殺意……?
可笑しいな……今までこんな感情滅多に出なかった。
僅かではあるがそれが少しムカついた、それも人間相手に湧き上がっている
ーーー何だこの感情は?
「陽術・『炎玉』」
「…!」
不可解な感情に意識を向けている間に相手の攻撃が始まっていた。
手に持った札から印が浮かび上がり火球が打ち出される
「…縛道の三十九 『円閘扇』」
避ければ九尾に当たるので霊力の盾で防いだ
「ほう、面白い術を使う。だが九尾を庇いながら戦えるか?」
「その必要はねェよ」
隼斗は九尾に向き直り、外部からの攻撃を反射する結界、『鏡門』を掛けた
「これで九尾への攻撃は通らない。さあ、やろうか?」
「貴様ッ…!」
とにかく今は切り替えて目の前の敵に集中だ
「陰術・『土槌』」
「破道の五十七 『大地転踊』」
泰親からは巨大な槌が、
隼斗は周囲の岩石を浮かせ飛ばした
「そんなモノでは破れんぞ!」
飛来する複数の岩石は槌に寄って薙ぎ払われ隼斗自身にも振るわれた
「ふんっ!」
隼斗はそれを素手の一撃で叩き割った
「なっ…!?」
「……そんなモノで、何だって?」
手をコキコキと鳴らしながらそう返すと、泰親は眉間に皺を寄せ怪訝な表情を見せた
「貴様…唯の人間じゃないな?」
「ああ、少なくともお前よりは強いぜ?」
「……」
……挑発は効果なしか。思いの外冷静だな
「まあいい。貴様が何者だろうと滅してしまえば同じこと」
「滅する?上等だよ。やってみな」
泰親はフンッと鼻で笑うと、懐から札の束を取り出した
「貴様が大口を叩けるのも此れまでだ」
そして札の束を空中に投げた。宙を舞う札は一枚一枚光を帯びている
「秘術・『屍妖』」
宙に浮かぶ無数の札が一箇所に集結し、一つの形を形成していく
獣の頭部に鬼の身体。背中からは鳥類の翼が生え、尻からは爬虫類の尾が生えた異形の怪物だった
「…随分キモいのが出てきたな」
「コイツは私が今まで滅してきた妖怪を札の中に封じ込めそれを複合させた傀儡だ。その力は二百を優に超える妖怪を合わせたモノ。貴様に勝ち目は無いぞ!」
「たった二百か…」
「何っ…?」
ーーー生温い
一億年前、都を襲撃してきた妖怪達は一体それの何百倍だったか……
「話にならねーぞ。そんな数じゃ」
「ッッ!ならば死ぬがいい!!」
泰親が手で印を結ぶと同時に異形の怪物が牙を剥き出しに爪をギラつかせ、突っ込んできた。
だがその速度はそこらの妖怪では比較にならない程速く、ほぼ一瞬で隼斗の目の前に到達した
「ゴアァァァッ!!」
怪物はそのまま隼斗の体を引き裂くため爪を振り下ろした
ゴパァァンッ
怪物の頭部が吹き飛んだ。
「!」
「……ほらな、話にならねェだろ?」
「……」
だが泰親は特に慌てた様子は無い
「成る程。確かに私は貴様の事を甘く見ていたよ。まさか一撃、しかも拳一つでやられてしまうとはな」
「…の割には随分余裕だな」
「…はて、何のことやら」
背後から殺気
「!」
「ガアッ!!」
今し方頭を潰したはずの怪物が立ち上がり攻撃を仕掛けてきた。
しかも頭が元に戻っている
「…どうなってんだ?」
「ふっ、残念だったな。ソレにどれだけ傷を負わせようと無駄だ」
再生能力でもついてんのか?
だとしたら少し厄介だな。
頭部を失っても再生出来るって事は実質死なないって事になる
「…まっ、やり様によってはそうでもねーか」
「ガアアアッ!!」
爪や牙、尾による連続攻撃を躱していく。
この速度といい、抉れた地面を見る限りじゃパワーも相当あるな。
「……」
だが所詮知能の無い獣だ。同じパワーファイターでも勇儀の方が段違いに強かった
「ハッ!」
腕を霊力で覆い、手刀で怪物の両腕を斬り落とした
「ギャッ…!?」
「縛道の六十一 『六杖光牢』」
更に六杖光牢で動きを奪う
「ギ……!」
「なっ!?」
「…幾ら再生出来るっつっても動けなきゃ意味ねーよな?」
「この…!」
泰親は掌から霊力で編んだワイヤーの様な物で隼斗を拘束した
「ふっ、はははっ!油断したな。下手に動けば身が裂けるぞ!待っていろ、直ぐに傀儡の拘束を解いて……!」
「はぁ……破道の十一 『綴雷電』」
「…はっ?」
バチチッと閃光が走り、ワイヤーを伝ってきた電撃に感電する泰親
「がっ……なん…だと…!?」
その言葉を最後に泰親は意識を失い同時に霊力の供給が切れたのか怪物も消失して唯の札に戻った
「勝負を急ぎすぎだ青二才。修行して出直せ」
気絶した泰親にそう吐き捨てる隼斗だった