東方万能録   作:オムライス_

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42話 防衛軍勤務 ②

 

 

「教官?俺が?」

 

「はい。その様に伺ってますが」

 

次の日、月読に言われ今日は依姫と一緒に仕事をする事になった俺は歩きながら内容を確認していた

 

「先生には兵士たちに戦術指南をしていただきます。私も同じ仕事を請け負っているんですが最近別件で動く事も多くて人手不足だったんです」

 

「ふーん戦術指南………厳しめでいいの?」

 

「はい。ビシバシッお願いします」

 

「了解〜♪」

 

暫く歩いて行くと巨大な建物が見えてきた

 

「ここが訓練場です」

 

「随分デカいな。札◯ドーム以上あるんじゃねーの?」

 

率直な感想を述べながら中に入ると、訓練生と思われる面々が整列して待っていた

 

『おはようございます!!』

 

訓練生達は依姫の姿を確認すると正対し、声を揃えて挨拶をした。依姫もそれに返す

 

「ええ、おはようございます」

 

「おっ、流石月の姫。威厳たっぷりだな」

 

「依姫様、そちらの方は?」

 

訓練生の長と思われる兵士が隼斗に気づき質問してきた

 

「今日からあなた方の戦術指南を担当して頂く方です。先生、自己紹介を」

 

依姫に促され前に出る隼斗

 

「柊 隼斗だ。月読に頼まれて新しくお前達の担当になったからよろしくな」

 

軽く挨拶を済ませ一歩下がると訓練生達は何やらヒソヒソ話している

 

「なんか随分適当な人だな」

 

「しかも月読様を呼び捨てだったぞ?大丈夫なのか?」

 

「やたら態度デカいし、依姫様より強いのかな?」

 

「それは無いだろww」

 

などなど

 

「こ、こら!先生に失礼ですよ…!」

 

慌てて依姫が叱るがザワつきはおさまらない

 

「いいよ依姫。新参者の扱いなんて最初はこんなもんさ」

 

「しかし……」

 

「まあ任せとけ………ッッ!」

 

「!?」

 

シンッ…………

 

隼斗は騒つく兵士達を、大声を出すわけでも無くただその場に立っただけで黙らせた

 

霊力を解放した訳ではない。今隼斗は霊力を使えないからだ

 

「……っ」

 

訓練生は動けない。依姫でさえ冷や汗をかいている

 

 

ーーーそれは殺気だった

 

達人クラスになれば殺気だけで相手を制圧することができる。

圧力を強めれば気絶させる事も可能だ。

隼斗は敢えて加減していた

 

それでも呼吸が上手くとれず過呼吸になる者もいる

 

「はっ…はっ…はっ……」

 

フッ

 

…ここらでイイか

 

「ん、静かになったな。じゃあ早速訓練始めようか」

 

 

 

 

ーーー

 

 

「よし、次の奴!」

 

「はい!お願い致します!」

 

訓練を始めて一年。今は訓練生一人一人に武器を使った実戦訓練を行ってるところだが…

 

「すぐ武器を下げるな。ほれスキあり」

 

「うわっ!?」

 

打ち込みの際構えを乱したスキを突き武器を弾き飛ばした

 

訓練生は全員が新兵と言うわけでは無く、寧ろ其れなりに長く軍にいる兵士の方が多い。

月人の兵士から玉兎と呼ばれる人型兎もいるが、その殆どが実戦経験が少ないらしく、今の様に実戦なら死に直結する様な行為を平気でやってしまう

 

「いつも言ってるだろ、もしこれが実戦だったらを想定して動け」

 

「は、はい!ありがとうございました」

 

礼をして下がっていく兵士。時計を見ると丁度昼に差し掛かるところだった

 

「もうこんな時間か。よし、午前中の訓練は終わりだ!午後の訓練まで各人自由にしていいぞ!」

 

 

 

兵士達は汗を拭いながらその場で休んだり、水を飲んだりしている

 

俺もその場に座り水を一口含む。

手元には兵士たちのデータが纏めてあるタブレット

 

まだ一年とはいえ此れからの課題も多いな

 

 

データと睨めっこしていると入り口の扉が開き、豊姫とサービスワゴンを押した麻矢がやって来た

 

サービスワゴンってのはホテルとかで料理を運んでくる台車みたいなヤツな

 

兵士達は一斉に立ち上がり、挨拶と敬礼を行う。

豊姫は和かに手を振り、麻矢も答礼した

 

「よお、二人揃ってどうしたんだ?」

 

「月読様から先生の調子を見てくるよう言われたの。だから差し入れを持ってきたわよー」

 

「どうぞ隊長」

 

そう言って差し出されたのは、大きなバスケットに入ったサンドイッチと紅茶だった

 

「態々ありがとな。アイツらも喜ぶよ」

 

因みに麻矢が今でも俺を隊長と呼ぶことについて以前、「今はお前が隊長なんだから普通に呼んでくれて構わない」と伝えたところ

 

「いえ、私にとって隊長はいつまで経っても隊長ですから!」

 

ってな具合でそこだけは譲れないそうだ

 

「おーいお前ら!二人から差し入れ貰ったから欲しい奴は取りに来いよー!!」

 

「うおおおおおおお!!」

 

「豊姫様と春雨隊長の差し入れだー!!」

 

一気に群がる訓練生達。

お前ら元気じゃねーかとツッコミを入れておく

 

余談だが豊姫と麻矢は下の奴らに人気がある。別に依姫が嫌われている訳ではないが、基本的に依姫は訓練に手を抜かない真面目な性格な上、やや天然が入っているのか平気で準備運動でフルマラソンを走らせようとする。その為苦手意識を持つ輩もいる。

 

豊姫の場合はその反対で、自由気ままで楽観的な性格をしている。

真面目な依姫をサポートする傍らこうして差し入れを持ってくることもしばしば。

 

麻矢も性格こそ真面目だが気立てが良く基本的に部下にも優しい

 

もう一度断っておくが依姫は嫌われてはいない。性格が真面目すぎるだけだ。

事実彼女の強さはそこからきているものが強く、その風格故に憧れる兵士は多い

 

俺?俺はまあ半々ってとこ。

強さを認めてくれているものもいれば、怖くて近づき難いという奴もいるらしい(麻矢情報)

 

みなまで言うな。俺の評価が一番悪い

 

 

 

「そう言えば先生は依姫と戦ったのよねー?」

 

「ん、まあな」

 

「どうだった?あの娘、強くなってたでしょう?」

 

まるで自分の事のように瞳を輝かせて聞いてくる豊姫

 

「ああ。あそこまで苦戦したのは依姫が初めてだったよ」

 

「隊長が苦戦…!?地上にいた時も苦戦のくの字もなかった隊長が!?」

 

驚き過ぎだろ麻矢よ……と思ったと同時にしまったっ!とも思った。

 

俺はまだ力の大半を失った事を豊姫達に言ってない。余計な心配をかけたくなかったからだが、口が滑った

 

「ま、まあ依姫もそれだけ強くなったって事だ。でもまだ俺のが強いけどな!はははっ…」

 

「へぇーやっぱり凄いですね!隊長も依姫様も…!」

 

麻矢が思いのほか単j……素直な子でよかった

 

すると豊姫がある事を口にする

 

「ねえ、折角だし麻矢ちゃんも先生にお稽古つけて頂いたらどう?」

 

何が折角なのかわからんがあんまりボロが出そうなこと提案するのやめてもらえます?

 

「いえいえそんな!とても隊長には敵いませんよ…!」

 

相変わらずのダイナミックな身振り手振りで遠慮する麻矢。

俺も便乗しとこ

 

「ソウダソウダ!イッテヤレ麻矢ー!」

 

「あら、だからこそのお稽古でしょう?それにそんな後向きな考えじゃ先生には近づけないわよー?」

 

「!………確かに…!!」

 

……orz

 

「隊長……!!」

 

「はい?」

 

グイグイ来た

 

「是非!一手御指南お願いします!!」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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