東方万能録   作:オムライス_

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24話 京へ

勇儀との激闘の後、続けて見た目幼女の鬼、伊吹萃香とも戦った

 

萃香の『密と疎を操る程度の能力』には最初こそ苦戦したものの、霧になったところを結界で囲い捕獲。堪らず元に戻った隙をつき、『縛道の六十一・六杖光牢』で動きを奪い、暫く暴れた後無理だと悟ったのか降参してきた

 

あっさりし過ぎと思うかもしれんが俺だって疲れてたんだもん

 

 

「隼斗ォ〜!飲んでるか〜!!」

 

今俺は鬼たちの大宴会に参加している

戦いに勝った後勇儀・萃香を初めとする鬼たちにエラく気に入られて、そのまま半強制的に宴会の席に座らされた。

 

で、その辺の鬼たちと適当に飲んでたら勇儀が話しかけてきた

 

「ああ、いただいてるよ」

 

「そうかそうか!よし、こっち来いこっち!」

 

やたら上機嫌な勇儀は席に着くと自分の隣を叩きながら俺に隣に来るよう言ってきた

 

「ああ、可哀想に……こりゃ吐くまで飲まされるぞ」

 

「まっ、がんばれ」

 

などと哀れみを込めて肩をポンっと叩いてくる鬼

まあでも俺結構酒に強いから大丈夫だろ

少なくとも酒豪の神奈子よりは飲める

 

「じゃ、行ってくるわ」

 

そう言って立ち上がり自分の杯を持って勇儀の隣に座った

 

「来たね。じゃあとことん飲もう!」

 

「おっ!飲み比べかい?私も混ぜてよ」

 

萃香も加わり、いつの間にか飲み比べに発展したまま、時間は過ぎていった

 

ーー

 

勇儀達と飲み始めて2、3時間経った頃には周りの鬼達は皆酔い潰れて眠っていた。

勇儀と萃香も大分酔いが回っている様で、此方に体を預けてきた

 

「そろそろお開きにするか?」

 

俺はまだ余裕があるが、今にも潰れそうな二人を心配して尋ねてみる

 

「なぁ隼斗〜」

 

すると勇儀は俺の体を支えにしながら此方に向き直った

酒のせいなのか表情がトロンとしてる

 

「なんだ?」

 

「アンタ私の旦那にならないかい?」

 

「…は?」

 

思わず間抜けな声が出た

 

「勇儀、私『達』だろ?一人占めは駄目だよ」

 

「わかった、わかった。私達な」

 

「いやいやちょっと待て!急にどうした!?」

 

勝手に話を進めようとする二人を慌てて止める

 

「どうしたもこうしたもないさ。私達はアンタに惚れた。だから夫婦の契りをだな…」

 

「惚れたって、俺達今日会ったばかりだろ!?さっきまで戦ってたし」

 

「戦ったからこそだよ。私達鬼はね、強い奴に引かれるのさ。特に私と勇儀なんかは今まで自分達より強い男がいなかったから今日の戦いで見事に持っていかれたよ」

 

萃香がそう言ったと同時、勇儀に背後を取られてロックされた。

背中に気色良い感触が二つ

 

「ちょっ、落ちつけお前ら!一旦冷静になれ!!」

 

「心配するな。悪い様にはしない。アンタは唯受け入れればいい」

 

「くっ!!」

 

このままだとヤられると思った俺は拘束を振りほどこうとするが、流石は鬼。体制的に不利なのもあってか中々外れない

 

「さあ隼斗、観念しな」

 

更に萃香が服を脱ぎながら迫ってきた

 

「くっ!こうなったら破道で!!」

 

破道で脱出を図ろうとした瞬間、二人は眠った

 

「…はぁ。全く困った人ね」

 

「ゆ、紫?」

 

いつの間にか背後にスキマが開いていて中から紫が出てきた

 

「えーと、この二人は?」

 

「心配ないわ。意識の境界を弄って眠らせただけだから」

 

「そ、そうか。助かった。で、ここにいるって事は俺に用事か?」

 

「あら、用が無ければ会いに来ちゃいけないの?」

 

「いや、ンな事は無いけどよ」

 

「さっきこの山の天狗の長に会って来たの。そのついでよ」

 

「ついでって……まあいいや。って事は天狗達は幻想郷に?」

 

「既に迎え入れる準備は出来ているわ」

 

「じゃあ出来たのか?幻想郷」

 

「つい先日ね。やっとここまで来たわ」

 

「へぇ、凄いじゃないか!夢の実現まで後一歩だな!!」

 

「ふふっ、当然よ!何て言ったってこの私ですもの」

 

褒められたのが嬉しかったのか表情を緩ませながら自慢気に胸を張る紫

それから夜が明けるまでの間酒を飲み交わし、夜明けと同時に「引き続きお願いね」と言う言葉を残して紫は帰っていった

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「もう行っちゃうのかい?」

 

「別にゆっくりしていってもいいんだよ?」

 

宴会を終えてから3日後(と言っても3日間毎日宴会だったが)、また俺は旅立つ事にした。

勇儀と萃香はああ言ってるがいい加減俺の貞操が危ないため、早々に離脱せねば。

 

「また会いに来るから、そん時はまた飲もうぜ」

 

まあでも実際3日とはいえ楽しかったのは事実だ。鬼は見た目強面が多いし、喧嘩っ早いとこもあるけど、話してみれば気さくな奴が多くて、気兼ねなく接する事が出来る。

 

「やれやれ、その時までちゃんと籍は開けときなよ?」

 

「アホか」

 

ーー

 

さて、鬼と別れて再び旅路へ

次はどこに行こうかなと言いたいところだが、実はもう決めている。

風の噂で聞いたんだが、今京には絶世の美女と噂される姫がいるらしい。

求婚者は後を立たず、位の高い貴族なんかが毎度会いに来るほど。

そんな美女なら一目見てみたいと、興味本位で行き先を決めた訳だ

 

「そしてやって来ました平安京。流石、田舎とは違い現代で言う大都会と言った感じですね!人が多い!」

 

などとリポーター紛いな事をやっていても仕方がないので、一先ず情報収集のため団子屋へ。

決して団子が食べたかったからとかじゃないからな?

 

「へい、みたらし団子お待ち!」

 

やっべ、ここのみたらし団子超美味ぇ。団子はモチモチだしタレもまったりとしてて、えーと…アレだ。

 

うん、美味ぇ。

 

どうせグルメリポートなんて出来ませんよーっと

 

「なあおっちゃん、この都には絶世の美女がいるって聞いて来たんだけど何か知ってるか?」

 

団子を頬張りつつも店主に尋ねた

 

「そりゃあ勿論。何てったって貴族の方々が毎日の様に挙って押し掛ける位ですからねえ」

 

「へえー、名前は何て言うんだ?」

 

「確か、『かぐや』とか言いましたかね?」

 

「かぐや?」

 

その名前に聞き覚えがあった。

今より遥か昔。まだ永琳と暮らしていた時代。

ある日永琳が、連れて来た小さな女の子の名前もかぐやだった

 

「…まっ、唯の同姓同名か」

 

輝夜は永琳と一緒に月に居るはずだ。地球に居るわけがない

 

「ありがとなおっちゃん。お代ここ置いとくよ」

 

「まいどー!」

 

ーーその日の晩俺はかぐや姫が居る屋敷に忍び込んだ

別に何か良からぬ事を仕出かそうなんて事は思ってない

一目かぐや姫の顔を見るだけだ。

因みに俺は鬼道を使い姿を視認できなくしている

 

「さて姫様は何処かなっと」

 

屋敷の廊下を進んで行くと奥に他の部屋とは違う立派な造りの部屋があった

 

「ここか?」

 

ゆっくりと襖を開け、気配を殺して中に入る

中に居たのは、腰よりも長いストレートの黒髪、就寝前だからか、十二単の様なものは来ておらず、寝間着を着ている少女が此方に背中を向けて座っていた

 

顔が見えなかったのでそっと少女の正面まで回り込んで改めて拝見した俺は驚愕した

容姿こそ成長しているが、そこに居たのは数億年前永琳と共に月に移住したはずの蓬莱先 輝夜その人だった

 

「輝夜…?」

 

「えっ?」

 

思わず声が出てしまった。

姿を視認できなくしているとはいえ、声を出せば聞こえてしまう

 

「誰っ!?誰かいるの?」

 

何もない空間から発せられた声に困惑しながら辺りを見渡す輝夜

こうなったら仕方が無い。

俺は術を解いた

 

「久しぶりだな。輝夜」

 

「………誰?」

 

ズコッーー!!!

 

コケた。そりゃあもう盛大にズッコケた

そりゃそうだろ!こちとら数億年ぶりの感動の再会を期待してたのに、俺を見た時の感想が「誰コイツ」だぞ?

 

「…おいおい、そりゃ無いだろ。ほら、隼斗だよ。柊 隼斗。よく遊んでやってたろ?」

 

「隼斗………ええっ!!?」

 

少し考えた後、やっと思い出したのかややオーバー気味に驚く輝夜

 

「えっ、嘘……本当に隼斗?」

 

「だからそうだってば。…久しぶりだな」

 

「…まさか生きていたなんて」

 

「えっ?何、月では俺死んだことになってんの?」

 

「え、ええ。それどころか、身を呈して妖怪の大群から皆を守った英雄として語り継がれているくらいよ?」

 

「マジか」

 

「マジよ」

 

それは些かショックだ。いやまあ薄々気になってはいたよ?月での俺の立ち位置はどうなってんだろう、とか

もしかしたらヒーロー扱いされてんのかなーとか、期待した時期もあったさ。

でも死んだことにするのは酷くね?

……もしかして核爆弾落としたのはそう言う事か?

 

「ってか、輝夜こそ何で地球にいるんだ?」

 

「月でちょっと重罪を犯して地上に落とされたのよ」

 

重罪なのにちょっと、とはこれいかに

 

「重罪って……仮にも姫だろ?何やらかしたんだよ」

 

「不老不死になったの。蓬莱の薬っていうのを飲んでね」

 

 

ーーー蓬莱の薬

飲めば不老不死となり、老いる事はなく例えその身が消失しようとも、魂が残っている限り再び肉体が蘇生される禁薬だそうだ。

 

 

肉体が消失しても戻るって凄くね?

セ○や魔○ブウもビックリだよ

 

 

「しっかしそんな凄い薬どうやって手に入れたんだ?」

 

「あら、薬と聞いて心当たりがない?」

 

「んん?」

 

薬?

 

薬→病院→医者→白衣→研究者→頭がいい

→………!!

 

 

 

 

「まさか…永琳が?」

 

「ふふ、正解よ」

 

そうだ、永琳なら出来る。

 

『あらゆる薬を作る程度の能力』。それが永琳の能力だからだ

 

「でもなんで重罪を犯した罪が地上に来ることになるんだ?」

 

「月では穢れの溜まった地上は地獄の様な環境なのよ。だから地上へ流す事は最も重い形とされているわ」

 

成る程、確かに不死相手に死罪を宣告したところで無意味。ならば生き地獄でって事か

 

「なぁ輝夜、永琳の事なんだが…」

 

俺はふと永琳の事を思い出し恐る恐る尋ねた。

無理やり気絶させてロケットに乗っけたからなぁ……怒ってるだろうなぁ

 

「やっぱりその……怒ってたか?」

 

すると輝夜の顔から笑みは消え、真剣な表情になる

 

「そうね。毎日の様に責めていたわ」

 

やっぱりか。はぁー、次会った時なんて言ったら「自分をね」……えっ?

 

「地上に隼斗を一人残してしまったこと、私がしっかりしていたら、あの時無理やりにでもロケットに乗せていればって」

 

「……永琳」

 

「ホント、立ち直るまで相当苦労したのよ?ずっと元気付けてた私の身にもなって欲しいものだわ」

 

「…すまん。ホントに」

 

「クスッ まっ、それは本人に会った時言うことね。何はともあれ無事で良かったわ、隼斗」

 

「輝夜は最初俺のこと忘れてなかったか?」

 

「………テヘッ☆」

 

 

 

 

 


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