東方万能録   作:オムライス_

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38話 月面戦争

 

「駄目だ。ぜぇーたい駄目」

 

「何でよ!」

 

朝から八雲家ではちょっとした口論が起こっていた。

 

コトの発端としては紫が突然俺に、月の技術を手に入れたいから月に戦争を仕掛ける、協力して欲しい っと言ってきたのが始まりだった

 

月の技術力は数億年前から発達しており、現代ではレーザー兵器から宇宙艇まである。更に防衛軍各隊長を初めとし、月の神・ツクヨミまで居るとなっては妖怪が幾ら束になって掛かっても勝ち目は無い。

俺はそれを見越してさっきから反対してるんだが紫が納得してくれない

 

「だから言ってんだろ?月の技術力は俺達が想像してるよりも強力なんだよ。簡単に勝てる様な相手じゃない」

 

「そんなのやってみないとわからないじゃない!」

 

「ふ、二人共、一旦落ち着いた方が…」

 

その傍で藍がオロオロしている

 

「わかるから言ってんだろうが!!」

 

「……っ!」

 

隼斗が珍しく怒鳴り声を上げると、紫も藍も驚いた顔をして隼斗を見るが、当の紫はまだ納得しない様だ

 

「……そう、ならいいわ。貴方の力は借りないから」

 

「おい、紫!!」

 

呼び止めようと名前を叫ぶが、紫は藍と共にスキマの中に消えてしまった。

去り際に藍が申し訳なさそうにこちらを見ていた

 

「くそ、勝手にしやがれ!どうなっても知らねえぞ……!!」

 

そんな悪態も虚しく響くだけだった

 

 

 

 

 

ーーーー

 

満月の夜、湖の周りには数にして千体近い数の妖怪が集まっていた。

どれも自分の腕に覚えあり、尚且つ戦いに飢えている妖怪ばかりだった

 

「お集まりいただき感謝致します」

 

その中心に立ち演説をしているのは、今回妖怪達を集めた張本人である八雲紫

 

「ーー!ーーーー。ーーー!!」

 

「……」

 

その傍には式である藍も立っている

 

「今宵は満月。私の能力でここ、湖に映った満月を月へと繋げます。さあ、今こそ月に我々の力を知らしめる時です!」

 

妖怪達が雄叫びを上げる。

紫の本来の目的は月の技術力を手に入る事だが、ここに集まった妖怪達が望むのは破壊・侵略などの暴虐行為。

だからこそ紫は今回の戦争のため地獄より呼び寄せたのだった

 

「では参りましょう!」

 

紫が扇子を水面に映った満月に向けて降ると、湖全体が輝き月への道が開かれた。

一斉に雪崩れ込む妖怪達

 

「…さあ行くわよ、藍」

 

「はい、紫様」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

地獄絵図。

そんな言葉でしか言い表せない惨状が此処、月で広がっていた。

 

地に倒れ伏す死体の殆どは五体満足の者が無く、辺りには最早誰のものかわからない手足が散らばっている。

 

 

 

唯、一つだけわかる事があるとすれば…

 

 

 

 

 

ーーーそこに人の死体は一つも無かった

 

「くっ……こんな筈じゃ…!」

 

「紫様……!」

 

その中心で全身ボロボロで膝をつくのは今回の首謀者である八雲紫と藍だった

 

「……所詮は妖怪、大したことありませんね」

 

「ですが油断してはいけません。妖怪は時に我々の予想を超えた行動をとります」

 

その前に立ち塞がる二人の女性

 

 

 

 

防衛軍総帥及び月の使者 リーダーの一人

 

 

ーーー綿月 依姫

 

 

現防衛軍・一番隊 部隊長

 

 

ーーー春雨 麻矢

 

 

 

「貴方の仲間は我々が殲滅しました。これで終わりです」

 

依姫が刀を振り上げる

 

「…藍!!」

 

「ハアッ!!」

 

「!」

 

合図と共に紫は結界で依姫と麻矢、そして藍が妖術で出した炎を閉じ込めた

 

「藍…!今のうちに態勢を……」

 

そう言いかけた瞬間、結界が両断され依姫が紫に斬りかかった

 

「ぐぅ……!」

 

「ギリギリで身を捻って急所を外しましたか……でも同じことです」

 

紫の首筋に刃が突きつけられる

 

「紫様ァ!!……っっ!?」

 

「動くな」

 

助けに向かおうとした藍もいつの間にか背後を取っていた麻矢に捕縛されてしまった

 

「……此処まで…なの………?」

 

「残念ながら、そうなりますね」

 

 

 

依姫が刀を持つ手に力を込めた瞬間だった

 

 

 

 

「縛道の六十一 『六杖光牢』」

 

 

 

突如6つの光の帯が出現し、依姫の身体に刺さった

 

「なっ……依姫様!?」

 

藍を拘束していた麻矢が驚きの声を上げる

 

「これは…身体が動かない……!何者だ!!」

 

依姫は気配を感じ取り眼前にいる人物に叫んだ

 

「頭は冷えたか?紫」

 

「えっ…?」

 

この局面で助けに入ったのは、紫も藍も見覚えがない男だった

 

「(紫、聞こえるか?)」

 

「!」

 

紫の脳内に声が響く

 

「(貴方……隼斗なの?)」

 

「(ああ、訳あって姿を変えちゃいるがな)」

 

 

 

な、なーんと…謎の男の正体は鬼道により姿を変えた柊隼斗本人だった……!!

 

 

 

結局心配になり着いてきたはいいが、よくよく考えると月には顔見知りがいるのでバレたらマズい

→出るに出られず身を潜めたまま傍観

→紫と藍が危なくなったので、姿を変えやむを得なく登場

 

「(って訳だ)」

 

「(そう………ごめんなさい隼斗……私が愚かだったわ……)」

 

「(その話は後だ。今は脱出する事に専念………!!)」

 

ここで鬼道による念話が途切れる

 

「貴様…!依姫様に何をした!!」

 

いつの間にか急接近していた麻矢がナイフと銃を構えていたからだ

 

「っっとぉ!」

 

隼斗はナイフによる斬撃を身を屈めて躱し、次に突きつけられた銃に手を添えて軌道をズラした

 

「縛道の一 『塞』」

 

「!」

 

麻矢の手足を拘束するため縛道を使用するが、瞬時に距離を取った麻矢には届かなかった

 

「縛道の二十一 『赤煙遁』」

 

隼斗を中心に煙幕が発生する

 

「目眩まし…!麻矢、周囲を警戒、不意打ちに気をつけなさい!」

 

「了解!」

 

依姫と麻矢はその場で動かず不意の攻撃に備えて意識を集中した

 

「…」

 

「…」

 

「……」

 

「……」

 

「………?」

 

「………?」

 

攻撃が……来ない?

 

 

 

 

やがて煙が晴れ二人が周囲を見渡すと、妖怪と男の姿は無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




赤火砲と赤煙遁は使い勝手がいい
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