東方万能録   作:オムライス_

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26話 再開

3日前、輝夜からに月の迎えが来ることを知った俺は森の中を駆けていた。

 

輝夜の居た屋敷……

惨殺された兵士の数々を目にした俺は肝を冷やした。

だがその中に輝夜が居ないことがわかり、ホッとしたのも束の間。

恐らく月の兵士であろう死体が幾つかある。

どれも急所を貫かれており傍らには矢が落ちている。

 

「此れを輝夜が?」

 

「うぅ……」

 

呻き声が聞こえ、その方向を見ると屋敷を護っていた兵士の一人が虫の息ながらも生きていた

 

「おい、しっかりしろ!何があったんだ?」

 

「ぐっ……と、突然…空から鉄の船が……ゴホッ……あっという間だった……」

 

大方予想はついてた。

輝夜を護るため、無謀にも月人に挑み、圧倒的な兵力の前に敗れ去ったと……

だが今はそんな事よりも

 

「輝夜は?輝夜姫はどこに行った!?」

 

「…鉄の船から降りてきた……女と一緒に逃げた……ゲホッ……ハァハァ……銀色の髪をした女だ」

 

「!?」

 

ーーー永琳か……!!

 

「おい!どっちだ!?その二人はどっちに逃げた!?」

 

「も、森………へ…………」

 

以降兵士が話す事はなかった

 

「……ありがとよ」

 

俺は直ぐに森へ向かった。

 

 

 

 

暫く進んでいると前方より複数の気配を感じ取った

 

「見つけた…!」

 

足に力を込め、一気に跳躍した俺の目に飛び込んできたのは、30はいるであろう月の兵士を前に身を呈して輝夜を庇おうとする永琳の姿だった

 

「マズい…!」

 

俺は兵士と永琳達の間に割って入る形で着地した。

突然の介入にその場にいる全員が動揺して兵士の指揮官らしき男が何か言っているが全く耳に入ってこない。

 

ーーーこいつ等は許さん

 

身体から言いようの無い怒りが湧き上がり、目の前の敵をぶっ飛ばすため動こうとした瞬間

 

「えっ……」

 

「!」

 

今俺の背後にいるであろう永琳と輝夜。

その2人の存在を再び感じ取った瞬間、不思議と穏やかな気持ちになれた。

俺はゆっくりと振り返り、2人を安心させる言葉を掛ける。

 

振り返った先。

そこには昔と変わらぬ家族がいた

 

「隼斗……!!」

 

永琳が俺の名前を呼ぶ。涙を流しながら。

俺は一言返事をして月の兵士達に向き直った

 

「やってくれたなテメェら……」

 

永琳の肩口の傷。恐らく銃で撃たれたんだろう。

輝夜の着物が泥々に汚れている。必死に逃げ回ったんだろう。

 

ーーーこいつ等のせいで

 

「チッ、誰だか知らんが関係ない!射撃用意!!」

 

号令と共に一斉に向けられる銃。

それから発射されるレーザーは岩盤をも焼き焦がし貫く程の威力がある月の兵器だ

 

「ーー!!」

 

「ー!ーー!?」

 

後ろで永琳達が何か叫んでいる。

恐らく逃げろと言っているんだろう

 

だが今の俺にはそれすら耳に入らない

 

「撃てェ!!」

 

そして照射されるレーザー。しかしそれが俺たちに届く事はなかった

 

 

 

「縛道の八十一 『断空』」

 

俺の目の前に展開された防壁。

その壁が目前に迫る全ての熱線を遮断した

 

「はっ…?」

 

指揮官含め兵士達も目を丸くする

 

「えっ…隼斗…?これは……!?」

 

どうやら永琳達も驚いている様だ

 

「お前ら誰に手ェ出したかわかってんのか…?」

 

「な、何をやっている!もう一度だ…!

撃t…」

 

「破道の三十二 『黄火閃』」

 

隼斗の掌からでた放射状に広がる霊力の波が、兵士を吹き飛ばした

 

「なっ…!?」

 

「破道の五十八『闐嵐』」

 

今度は竜巻が発生し、残りの兵士を呑み込む。呑まれた兵士は業風によりバラバラになり、その場残ったのは指揮官の男のみとなった

 

「ば、バカな……私の隊が全滅…!?」

 

「後はお前だけだ」

 

いつの間にか接近していた隼斗は指揮官の胸倉を掴み上げた。

隼斗自身の体格が大きいせいもあってか指揮官の足が宙に浮く

 

「は、放せ…!何をする気だ…!?」

 

「歯ァ食いしばれ…!!」

 

そして拳を握り込み、思いっきり殴り飛ばした

 

「ちょっ…待っ……げぶぅっ!?」

 

殴られた指揮官は回転しながら大木に頭からめり込んだ後動かなくなった

 

「お仲間とあの世で反省会でもするんだな」

 

「…隼斗」

 

「永琳、こっち来て傷診せてみ。今治療術を…おっと!」

 

言い終わる前に永琳に抱きつかれた

 

「馬鹿っ!今までどこに居たのよ…!!私がどれだけ心配したか…!」

 

「…すまん」

 

「………無事で良かった!!」

 

「…現状じゃこっちのセリフだ。輝夜も」

 

「あっ、やっと出番来た」

 

「はぁ?」

 

「ここに来るまで私ずっとセリフ無かったし。完全に空気だったもの」

 

メタいぞ輝夜

 

「でもありがとう。ホントに来てくれるとは思わなかったわ」

 

「何言ってんだ、都で約束したろ?」

 

 

 

ーーー心配するな輝夜。どんな怖い奴らが襲って来たって俺が必ず守ってやる。約束だ!

 

 

「……ふふ、そうね」

 

 

「しっかし輝夜の怯え顔はレアだったなー。写真撮っときゃよかった」

 

ここで場の空気を和ませるため輝夜をからかってみる

 

「なっ……!?わ、忘れなさい!」

 

普段見せない一面を見られたと知った輝夜は此れまた珍しく顔を赤くしてポカポカと叩いてきた。

一先ず退散退散

 

「毛程も効かぬわー。ホレ、逃げるぞ永琳。お姫様がご立腹だ…!」

 

「あらあら大変ね」

 

「待ちなさーい!!」

 

 

うん。あの頃に戻ったみたいで懐かしい

 

 

それはさて置き2人の今後について考えますか

 

「さて、そろそろ行こうぜ」

 

「行くってどこに?」

 

永琳の質問に俺は一言で答えた

 

「幻想郷だ」

 


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