「ぐっ…!むっ…が…あああ!!」
黒い靄に包まれた妹紅からは苦悶の声が上がる
「くそっ!離れろコイツ!!」
必死に引き剥がそうとしても、まるで実態がないかの様に擦り抜けてしまう
「っっっ!こうなったら縛道で…!」
駄目元で縛道を掛けようと構えた瞬間俺は頭部に衝撃を受けて後方に大きく吹き飛ばされた。
ーーーー未だ靄に包まれている妹紅によって
「なっ……妹紅?」
「……」
やがて靄が妹紅の身体に吸い込まれる様に消えていく。
そして目に飛び込んできたものを見て隼斗は驚愕する
ーーー禍々しい邪気を放ち、瞳を赤く光らせる妹紅
「グルルル……!」
まるで獣の様な唸り声を上げながら此方を睨みつけてくる
「おい妹紅!どうしちまったんだ!?俺だ…隼斗だ!わからないのか!?」
「ガアアアッ!!」
必死に呼びかけるも咆哮と同時に襲いかかってくる妹紅
「クソッタレが…!」
炎を纏わせた腕を力任せに振るってくるが、隼斗はそれを最小限の動きで避けつつ再び呼びかける
「やめろ妹紅…!目ェ覚ませ!!」
「ギッ!!」
やはり声は届かず、妹紅は地面に向け拳を打ち付ける。
打ち付けた箇所を中心に爆炎が上がり、隼斗ごと周囲のものを薙ぎ払うつもりだった様だが、コントロールが出来ていないのか妹紅自身も吹き飛ばされていた。
隼斗は一早く察知して後方に跳ぶことで回避する
「グッ…ガ…」
「おい妹紅大丈夫か!?」
身体中に火傷を負いながらも立ち上がろうとする妹紅を一先ず縛道で縛った
「くっ…!縛道の四 『這縄』」
「ガアッ…!?」
霊力で出来た縄で妹紅の手足を拘束した
可笑しい……アイツが術のコントロールをしくじる何て事は無いはずなのに……
それに戦い方だって技もクソも無い唯の力技だ
「……こりゃ、あの靄みたいなのに操られた的な展開か?」
「半分正解よ」
突如俺の疑問に背後から応答があった。
敢えて後ろは見ない。声の主はわかってる
「……いつから見てた?……紫」
「最初からよ。貴方が気付かないなんて珍しいじゃない」
よく言うよ。能力使って気配を完全に遮断してたクセに。
……いやそれよりも
「妹紅がああなった原因を知ってるのか?」
「ええ」
「ならどうして黙って見てた!!」
俺は思わず紫に対して声を荒げた
「貴方それ本気で言ってるの?」
「何っ?」
「あの娘があんな状態になったのは隼斗、貴方の責任じゃなくって?」
「!!」
「理由はどうあれ、貴方は危険を承知であの娘を戦わせた。予想外の事態に対処出来ない様なら初めから貴方が戦えば済んだ話よ。隼斗、私が何を言いたいかわかるわよね?」
「……」
ーーーそうだ。弟子であり実戦経験の少ない妹紅に戦うことを許可したのは師である俺だ。
実際俺は直前にアレに気付いていた。俺なら回避出来たかも知れない。
いや違う。もっと根本的な問題。
妹紅をこの場に連れてきてしまったのは俺だ。
連れてきてしまった以上何が何でも守らなければいけなかったのに、俺は間に合わなかった。
其れなのに紫まで責めてしまった
「……怒鳴ったりして悪かった、紫」
「……それで?」
紫は片目だけ開けて此方を見た
「出来れば……いや。頼む…!アイツを正気に戻す為に力を貸してくれ…!!」
俺は紫に頭を下げた。地面に頭を擦り付けて。所謂土下座だな。
最早意地やプライドなんてどうでもよかった。唯自分の不甲斐なさに怒りを覚えたのは確かだ
「やめて頂戴。貴方のそんな姿見たくないわ」
「でも…!」
「元より協力するつもりだったわよ。そんな事しなくてもね」
クスッと意地悪く笑う紫だが、いつもの様に扇子で顔を隠しておらず、その表情には優しさが込められていた
「……ありがとう」
俺は立ち上がり妹紅の方へ向き直った。
「グッ…ガアアアッ!!」
先程まで妹紅を拘束していた縛道が力任せに引き千切られ、妹紅の手首からは血が滴っている。
「待ってろ妹紅。すぐ元に戻してやるからな」
今回は以上になります