妹紅を紫に預けて早数年、俺は偶然立ち寄った茶屋である噂を耳にした
「九尾の狐?」
「…はい。知らないんですかい?」
「ああ、初めて聞いたよ。教えてくれ」
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茶屋の主人が言うには、以前宮廷には玉藻前と呼ばれる絶世の美女(なんか輝夜の時と被るな)がいたそうだ。
玉藻前は鳥羽とか言う上皇に寵愛されていて、彼女自身も大変な美貌と博識の持ち主であり、国一番の賢女として有名だったらしい。
でもある日玉藻前の正体に感づいた、上皇御付きの陰陽師・安倍泰親が上皇に報告。
それを聞いた上皇の命により安倍泰親含む数人の陰陽師で討伐に向かったところ、既に姿をくらました後だった
〜
「でも九尾って言えばかなり強い力を持った妖怪だろ?陰陽師とはいえ人間に遅れをとるか?」
「まあなんせ安倍泰親殿はあの安倍晴明の子孫ですからねぇ」
「あー、聞いたことあるかも」
まあ会ったことも見たことも無いんだけどね
「相当優秀な術師だとかで、他の町でも名が通ってるくらいですよ」
へぇ、人間が大妖怪をね……
幽香が聞いたら喜びそうだ
「オヤジ、お代ここ置いとくな」
「まいどー」
さて、一回その安倍泰親ってのを一目見てみたいんだけどこの町には居ないんだよなー
「九尾が逃げたっていう山に行ってみるか」
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「はい、迷ったー」
やっぱりな。山に行ってみようって考えた辺りから既にこうなる予感はしてたもん。
可笑しいな…俺ってこんな方向音痴だったけ?山限定の?町では迷ったりしないもんな……段々自分を弁解出来なくなってきた
「ああ、もう日が暮れる…」
既に太陽は半分程沈んでいる。
辺りは徐々に暗くなっt…って前もこんな感じだったじゃん
「ハァ……こんな事ならもっと食糧調達しとくんだった」
そういや近くに川があったな。
こうなりゃ完璧に暗くなる前に魚でも取っ捕まえねーと
〜川
「さーて川に着いたわけだが……」
既に辺りは真っ暗け…
月は登っているが今は雲で隠れてる
ーーー俺は間に合わなかった
っつーか川に行くまでで迷った。こりゃ重症かもな
「ハァ…今夜は実質飯抜きか。ツイてないな」
そう言って立ち去ろうとした時だった
「ん?」
川の畔に何かある
暗くて全体的なシルエットしかわからないが、人よりも大柄だ。
獣でも横たわってんのか?っと思いつつも近寄って行くと、丁度隠れていた月も出てきてその正体がわかった
この時代の日本には珍しい金髪の髪。
頭には狐の様な獣耳。
そして腰辺りから伸びる九本の尾
大柄に見えたのはこの九つに分かれた大きな尻尾のせいだった
「九尾か」
見ると身体中傷だらけで、矢も何本か刺さっている。オマケに破れた着物の下は火傷を負っていた
「やれやれこのままじゃ死んじまうな。ったく仕様がない」
とりあえず見殺しにするのもアレなので鬼道による治療を行おうとした時だった
「その女から離れろ」
冷たく鋭い声
「…誰お前?」
「その妖怪を退治しに来た者だ」
「ああ、じゃあお前が安倍泰親か」
「だったら何だ?」
「別に?」
なんか気に入らないな、コイツ。態度とか雰囲気とか
「お前は人間だな?今消えれば見逃してやる。その妖怪を此方に渡せ」
「…もう良いんじゃねーのか?コイツは十分ボロボロだし、聞いた話じゃ別に悪い事してた訳じゃないんだろ?」
すると泰親は鼻で笑った
「そんな事は関係ない。そいつは妖怪で、妖怪はその存在自体が罪だ。善悪は関係ない」
「…ますます気に入らねーなお前」
コイツには俺が今までやってきたことを全否定されてる気分だ
「決めた」
俺は倒れている九尾の前に立ち塞がった
「…何の真似だ?」
その言葉には殺気が篭っている
「九尾は俺が預かる。お前には殺させねェ」
「…いくら人間と言えど邪魔立てするなら殺すぞ?」
今度は明確な殺気。アイツの言うように俺が唯の人間だったらそれだけで意識を持ってかれるであろう凄まじい圧力だ
「やってみろ糞ガキ」
そういや久しぶりだな。
人間相手に殺意を覚えたのは