幽香とは半年程一緒に暮らし、その間に畑仕事の手伝い、組手、優雅なティータイム、組手、組手、と言う様にまあ大半は組手に付き合わされた。
まあ俺自身も経験値積むにはいい機会だったし存外嫌では無かったけど。
そんな生活を半年程続けた後、再び旅を再開したわけだ。
幽香からは「貴方なら歓迎するからいつでもいらっしゃい」と言われた。
……友達としてだよな?
そんで現在山の中。
なんでもここは妖怪の山と呼ばれているらしく、強い妖怪がゴロゴロいて、その中でも代表的なのが天狗や鬼と言った種族だ。
勧誘がてら戦えたらいいなーなんて思ってたりする
んー昔はこんなに戦闘好きじゃ無かったんだけどな。幽香のが移ったか?
「そこの人間止まれ!」
「ん?」
突如上空から声が掛かり見上げて見ると、白い羽を生やしたこれまた白い天狗が見下ろしていた
頭には犬の耳が付いている
「この山に何の用だ?」
「天狗か、なら丁度いいや。あんたらの長と話がしたいんだ」
「…天魔様と?」
成る程、天狗達のトップは天魔って言うのか
「悪いけど案内してもらえないか?」
「何を馬鹿な事を……貴様の様な怪しい奴を天魔様に会わせる訳にはいかん」
「なら菓子折りでも持って出直せばいいのか?」
「出直す?馬鹿を言うな。貴様はこの山に侵入した時点で排除されるのだ」
マジで?ちょっと入っただけで?
ってかコイツさっきから馬鹿馬鹿言い過ぎだろ。態度もやたらデカイし、段々腹立ってきたので少し悪態ついてやろ
「排除?少なくともお前には負ける気しないけどな?そんな強そうじゃ無いし」
「な、な、なんだとぉ〜!!」
おいおいこれ位の挑発に乗ンのかよ
どんだけ煽り耐性低いんだコイツ
「良かろう。ならば直ぐにでも消してやる!」
白天狗はそのまま刀を抜くと同時に一気に突っ込んできた
見た目下っ端とはいえ、腐っても天狗。スピードは中々だ
「だが、まだ遅い」
俺は横薙ぎに振るわれた刀を片手で白刃取りのように掴む
「な、何っ!?」
「こんなナマクラじゃ俺は斬れないぞ」
そのまま力を込めて刃を折った
「おのれぇ!貴様覚えていろ!!」
すると白天狗は脇役の様な捨て台詞を吐いて退散していった
「…何だったんだアイツ」
俺はため息を吐きつつ再び山を登り始めた
そして歩き続けること10分後
「アイツです!あの男が侵入者です!!」
さっきの奴が戻ってきた
仲間を沢山引き連れて
「ご苦労、お前は下がっていろ」
「はっ!」
そう言って下がりつつこちらを見てニヤつく白天狗
あーなんかアレだ。ドラマのワンシーンでよく見るイジメっ子がイジメられっ子から予想外の反撃を受けて退散したはいいが、宛も自分が被害者であるかのように親とかに報告した後、親の後ろでニヤついてるクソガキみたいだ。マジぶん殴りたいアイツ。
「貴様か、突然山に侵入し不意打ちで部下を傷つけた不届きものは!」
ほら聞いた?なんか俺不意打ちした事になってるらしいよ?
「いや、確かに突然お邪魔しちゃったのは事実だけど、アンタの部下には不意打ちどころか攻撃すらしてないぜ?」
寧ろ攻撃してきたのはそっちだって言ったらあの白天狗が出てきて、どこで付けてきたか知らんが一丁前に包帯を巻いた腕を見せてきた
あの野郎ォ…
「はぁ…もういいや」
ここに来て二度目のため息を吐き、気だるそうに頭をかく隼斗
「どうせ天魔様とやらが居るのはこの山の頂上だろ?」
「…だったら何だ?」
「押し通る」
刹那、隼斗の姿が消失する
「なっ、消えた!?」
「ぐあっ!?」
戸惑う白天狗の隊長の背後で悲鳴が聞こえたので振り返ると部下が次々と倒れていく
「お、お前達!」
「心配するな、殺してねェ」
「うっ…」
その言葉を耳にした直後、隊長の意識は途絶えた
次に隊長が目を覚ました時は救援が来た後の事で、部下を含め死傷者は一人もいなかったと言う
因みに例の白天狗だけは簀巻きにされて木の天辺に吊るされていたらしい
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「おっ、何かここっぽい」
あの後気配を消しつつ移動し、頂上付近に着いた隼斗は、一際大きな屋敷を見つけた
「さて、とりあえずノックするか」
屋敷の入口と思われる扉に近づき、戸を叩こうとした瞬間
「私に何かようか?」
不意に後ろから声が掛かった
振り返るとそこには他の天狗とは明らかに妖力も格好も違う天狗が立っていた
金色の瞳に腰まで届く黒髪を一つに纏めたポニーテール
手には立派な扇をもっている、モデル体型の女性だ
「アンタが天魔?」
「いかにも。この山の天狗達を束ねておる天魔。名は陽高 彩芽(ひだか あやめ)という」
「そうか、俺は柊 隼斗。少し話したい事があるんだけどいいか?」
「ふむ。まあ、そう言うことなら立ち話も何じゃし中で話そう」
「いいのか?俺一応部外者だぞ?」
「問題なかろう。お主からは敵意を感じんからの。それにこれから害をなそうと言う者が態々戸を叩いて家に入ろうと思わんじゃろ」
「そりゃ、どうも」
流石種族の長だけあって器が広い
あのアホ天狗が部下だってのが信じられないな
ーー
「ーーって訳なんだけど」
「成る程。確かに悪い話では無いな。で、その世界はなんと呼ばれておるのだ?」
「幻想郷だ」
「幻想郷………そこは我々も受け入れて貰えるんじゃな?」
「ああ。歓迎するよ」
「そうか、感謝する。期日はいつになる?」
「まだ完成したわけじゃないからもう少し先かな。まあその辺の報告とかは責任者である八雲 紫が来てくれると思う」
「そうか、では楽しみにしている」
っと、ここで勧誘の話は切り天魔にある事を尋ねてみた
「なあ彩芽、この山に鬼がいるって聞いたんだけど、どこにいるかわかるか?」
「鬼じゃと?そんな事聞いてどうするのじゃ?」
「鬼って言えば喧嘩っ早くて有名だろ?ちょっと戦ってみたくてさ」
「…正気か?」
「俺がここに来た目的は勧誘兼強い奴と戦うことなんでね」
「うーむ、あまり勧めんが…それならこの山の反対側にある渓谷に行くといい。そこが鬼の集落になっておる」
「へえ、流石この山の長なだけあって詳しいな」
「…いや」
「ん?」
「この山を治めておるのは鬼じゃ」
「えっ、そうなの?」
意外だった。俺はてっきり腕っ節の強い鬼を指揮して、天狗が妖怪の山を統括しているのだと思っていたからだ。
「それだけ強いと言うことじゃ、鬼は。」
「…へえ」
俺は自然と笑みを零していた
期待以上の強さを持つ鬼と戦えると思うと楽しみで仕方ない。
全く、いつからこんな好戦的な性格になっちまったんだか
「そろそろ行くよ。情報ありがとな」
早速そこへ向かうため立ち上がり出口に向かう俺に彩芽から声が掛かった
「隼斗」
「ん?」
「出来れば死ぬなよ?私としても友人に死なれては寂しいのでな」
「友人って、俺たちさっき会ったばかりだろ?」
「何を言うか。友になるのに時間など関係無いわ」
お堅いイメージのあった彩芽から意外な言葉が出てきて少し笑みが零れた
「ははっ、確かに」
目指すは鬼の住む渓谷