東方万能録   作:オムライス_

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今回から幻想郷編はじまります


幻想郷 過去篇
45話 幻想郷巡り 人里 ①


 

俺が月から帰ってきて2日が経った。

そろそろ長かった旅を終えて幻想郷に住居を設けようと思う

 

「なあ紫、自分の家を建てたいんだけど使っていい土地とかある?」

 

「何言ってるのよ。此処が貴方の家でしょ?」

 

「グスッお、お母さん……!」

 

「誰がお母さんよ!」

 

涙交じりのボケに紫がツッコミを入れる。

うむ、今日も幻想郷は平和だ

 

「大体家を建てたいなんて急にどうしたのよ?」

 

「別に急にって訳じゃないけど。いいか?マイホームを持つのは男の夢なんだよ。土地選びから始めて、物件探しとか楽しいだろうが」

 

「よくわからないわね」

 

「でも建てるにしたって今すぐじゃ無理だろう?大工にアテはあるのか?」

 

丁度茶を持ってきた藍も話に加わる

 

「いいよ、自分で建てるから」

 

「隼斗が?…驚いたな、過去に家を建てたことあるのか?」

 

「いや全然?」

 

「……やめといたら?休日に犬小屋作ろうと張り切ったは良いけど、最終的に歪な形のナニカを作ってしまった時のお父さんみたいになるわよ?」

 

「失敬だな、此れでもガキの時粘土で作った『僕の動物園』では優秀賞を飾った程だぞ?」

 

「知らないわよ。何よそのほのぼのエピソード」

 

「それよりどうなんだよ。良いのか?それとも宜しいのか?」

 

「どっちも同じじゃない……はぁ、良いわよ。好きにしなさい」

 

「おっ、マジで…!?」

 

「ただし住居が決まったらちゃんと報告するのと、偶には顔出しなさい。いいわね?」

 

「勿論だぜお婆ちゃん」

 

「…あ”?今なんつった?」

 

額に青筋を立てて持っていた日傘の柄を握りつぶす紫。

うーむ、背後に修羅が見える

 

「…まあまあ紫様。ところで何処に住むかは決めているのか?」

 

「いやまだだ。適当に幻想郷をぶらついた後適当な場所見つけて適当に住むつもりだからな」

 

「いや、せめて場所くらいは真面目に探せ」

 

「わーってるよ。で、紫」

 

「……」

 

あっ、そうだった

 

「……麗しの紫お姉さん(棒)」

 

「何かしら?」

 

……何だコイツ

 

「最初に人里行ってから色々回るつもりなんだけどその他の土地には何があるんだ?」

 

此れはちゃんと聞いとかないとな。

また迷ったら洒落にならん

 

すると紫はスキマを開き中から何かを取り出した

 

「はいコレ。今わかってるだけの幻想郷の地図よ」

 

「へぇ、そんなのあるんだな」

 

どれどれ…っと

ほぉ、意外に広い………んん?

 

「なあ、この妖怪の山って…」

 

「ええ。以前貴方が訪れたあの山よ」

 

「そっか、なら一回顔出しに行くかな」

 

「あっ、でも此処から人里までは遠いわね。スキマで送ってあげましょうか?」

 

「いいのか?じゃあ頼む」

 

隼斗は地図をしまい立ち上がると出掛ける支度をする。

と言っても隼斗は基本手ぶらなので上衣を羽織っただけだが

 

「もう行くのか?」

 

「ああ、思い立ったが吉日って言うだろ?」

 

「いってらっしゃい。家が建ったら遊びに行くわ」

 

「おう、茶菓子くらいは出してやるよ。んじゃあお二人さん、世話になったな」

 

一言そう言って紫の開いたスキマを通って人里に向かった

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

「結構賑わってんなー」

 

スキマを抜けると木造平屋建ての家が建ち並び、多くの人間で賑わっている場所に出た。

幻想郷では唯一妖怪の脅威から逃れられる人間の生活の場、其れがここ人間の里だ

 

店もそこそこあり、藍も時々買い出しに来てるらしい

 

「さて、先ずは団子屋だな」

 

紫の家に向かう前にも寄った団子屋。

持ち帰る前に店内でお召し上がりして来たが、中々美味い

 

「団子3本くれ」

 

「はいよー」

 

店の外にある長椅子に腰掛けると、早速団子が運ばれてきた

 

「うん、やっぱ美味いな〜」

 

此処の常連になろうかな。だとしたら人里の近くを候補に入れてもいいか

 

などと考えながら道行く人々を眺めていると、ある女性が目にとまった

 

青色のワンピースの様な服装で頭には学者の様なヘンテコな帽子を被っており、青みがかった銀髪の髪をしている女性

 

八百屋で買い物する為か手には買い物籠の様な物を持っている

 

「おばさん、こんにちわ」

 

「あら慧音ちゃん、いらっしゃい」

 

 

 

「慧音…?」

 

やっぱりか。道理で見覚えがあると思った。

昔と違って少女からすっかり大人の女性へと変わっていた為一瞬わからなかった

 

俺は早々に団子を突っ込むと、代金を払って団子屋を出た。

そのまま慧音のところまで歩いて行き、声をかけた

 

「久しぶりだな。慧音」

 

「えっ?」

 

声をかけると慧音は大根を片手に持ちながら振り向いた

 

「………あっ」

 

俺の顔を見た瞬間小さく声を漏らし、持っていた大根が手からスルリと落ちた

 

「おっと」

 

でも地面に落ちる直前でキャッチしたので品質上問題ありません

 

「ほれ大根落ちたぞ?」

 

「えっ…!?は、隼斗さん!?どうして此処に!!?」

 

大根を手渡すと驚きの声を上げる慧音

 

「どうしてって、俺も最近幻想郷に来てな。幻想郷を見て回る為に先ずは人里に寄ったんだよ。そしたら偶々慧音を見つけてさ」

 

「そうなんですか…?でも、本当にお久しぶりです隼斗さん!」

 

「だな。暫く見ねー間に大きくなっちまって、最初誰かわからなかったぞ?」

 

「そー言う隼斗さんはあまり変わっていませんね?」

 

「俺はこれ以上デカくなる必要ねーからな」

 

「ふふ、そうですね」

 

「買い物か?」

 

「はい、夕飯の材料を買いに。良かったら隼斗さんもどうです?私の家この近くなんですが」

 

「いやなんか悪いしいいよ」

 

「そんな事ありませんよ、それに話したい事もありますし」

 

「そうか?ならお邪魔してもいいか?」

 

「はい!歓迎しますよ」

 

 

「へぇー寺子屋の教師か」

 

「まだまだ新米ですが」

 

「いやいや大したもんだ。凄いじゃないか慧音」

 

慧音の家でご馳走になりながら今慧音は何をしているか聞いたところ、人里にある寺子屋で子供達に勉強を教えているらしい

 

「そう言えば隼斗さん、幻想郷を回ってるって言ってましたが」

 

「ああ。実は自分の家を建てようと思ってな。その下見も兼ねてるんだ」

 

「では人里に?」

 

「いや、候補には入れてるんだけどまだ他を見てないからな」

 

「そうですか…」

 

少し残念そうにする慧音

 

コンコンッ

 

っと、ここで戸を叩く音が聞こえてきた

 

「ん?誰か来たみたいだぞ?」

 

「ああ、アレは多分…」

 

慧音が戸をノックした人物を言おうとした瞬間、戸が開け放たれた音がする

 

「慧音ー約束通り来たぞー」

 

同時に聞こえてきたのは口調が男勝りな女の声。

ーーー気のせいか?どっかで聞いたことある様な?

 

「来たか。居間にいるから上がってきてくれー!」

 

慧音が玄関にいるであろう人物に自分の居場所を叫ぶ。

時に慧音よ…お主そんな中性的な喋り方口調だったかね?地味に驚いたんだけど

 

するとドタドタと足音が近づいてきて居間の襖が開かれた

 

「おっす慧音、玄関に見慣れない履物があったけど誰か来て………る…?」

 

そこまで言って固まった

 

「!?」

 

俺も言葉を失った

 

 

腰まで届く長い髪に大きなリボン。紅の袴には幾つかお札の様な物が貼ってある

 

 

ーーーそして白い髪

 

「……妹紅」

 

「……師匠?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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