東方万能録   作:オムライス_

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20話 弱体化

白玉楼を後にして直ぐの事。

俺は偶々入った森で妖怪に襲われた。

なんてことは無い、軽くあしらえる相手だった。

 

 

異変に気付いたのはその妖怪との戦闘中。

 

 

 

いつも通りの力が出ない

 

 

妖怪撃退後、試しに岩を殴ってみた。

 

いつもはこの程度の岩なら全体の一割も出せば粉々にできる

 

 

 

 

「…!」

 

結果的に岩は砕けた。

しかし粉々には程遠く、亀裂が走り割れたという表現があっている

 

 

 

次に脚力。

 

今度は脚に力を入れ、全力で跳躍した。

昔都で計測した時は積乱雲の高さ(約1万m)まで跳んでしまい、雷に打たれた事がある

 

 

 

 

結果は下層の雲にも届かず、推定500m程

 

 

最後に霊力を試したが、元々能力一本で戦っていた俺は霊力が余り高くなく、現在も此れと言って変化は無かった

 

 

 

 

「……やっぱ封印の影響だよなー」

 

 

西行妖に封印術を施した際、一時的に西行妖とリンクしていた俺は大なり小なり封印の影響を受けてしまっていた。

 

その代償が能力の弱体化。

 

超人になる程度の能力は以前とは比べものにならない程劣化してしまった

 

「まいったな……こんな事ならマジで妖忌に弟子入りすりゃよかったか?」

 

此れからは霊力を使った戦い方も習得していかねェと駄目か……

 

 

 

ん?待てよ?今迄は能力に頼り切って全く霊力を強化して無かったけど、修行次第では俺、あのオサレな技とかも出来るんじゃね?

 

やべェ!一時はどうしようかと思ったけど案外そうでも無いぞ…!!

 

「よっしゃ!そうと決まりゃ修業だ修業!!」

 

 

ーーー

 

 

 

 

〜百年後

 

 

霊力の強化・コントロール・応用、

 

併せて劣化してしまった能力の向上。

 

とにかくこの100年メッサ修業した

 

最初は少ないと思っていた霊力も実は体の奥底に眠っていただけで、修業でコントロールを覚えてからはそれを引き出せる様になった。

霊力量に関しても大妖怪クラスとタメ貼れるレベルの霊力を持っていた事には驚いた

 

そこから更に伸ばし念願の某オサレ漫画に出てくる鬼道を若干ではあるが習得した

 

寧ろ此れだけのことをたった100年で習得する辺り、俺もまだまだ落ちぶれちゃいないな!っと自惚れてみたり

 

でも此処まできたらどっかで腕試しでもしたいな。

久々に白玉楼に顔出して妖忌に勝負して貰おうか

 

 

この何気無くボヤいた事は、数時間後叶うことになる

 

 

 

ーーー

 

「うおっ……これ全部向日葵か?」

 

特に目的地も無くのらりくらりと歩いていると、視界が埋まる程の大きな向日葵畑に出た

 

「これは君が育てたのか?」

 

向日葵畑に見惚れていると、後方から気配がしたので尋ねてみた

 

「……あら、気付いていたなんて随分勘の良い人間ね」

 

「ん、まあ気配には敏感なんでね」

 

気配の正体は、緑色の髪に真紅の瞳、赤いチェックのベストにロングスカートが印象的な女性だった。

日中の為か日傘をさしている

 

「ふぅん。それでどうかしら?向日葵畑は」

 

「見事なもんだよ。俺も花に詳しい訳じゃないけど、此処まで大きく立派に咲く向日葵を見たことがないからな」

 

「そう、ありがとう。……ところでアナタ、此処に来るまでに幾つか立て札があったと思うけど、ちゃんと見て入ってきたのよね?」

 

「立て札?いや見てなかったけど、何て書いてあったんだ?」

 

「あらそうなの?なら教えてあげるわ……!!」

 

「!」

 

一気に女性から殺気が溢れ出したのを感じた俺は反射的に身を捻った

 

ブオンッと風切り音が鳴り先程まで俺の心臓があった場所を日傘が通過した

 

「貴方の身を持ってね♪」

 

「随分手厚い持て成しだな、妖怪」

 

俺が初めに感じ取った気配、それは妖力だった

 

 

俺は一旦距離を取る為後方に大きく跳んだ

 

「逃がさないわよ!」

 

女性も日傘を構えながら追って来る

 

「縛道の八!『斥』!!」

 

そのまま振り下ろされた日傘の一撃を、手の甲に出現させた楯状の霊力で弾いた

 

「!……貴方妙な術を使うのね、久しぶりに楽しめそうだわ…!!」

 

「そんな邪悪な笑顔見たの始めてだぞ俺」

 

余程の戦闘好きなのか知らんが紅い瞳が一層紅く輝き、口角が吊り上がっている

 

正直ゾクッと鳥肌が立った

 

「ハアッ!!」

 

「…!」

 

連続で振るわれる日傘を体捌きのみで躱す。

確かに速いが、これ位なら妖忌の剣術の方が遥かに上だ。至極読みやすい

 

 

「この…!」

 

そして再び大振りの突きが来たので前に出ながら躱し、女性の腹部に指先を向け、

 

「破道の一……『衝』!」

 

小さな衝撃波を浴びせて吹き飛ばした

 

だが女性は空中で直ぐ様体制を立て直し着地する

 

「……貴方は私をナメているのかしら?この程度じゃ人間も殺せないわよ?」

 

「元から殺す気はない。それに本気を出してないのはお前も同じだろう」

 

「……殺す気がない?人間風情が言ってくれるじゃない」

 

女性から笑みは消え、纏う妖力も段違いに濃くなる。

 

 

 

次の瞬間、隼斗の足に何かが巻き付いた

 

「!…蔓か!?」

 

足元を見ると地中より飛び出した蔓が足を拘束していた

 

「何処を見てるのかしら?」

 

前方から声が掛かりハッと顔を上げると女性が目前まで迫っており、回し蹴りが側頭部に直撃した

 

「がっ…!」

 

「まだよ」

 

通常なら吹き飛んでもおかしく無い威力だったが足に絡みついた蔓がそれを許さない。

次は拳が鳩尾に入れられた

 

「ごふっ…!」

 

肺の空気が吐き出され一瞬呼吸が止まる。

更に追撃で拳を貰ってしまう

 

ーーーマズい…!このままじゃサンドバックになる…!

とにかくこの拘束を解かねェと…!!

 

「破道の三十三!『蒼火墜』!!」

 

隼斗は掌を足元に向け、爆炎を発生させて地面ごと蔓を吹き飛ばした。

当然至近距離にいた両者も吹き飛ばされる

 

「ゴホッゴホッ…!ったく人の事ボコスカにしやがって…!!」

 

「ケホッ…!……あら?貴方の御指摘通り本気で殺しにいってあげただけよ?」

 

「誰もンな事頼んでねェよ!」

 

そう言って地を蹴って突っ込んだ

 

幾ら相手が女でもやられっぱなしは気に食わねェ…!

 

「真っ直ぐ来る気?また捕まえて袋叩きにしてあげる」

 

「縛道の二十一!『赤煙遁』!!」

 

俺は走りながら掌で地面に触れ、霊力で作り出した煙幕を発生させた

 

「煙幕…!?何処に……!?」

 

「上じゃボケェ!!」

 

「…っ!」

 

煙幕で視界を奪い、俺を見失ったところで回転を加えたかかと落としを上空から放った。

 

何とか反応した女性も日傘で受けたが、上からの強い圧力に思わず片膝を着く

 

「……貴方ホントに人間?術は良いとしてこの身体能力は普通じゃないわよ?」

 

「普通の人間か?って聞かれれば違うな。俺は超人だ」

 

「超人?……まあいいわ。どの道殺すから」

おおっ…!超人についての説明をしなくて済んだのは初めてだ。

 


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