東方万能録   作:オムライス_

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37話 八雲の式

 

「さーて、取り敢えず治療しないとな」

 

安倍泰親との戦いを終え、俺は九尾を洞窟まで運んだ。

目的は周囲の安全を確保する為と雨が降ってきたからだ

 

泰親?知らんな。丁度頭冷やせていいじゃねーか

 

「そもそも俺は治癒術が得意じゃねーってのに、なーんか毎度毎度治療してる気がするなぁ。……いい加減極めたほうがいいのか?」

 

でも面倒臭いしなーと愚痴を漏らしていると九尾の意識が戻ったようだ

 

「………ここは…?」

 

「ん、気がついたか。ここは洞窟の中だ」

 

「ハッ!人間…!?……痛っっ!」

 

俺の姿を見るや否や飛び起きて距離を取る九尾だが、傷が痛むのか顔を顰めた

 

「おいおい、治療中なんだから下手に動くなって。折角閉じかけてたのに開いちまうぞ?」

 

「えっ……治療…?」

 

改めて自分の身体を見るとあれだけ酷かった出血も止まり傷も塞がりかけている

 

「………お前が治してくれたのか?」

 

「正確には治し中だ。ほれこっち来い」

 

「あ、ああ」

 

九尾はオズオズしながらも言われた通り目の前に座った

 

「……」

 

「…………お前名前は?」

 

「……えっ?」

 

「名前だ、名前。まさかそのまんま九尾ってんじゃないだろ?」

 

以前(妹紅の時)のようにまた沈黙が続きそうだったので先手を打って自己紹介に入る隼斗

 

「名前は特にない。だが都では玉藻前と呼ばれていた」

 

「そうか。俺は柊 隼斗。一応人間だ」

 

そういや俺って何に分類されるんだろうな。

前までは超人って名乗ってたけどよくよく考えたら変じゃね?って事に最近気づいた

 

「……柊殿、どうして私を助けてくれたんだ?」

 

「そりゃお前、目の前に傷だらけの奴が倒れてたらほっとく訳にもいかんだろ」

 

「だが…!私は……妖怪だ…」

 

最後は消え入りそうな声だった。

 

「……それでもだ」

 

「……えっ?」

 

「俺から言わせりゃ人間も妖怪も大した違いはない。いい奴もいれば悪い奴もいる。そんなもんは助けてからテメーで判断すりゃいい」

 

「…!」

 

「俺はお前を助けて良かったって思ってるぞ?お前程人間に歩み寄ろうとした妖怪は見たことないし、それが間違った事だなんて思わない」

 

コイツは案外紫とウマが合うかもしれないな

 

「まっ、理由としちゃそんなところだ。ほれ、治療終わったぞ」

 

隼斗が翳していた手を下げると、玉藻前の傷は完全に塞がり火傷の痕も消えていた

 

「柊殿、貴方は命の恩人だ。本当にありがとう。……先程の言葉も、胸に響いたよ」

 

玉藻前は深く頭を下げるとニッコリと微笑んでそう言った

 

「おう、気にすんな」

 

「それで……何かお礼をしたいんだが、その…生憎と持ち合わせが無くてな…」

 

ーーーと、何故か恥じらいながらも着物を脱ぎ始めた

 

「…えっ、何やってんの?」

 

「何って、お礼に閨事の準備を…」

 

「待ーて、ウェ〜イト。いきなり早まったことすんな。ったくコレだから最近の若い子はすぐそっち方向に持ってくんだから〜下品ザマス」

 

 

俺が漫画とかに出てくるオバハン風に言うと、下品って言葉に反応したのか顔を赤くして反発してくる玉藻前

 

「なっ…!?わ、私だって簡単に股を開く女じゃないぞ!!惚れた男だけだ!!」

 

 

 

「えっ…?」

 

 

 

「あっ……///!?」

 

ここでまさかのカミングアウトだよ

取り敢えず玉藻前が落ち着くまで待つか。なんかショートしちまってるし

 

 

 

〜玉藻前が落ち着いた頃

 

「ゴホンッ…!じゃあ私は何をしたらいい?」

 

「だからイイってば」

 

「そういう訳にはいかない!それだけの事をしてもらったんだ」

 

尚も食い下がってくる玉藻前に俺はしばらく考えた後ある事を思い出す。

 

ーーーそういや紫の奴以前に式神がどうとか言ってたな

 

「じゃあさ、一回会ってもらいたい奴がいるんだがいいか?」

 

「?……それは一体?」

 

「俺の友達だ」

 

 

 

 

ーーーー

 

雨が上がり、俺と玉藻前は紫の家に向かった。

まあ紫の家が何処にあるかなんて知らないから本人に迎えに来て貰わなきゃいけない。

 

「縛道の七十七 『天挺空羅』」

 

これは霊力を張り巡らせて対象を捕捉し、伝言する事が出来る便利な術だ

 

これにより、伝言から10秒たらずで紫は来てくれた。

大まかな事は天挺空羅を通して伝え、細部は家で話すと言って現在に至る。

 

今俺は茶の間で煎餅を齧り、紫と玉藻前は別室で対談している

 

「暇だな〜、紫の年齢当てゲームでもしようかな」

 

「こら!」

 

ペシッと扇子で頭をはたかれ後ろを向くと、対談を終えた二人が出てきた

 

「よお、話の方はどうなった?」

 

「話し合いは終わったわ。彼女も私の意見に賛成してくれて、後は…」

 

紫の言葉に玉藻前が付け足す

 

「私が八雲殿の式になるかどうかだ」

 

そこで二人が俺を見た

 

「……つまりお互いの実力を図りたいと?」

 

コクッと両者が頷き、俺も立ち上がり外に出た。

二人も黙って付いてくる

 

「じゃあ勝負はお互いのどちらかが負けを認めるまで。流石に危ないと思ったら止めに入るからそのつもりでな」

 

両者距離をとって向かい合い、俺の合図で戦いは始まった

 

流石、二人共大妖怪の中でも上位に位置するだけあって初っ端から激しい攻防が繰り広げられた。

妖力弾の密度、身のこなし、技への応用から見てもその実力が伺える。

玉藻前も此れだけの実力があったら安倍泰親なんかに負けなかったろうに……

 

 

 

 

 

勝負は意外に早く着いた

 

 

 

 

「勝者・八雲 紫」

 

 

妖力弾の打ち合い・肉弾戦においては玉藻前も善戦していたが、紫の能力の発動により全て無効化され勝敗が決まった

 

 

 

この日を境に九尾の玉藻前改め、八雲紫の式・八雲 藍となった

 

 


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