東方万能録   作:オムライス_

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今回は前段地の文が多いです


40話 月の神

 

「ん……どこだここ………」

 

気がつくと俺は冷たい床の上で寝かされていた

 

「くっそ…頭痛て〜。あれ、俺何してたんだっけ?」

 

目を覚ますと同時に偏頭痛の時みたいな痛みが走った。頭痛が痛い。

 

「えーーと……月で…?戦っ……ああ思い出した」

 

そうだそうだ。紫達を逃がす為に依姫と戦ったんだ。

 

「で、アレを使ったんだったな」

 

アレとは、急激なパワーアップの事だ。まあ正確にはパワーアップじゃなくて一時的に元の力を取り戻したって言った方が正しい。

だがその代償として自身の霊力を全て犠牲にする禁じ手みたいなものだからその反動でぶっ倒れちまうし、下手したら死ぬ。

これはまだ紫にも見せたことが無かった最終手段だったんだけどまさか使うことになるとはな

 

「あっ!なんか動きずれーと思ったら手錠掛けられてんじゃねーか」

 

辺りを見渡すが全体的に薄暗くて狭い部屋、オマケに鉄格子がある。

 

誰が見てもわかることだが敢えて言おう

 

「捕まって豚箱にぶち込まれたんですね、わかります」

 

そりゃそうか。敵の本拠地で意識失ったんだもんな。そりゃ捕まるわ。

 

「一番最悪な状態で捕まったな」

 

今俺は霊力の類が一切使えない。

理由は言わずもがなアレを使ったせいだが、普通霊力は暫くすれば自然に元に戻る

 

だが今回俺が消費したのは霊力を溜めておく器そのもの。

例えるなら器がタンク、霊力が水だ

 

タンクさえあれば水は溜まっていくが、何もなければ水は一向に堪らず、タンクを用意しなければならない

 

つまり俺はまずタンクを修復する事から始めなければならず、暫くは霊力が使えないという事になる。まあ怪我と同じで時間が経てば自然に治るんだがもう一つ問題があった

 

「くそ、能力まで封じられてやがる」

 

今俺を拘束しているこの手錠。恐らく月の科学者が作ったもんだろうけど、多分能力封じの細工がしてある。

 

霊力が使えない+能力が使えない

 

=俺、唯の人間と変わらない

 

今ならタンクトップタイガーにも負けちまう

 

「冷静になってみると絶体絶命の大ピンチじゃねーか!!なんとか手錠だけでも外さねーと……!!」

 

必死にガチャガチャやっていると、扉が開く音がして誰か入ってきた

 

や、ヤバい…!執行人か?俺を処刑するための斧マジニとかinしちゃったか!?

 

「やあ、調子はどうだ?」

 

「ぎゃあああああああ!!チェーンソーだけは勘弁しt…………えっ?」

 

部屋に入ってきたのは1人の女性だった

 

 

 

ーーー

 

「落ち着いたか?」

 

「あ、はい…」

 

あの後俺は牢から出され取調室みたいな部屋に連れてこられた。

正面には先程の女性、つまりマンツーマンだ。依然手錠は掛けられたままだが

 

「そう固くならなくていい。もっと楽にしろ」

 

「だって先生、僕昔から授業参観とか苦手d「誰が先生だ!」

 

怒られた(´・ω・`)

 

 

 

「っつーかアンタ誰?」

 

「私か?そう言えばこれが初めての顔合わせになるか。なら仕方ないな」

 

ん?随分意味深な言い方だな

 

「私は月読命。此処、月の都を治めている神の一柱だ」

 

「……」

 

「ん?どうした急に黙って」

 

「……えっ、マジ?」

 

「おう、マジマジ」

 

マジってマジかよー!?

俺さっき先生とかアンタって呼んじゃったよ!?

どうしよう!?……そっか、どうしようもないか。じゃあ諦めよう

 

「……それで?その月読様が見ず知らずの罪人の為に態々出向いてきたのか?」

 

「見ず知らず?何を言ってるんだ?……お前柊 隼斗だろう?」

 

「!?………いや人違いだ」

 

「隠さんでもいい。既に変装は解けている」

 

「あっ……」

 

そうかしまった!霊力がカラって事は当然鬼道の効果を維持できる訳もなく元の姿に…!

 

「…この姿をアイツらは見たか?」

 

「んん?綿月姉妹や春雨麻矢の事か?…心配いらん。お前を回収したのは別の兵士で依姫はあの後気を失った為に見てはいないだろう。春雨の方もな」

 

「やけに詳しいな?」

 

「見ていた。やはり伝説の英雄だけあって強いな。あの依姫を倒すとは」

 

「じゃあ解放してくれよ。どーせ俺の事情も知ってんだろ?」

 

「まあな。だが残念ながらそれは無理だ。今お前は月に襲撃を仕掛けた重罪人という事になっている。個人的には出してやりたいがそれでは下の者達が納得せん」

 

「じゃあ俺どうなんの?」

 

「明日の朝、刑が執行される。勿論死罪だ」

 

あ、詰んだ

 

「はっはっは!そんなこの世の終わりみたいな顔するな」

 

いやするだろ。つーか罪状は仕方ないにしてもいきなり過ぎんだろ…!何だ明日って!せめて霊力が戻るまで待ってくれてもいいじゃん

 

「お前には選択肢がある。一つはこのまま罪を償って刑を受ける。もう一つは今一度防衛軍に戻るかだ」

 

「…何?」

 

「はっきり言って今の防衛軍は軍備こそ強化されているが兵士の方がまだまだでな。古参の連中はともかく、特に新米兵士育成に難儀している」

 

「別に古参だけでいいじゃねーか、あんだけ強けりゃ」

 

「そういう訳にはいかん。それでは防衛軍である意味が無くなってしまう」

 

「でも軍に入るから許してくれってんじゃ、今回の場合通らないだろ」

 

「いいや通る。二億年前、人妖大戦で民を救った英雄・柊 隼斗としてなら十分お釣りがくる」

 

「……俺はもう過去の人間だ。此処には必要ない」

 

「ふむ。余程地上との縁を切るのが嫌と見える」

 

「……あいつらはほっとけない。今の俺が生きる場所はあそこなんだ。悪いがその条件は呑めない」

 

「綿月姉妹や春雨麻矢の事はいいのか?」

 

「……あいつらの中じゃ俺は死んだことになってる。今のままが良いんだ」

 

「だがこのままではお前は明日をもって死刑。更にはその刑を執行するに当たって見届け人に各部隊長並びに綿月姉妹も加わるからどのみちバレるぞ?」

 

「!?」

 

「さぞかしショックを受けるだろうな。かけがえのない恩師とも呼べる男を自分達は…

 

ガシッ!!

 

その言葉に俺は自分の感情が抑えられず気が付いた時には月読の胸倉を掴み上げていた。

手錠がされていなければそのまま殴っていたかもしれない

 

「てめェ……!!」

 

「…何だこの手は?」

 

対する月読は先程のおチャラけた態度が一変し、途轍もない殺気を放っている

 

 

「上等だよ!アイツらにそんな思いさせる位なら今此処でお前に噛み付いて今此処で殺されてやる……!!」

 

その前に頭突きの一発でも叩き込んでやるけどな

 

するとフッと部屋を包んでいた殺気が消え、先程の様な穏やかな顔になる月読

 

「その状態で私の殺気にも耐え、更に覚悟あり…か。本物だな」

 

「…あっ?」

 

「本物の馬鹿だ」

 

「ああんっ?!」

 

コイツっ!馬鹿にしてんのか?

 

ああ、馬鹿にしてんのか…

 

「悪かったな。お前の覚悟を試したかったんだ」

 

「……」

 

えっ?何がどういう事?

 

「とりあえずそろそろ放してくれないか?いい加減爪先立ちは疲れる」

 

そう言や掴み上げたままだった。身長差もあって月読がピン立ちになってる

 

「あっ、悪い」

 

急いで放すと、月読はやれやれと言った感じで身なりを整えある提案をしてきた

 

「ならば先程の選択肢にもう一つ加えよう。だからもう一度考えてみてくれ」

 

「その選択肢ってのは?」

 

「100年だ。防衛軍に戻っては貰えないか?その後はちゃんと地上に帰すし、それ以降は月への出入りを許可するから」

 

「へっ?」

 

「どうだ?これならば正体を明かしたところでまた会えなくなる事もないからアイツらを悲しませる事も無いし地上へも戻れるから良いだろ?」

 

「いや、まあ確かに願ってもない条件だけど……いいのかそんな勝手に決めて」

 

「いいに決まってるだろ。此処のトップは私だぞ?文句を言える奴なんていないさ」

 

「あ、そうっスか」

 

もう何でもいいです

 

「では改めて聞こうか。お前の答えは?」

 

「……わかったよ。それでいこう」

 

「死刑の方で?」

 

「な訳ねーだろ!?100年防衛軍で働く方だよ!!」

 

「はははっ、冗談だ」

 

「ったく。後頼みがあるんだけどいいか?」

 

「んん?私のスリーサイズが聞きたいのか?えーと上から90の……」

 

「マジで!?凄ぇ…って馬鹿ァ!!ちょっと食い付いちまったじゃねーか!」

 

「怒るな怒るな。で、何だ?」

 

「アンタは見てたからわかってると思うけど、近々八雲紫って妖怪が俺を助けるために乗り込んでくるかも知れないんだ。だから何とかして今の事を伝えたいんだけど」

 

「ああ、なら私が直接出向いて伝えてやろう」

 

「軽っ!?いやいや流石にそれは色んな意味でマズいだろ。そんな事しなくてもアイツが月に現れた時に会う許可をくれればおれが直接伝えるよ」

 

「月に入った瞬間迎撃されるかも知れんぞ?なんせこんな事があったばかりだからな」

 

「ま、まあ確かに……」

 

ホントなら天挺空羅で伝えるのが手っ取り早いんだが今使えないしなー

 

「わかった。じゃあ頼むよ」

 

「ああ、任せておけ…っと言いたい所だが私だけでは信憑性に欠けるだろう。その八雲とか言う妖怪宛に手紙を書け。出来ればお前だと一目でわかる内容のものをな」

 

そう言って予め用意していたのか紙とペンを渡してきた月読

 

おっ、おちゃらけてる割には先々の事考えてるんだな〜とは言わない

 

「よし……………なら此れで」

 

「ん?随分早いな……ってこんな内容でいいのか?」

 

手紙に書かれた内容を見て怪訝な顔をする月読

 

「ああ、間違いなくそれで俺だってわかる筈だ」

 

「ん、では確かに。…よし一先ずお前は釈放だ。外にいる看守にこの事を伝えるから手錠を外してもらって防衛軍本部に向かえ。1番大きな建物だ。そこの最上階にいる相手にこの事を伝えろ。話は通しておく」

 

「ああ、わかった。ありがとう月読」

 

「ではよろしく頼むぞ隼斗」

 

互いに握手を交わすと月読は部屋を出て行った。

 

「さて、じゃあ向かいますかね」

 

 

 

 

 

「ーーーでは確かに伝えたぞ」

 

地上に降りた月読は早々に紫を見つけ事情を説明。予想通り全く信用されず警戒されてしまった為、あの手紙を手渡し姿を消した

 

「……」

 

 

 

[若作りしてないで友達作れよ by隼斗]

 

 

 

「………馬鹿っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





実際月読命は男説が有力ですが敢えて女キャラで書かせていただきます
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