東方万能録   作:オムライス_

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29話 妹紅 弟子入りする

 

 

妹紅と出会ってから3日が経った

 

「ねえ待ってよ隼斗ー!」

 

「早くしろー」

 

旅の連れが1人増えた。

 

ーー妹紅だ

 

「そんな格好してるから歩きにくいんだよ。山舐めんな」

 

「だってこれしか持ってないんだもん」

 

「…ったく。次の人里でもっと動きやすい服買ってやるよ」

 

「えっ!ホントに!?やった!!」

 

服が買ってやると言った途端嬉しそうに駆け寄ってくる妹紅

 

「何だよまだ元気じゃねーか」

 

溜め息を吐きつつ駆け寄ってくる妹紅を見る。

3日前とは違い、元気を取り戻せた様だ。

元々活発な性格だったのか、何にせよ良かった

 

「人里まであと少しだ。さっさと行くぞ」

 

「うん!」

 

妹紅は俺の隣に並ぶと同じ歩幅で合わせてくる

 

「ぬっ…くっ!…わっ…!」

 

ぬくわ?

 

ただ身長差があり過ぎるし、歩幅も大分違うから初っ端からどんどん合わなくなっていく

 

「無理して合わさなくていいって。体の大きさが違うんだから」

 

大体妹紅の背丈がギリギリ160あるか無いか位だから、俺とは20センチ位違う。

 

「ぐ、ぬぬ…!」

 

それでも無理に合わそうとしてくる妹紅を見て、ふと思ったことを口にする

 

「なあ妹紅」

 

「んー?」

 

「修行しないか?俺が教えてやるから」

 

「…は?」

 

ピタッと妹紅の足が止まる

 

「修行?どうして?」

 

「これから俺と旅を続けるなら今の体力じゃ持たないだろ。幾ら不老不死って言っても、ある程度は戦闘技術もあった方がいい」

 

「まあ確かにそうだけど……隼斗って強いの?体はがっしりしてるけど、武器も持って無いみたいだし」

 

「んん…?」

 

ああ、そういや妹紅には戦う所見せたことなかったな

 

「…いいぜ。ならちょっと見せてやる」

 

そう言うと隼斗は辺りを見渡し、少し離れた所にある大岩を見つける

 

「妹紅、あの岩見えるか?」

 

「岩?ああ、アレね。アレがどうしたの?」

 

「よく見とけ」

 

俺は掌に霊力を集中させて詠唱を始める

 

「ーーー君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ」

 

そして溜め込んだ霊力を解放する為掌を大岩に向ける

 

「破道の三十一 『赤火砲』!!」

 

 

ズッ………ドオォォォォン!!

 

放たれた巨大な火塊は、あっと言う間に大岩を包み、その辺り一帯ごと消し飛ばした

 

「どうだ?中々凄いだろ?」

 

「………」

 

妹紅を見ると唖然として固まっている

 

「な、何今の……」

 

「鬼道って言う霊術の一つだ。今みたいな詠唱…まあ言霊だな。と術名を唱えるのが発動条件で、攻撃する為の破道・防御とか相手を捕縛する為の縛道の二つに分かれてる。ここまで理解したか?」

 

「う、うんまあ……なんとなく…?」

 

「で、鬼道にはそれぞれ番号があって数字が大きい程強力な術が出せるって訳だ。その分消費する霊力も多くなるけどな」

 

まあ応用すれば治癒術とかにも使えるけどこれは高度だからな……

何より俺が苦手だし

 

「……私に出来るの?」

 

「修行次第ではな」

 

どうする?っともう一度聞いて見ると、妹紅は暫く考え

 

「うん。私も強くなりたい」

 

ハッキリとした口調で答えた

 

「決まりだな」

 

「よーし、じゃあ何からやる?」

 

早速やる気なのかやや興奮気味に聞いてくる妹紅を一旦落ち着かせる

 

「慌てんな、どの道その格好じゃ修行なんて出来ないだろ」

 

と言うわけで一先ず人里へ

 

 

 

 

〜人里

 

「いらっしゃいませ〜。何をお探しでしょう?」

 

人里に着き、適当な呉服屋に入ると愛想のいいおばちゃんが出てきた

 

「この子の着物を買いにきたんだけど動きやすいヤツないか?」

 

「そうですか〜、では少々お待ちください」

 

注文を聞いたおばちゃんは店の奥へと入って行き、5分程で出てきた

 

「此方なんて如何でしょう?」

 

おばちゃんは持ってきた着物の幾つかを妹紅に見える様に前に出した

 

「うーん」

 

「じっくり選んでいいぞ」

 

「決めた!」

 

早いな

 

「…袴か」

 

妹紅が選んだのは指貫袴の様な形状の赤い袴だった

 

「ホントにこれでいいのか?」

 

「うん、これがいい」

 

「よし。おばちゃん、此れをくれ」

 

「ありがとうございます。此方で着ていかれますか?」

 

「あっ、でも上に着るヤツが無い」

 

此処で妹紅が、ふと呟く。

確かに袴だけじゃ半裸の変態だ

 

「しゃーねーな。俺ので良ければ替えの服やるよ」

 

そう言って隼斗が巾着から取り出したのは白いYシャツだった

 

「えっ、いいの?」

 

「ああ。まあ嫌なら別のでもいいが、如何せんそんなに金は無いから高いのは無理だぞ?」

 

「ううん、それ…!それがいい!」

 

すると引っ手繰るようにYシャツを抱く妹紅

 

ったく何を必死になってんだか

 

「おばちゃん、悪いんだけど此れの仕立ても頼めるか?袖の丈合わせるだけでいいからさ」

 

「これはまた変わった着物ですね〜。わかりました、ではお嬢さんこちらに」

 

 

ーーー待つこと20分

 

「お待たせ致しました〜」

 

「どう隼斗、似合う?」

 

着替えを終えた妹紅が回りながら訪ねてきた

 

「中々いいんじゃないか?似合ってるぞ」

 

「ホントに!?……へへっ」

 

褒められたのが嬉しかったのテレ顔で小さく笑う妹紅

 

「よし行くぞ」

 

「うん!」

 

「ありがとうございました〜」

 

 

 

店を出た後改めて妹紅の格好を見ると、年相応の物とは言えずどちらかと言うと男らしい雰囲気の出ている服装だった

 

「ホントに俺の服なんかで良かったのか?別に他のもっと可愛いのでも良かったんだぞ?」

 

「だから良いの!可愛いのなんて柄じゃないし、……は、隼斗の服の方がいいし…」

 

最後の方だけ声が小さくなる妹紅。

普通なら「え?最後の方よく聞こえなかったんだけど?」っとなるだろう。

だが俺は能力のお陰で五感が鋭い

 

「一応言っとくが、バッチリ聞こえたからな?」

 

「なっ…///えっ、その…!」

 

妹紅は何やら顔を赤くしながら手を目の前でワタワタしている。

ん?この光景前も見たことある様な?

 

「何だー?可愛いとこあんじゃねーかコイツー」

 

その反応が可愛らしく思い、ワシャワシャと頭を撫でた

 

「わっ…!は、放してよ!恥ずかしいなあ…!」

 

「はは、照れるな照れるな」

 

「だ、だから照れてないってば!」

 

そんな馬鹿をやりながらその日は宿に泊まり、修行は明日から開始する事にした




みんな大好き赤火砲

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