛軍本部の屋上にいる

 

「ったく、半日全部を会議に費やすとか、かったるいったらねえな」

 

「仕方ないですよ。最近妖怪が活発化してますし、何が起こるかわかりませんから」

 

そう俺のグチに応えたのは、俺が指揮する部隊の副官を務める 春雨 麻矢 だ

成績優秀に加え、まだ若いながらも誰からも頼れる存在で、ぶっちゃけ俺よりも隊長らしい

 

「まあ、そりゃそうだけどさ」

 

相変わらず気だるそうに答えながら昼の弁当を開いた。永琳の手作りだ。

ハンバーグに唐揚げ、卵焼きや(野菜→)ポテトサラダ(←野菜)まで入ってる。…勿論野菜もあるよ?

 

「相変わらず隊長のお弁当は豪華ですね。しかも八意様の手作りなんて羨ましいです」

 

「まあな。どうだい一つ」

 

「えっ!いいんですか!?」

 

俺が一つやろうかと聞いた瞬間、嬉しそうに近づいてくる麻矢

 

「ほれ、口開けろ」

 

卵焼きを一つ箸で掴んで麻矢の口元に持っていくと、麻矢は顔を赤くして

 

「い、いえいえ!じ、自分で食べられますか…むぐっ!?」

 

っと身振り手振りをダイナミックにしながら断ってきたが、いちいち面倒臭いと思った俺は半ば無理やり卵焼きを押し込んだ

 

「どうだ?美味いだろ」

 

「……はい」

 

さっきより顔を赤くさせながら頷く麻矢。

そんなに恥ずかしかったか?

 

そんなこんなで昼休憩終了。

 

今日は午後から外回り(都の壁外の見回り警備)がある。

本来外回りは外周警戒員がやるのだが、週に一度は隊長クラスが見回って不測の事態が起きても対処出来る様にしている

 

「んじゃ、行きますかね。準備いいか麻矢」

 

「はい!行きましょう」

 

ーー

 

「…これで、南ゲートから北ゲートまで異常無しっと」

 

「うしっ、じゃあ最後に西ゲート行って終わりだな」

 

「はい。それにしても今日は平和ですよね、不気味なくらい」

 

「…そうだな」

 

南ゲートから、反時計回りに巡回してきたが、まだ1匹も妖怪と遭遇していない。

麻矢の言う様に気味が悪いほど何もなかった。

 

「麻矢、西ゲートまでは警戒を強めて行くぞ」

 

「了解」

 

なんだろう。嫌な予感がする

 

 

 

 

ーー西ゲート

 

「…特に何もありませんね」

 

「だな」

 

唯の思い過ごしだったか。

 

そう思った矢先、俺の鼻に入ってきた独特の鉄くさい臭い

丁度この先。森の方角

 

「麻矢、戦闘準備」

 

「えっ?」

 

「……すぐ近くから血の臭いだ」

 

俺の言葉に直様戦闘態勢に移る麻矢。

 

次の瞬間前方の茂みから何か出てきた。

 

全身血だらけで、体のあちこちには何か鋭利な物で斬りつけられた様な生々しい傷。

息も絶え絶えにゆっくりと此方に近づいてくるそれは、見覚えのある格好をしていた。

 

「嘘っ……人!?」

 

「しかもあの服はウチの軍支給のものだな」

 

「だ……だずげっ…」

 

最早話す事もままならないその兵士は、いい終える前に地に倒れ伏した

 

「だ、大丈夫ですか!?しっかり…」

 

「げほっ!がっ…はぁ、はぁ……よ…妖怪…が…」

 

「麻矢!!」

 

俺は叫ぶと同時に駆け出していた。

麻矢の背後には。今まさに飛びかからんとしている妖怪の姿があったからだ

 

「おらぁっ!!」

 

妖怪の牙が麻矢達に届ききる前に、俺の拳が妖怪を吹き飛ばした

 

「くっ!すみません、隊長」

 

「気にするな。それより兵士は?」

 

「…っ!」

 

俺の質問に首を横に振る麻矢

 

ふと、兵士の方に視線だけ向けると大きな血溜まりの中で息を引き取っていた

 

「…そうか」

 

一言そう返して直ぐに前方の茂みを睨む

 

「グルルルっ!」

 

先程ぶっ飛ばした奴とは違う。

数にして十五、六匹の狼の群れだった。

だが普通の狼とは違い、体毛は白く、瞳は紅、そして何より体長3mはある妖狼だった

 

その真っ白な毛並みは返り血で赤く染まっている

 

「囲まれたか。ざっと見て十匹以上。麻矢、いけるか?」

 

確認のために首だけを動かして麻矢に問う俺に麻矢も頷く。

 

「うしっ、行くぞ!」

 

そう言って俺は妖狼の群れに突っ込んだ。

 

「先手必勝だ!」

 

俺は一瞬で間合いを詰め、妖狼を殴り飛ばした。

何故ここまで科学の発達した世界でレーザー銃等を使わないのかと問われれば、俺には必要ないからだ。

『超人になる程度の能力』により、俺の身体能力は常人を遥かに凌駕している。

 

その威力はご覧の通り。

殴り付けた部位は爆散し、その勢いのまま十数メートル吹き飛ばした

これでも大分加減してる方だ

 

「…8、9、10っと」

 

あっという間に10匹の妖狼を殲滅して麻矢の方を向くと、あっちも丁度終わった様だ

 

「よお、怪我してないか?」

 

「問題ありません。これでも副隊長ですからね!」

 

麻矢の倒した妖狼に視線を落とすと、一匹一匹的確に眉間や急所を撃ち抜かれていた

 

これは麻矢の銃の腕前もそうだが、能力によるものでもある。

 

『相手の体感速度を下げる程度の能力』

 

これは相手が感じている体感速度を操り自分より遅くする。(“この能力は~遅くする”、“これは~遅くする能力だ”)

そうすることで相手は知らず知らずの内に自分の速度に制限をかけてしまい、麻矢の動きについて来れなくなる。

つまり、普段通りの速度が途轍もなく速く感じてしまうと言うことだ。

 

「麻矢、先に本部に戻り今回の事を報告書にまとめ上げて上層部に報告してくれ」

 

「隊長はどうするんですか?」

 

「俺は引き続き警戒して安全が確認できてから戻る」

 

「わかりました。お気をつけて」

 

ーー

 

あの後動哨を続けたがこれと言って目立った事は無し。妖怪もあれ以降見ていない。

 

一つ腑に落ちない点を挙げるなら、普段はもっと活発なはずの妖怪達を、西ゲート付近でしか見かけなかった事。

ただ身を潜めていた訳でもない。それなら俺が気配を感じ取れるからだ。

気配すらしなかったと言うことは、その付近には居なかったと言うこと

 

……何故だ?

 

「どうしたの?食事中に難しい顔して」

 

昼間の事で考え込んでいると、正面に座っている永琳から声がかかった

 

「いや、何でもない」

 

何だか考えるのも面倒臭くなったので、一旦思考をストップさせる

 

「そう?ならいいけど」

 

そう言って永琳は話題を変えた

 

「ねえ、貴方明日から休暇に入るわよね?」

 

「まあな。なんだ?どっか連れてってほしいのか?」

 

「うーん、是非お願いしたいところだけど生憎と仕事なのよね」

 

ありゃ、休暇の予定を聞いてくるもんだからてっきりそう思ったが

大変だな科学者は。

 

「じゃあ何で聞いたんだ?」

 

「貴方に一つお願いがあってね」

 

お願い?永琳にしては珍しいな

 

「私が研究以外で請け負ってる仕事は知ってるわよね?」

 

「ああ、確かどっかの名家で勉学とか教えてるんだっけか?」

 

「綿月家よ。それでお願いって言うのはね?」

 




麻矢の能力については何処かで見たことあると思った人もいるかと思います

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