東方万能録   作:オムライス_

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人妖大戦は幾つかに分けて投稿していきます


5話 人妖大戦(前編)

「待たせたな、状況は?」

 

「隊長!……アレです」

 

麻矢の指差す方角を見ると、都市から南西方向の大地が黒い影で覆い尽くされていた。

 

「あれ全部妖怪か。レーザー砲の射程まで後どれ位だ!」

 

砲撃手に向け声を飛ばす

 

「約1キロ程です!」

 

「よし、妖怪が射程圏内に入り次第一斉照射だ。絶対に都に入れるな!」

 

「了解!」

 

「アレだけの数……レーザー砲だけで大丈夫でしょうか」

 

「…多分難しいだろうな」

 

「そう…ですか」

 

「麻矢、もし砲撃でも駄目ならお前達はt「撤退はしませんよ」むっ…」

 

「隊長お一人で戦うつもりなんでしょう?そんな無茶はさせられません」

 

「いやしかし…」

 

「私だって防衛軍副官なんです。市民の危機に尻尾巻いて逃げるだなんて事したくありません」

 

「…はぁ、こうなるとお前は頑固だからなぁ」

 

「流石、よくお解りで」

 

「隊長ー!!妖怪、射程圏内に入りました!」

 

「!…では一斉照射を開始する!砲撃班長号令の元、照射用意!!」

 

号令と同時にレーザー砲の砲門にエネルギーが凝縮される。

そして赤く点滅。発射準備完了のサインだ。

 

「撃てェェー!!」

 

砲撃班長の合図で一斉に発射されるレーザー砲。

その威力は凄まじく、妖怪の群れを跡形もなく消し飛ばした

 

 

 

 

 

 

 

「…やはり駄目だったか」

 

だが消し飛ばせたのは全体のほんの一部。

妖怪の数が余りにも多過ぎた

 

「総員撤退ー!!」

 

他部隊から次々と撤退命令が降された。

皆一斉に配置を離れ、ロケットに向け走り始める

 

中にはウチの兵もどさくさに紛れて何人か逃げ出している

 

「仕方ない……総員退避!早急にロケットに乗り込め!!」

 

 

すると待ってましたと言わんばかりに兵は走り出した

 

残ったのは

 

「結局二人になっちゃいましたね」

 

「ああ。本当にいいのか?今なら逃げても誰も文句は言わないぞ?」

 

「逃げませんよ。隊長が戦うなら私も残ります」

 

「…麻矢」

 

「隊長、この際だから言わせていただきますね」

 

「なんだよ、改まって」

 

「…隊長、いえ、柊 隼斗さん。私は貴方の事が以前から好きでした」

 

「…」

 

「返事を返して頂く必要はありません。唯伝えておきたかっただけですので」

 

暫しの沈黙。

前を見れば妖怪の軍勢が200の位置まで迫って来ている

 

「…死ぬなよ、麻矢」

 

「…お互いに、健闘を祈りましょう」

 

そうして二人の戦士は駆け出した。

後ろにいる人々を守る為に。

隣にいる相棒を死なせない為に

 

ーー

 

『緊急事態発生、緊急事態発生。妖怪の襲撃により予定時間を繰り上げて出発致します。繰り返します……』

 

「永琳…」

 

「大丈夫、隼斗を信じましょう」

 

 

 

「おい急げ!早くロケットに乗り込むんだ!」

 

「あれは…防衛軍の兵士!?ちょっと貴方達!」

 

「なんだこんな時に…っ八意様!?」

 

「何故防衛の任務に当たっている貴方達がここにいるの?」

 

「撤退命令が、出たんですよ。レーザー砲の砲撃を持ってしても効果は薄かったので」

 

「っ!そこまでの数なんて…!」

 

「ねえ、隼斗は?」

 

「貴方達隼斗を見てない!?」

 

輝夜の言葉にハッと我に帰り兵士に掴みかかる勢いで尋ねた

 

「隼斗…って柊隊長の事ですか?そう言えば撤退命令が出てから見てないな」

 

「そう言えば春雨副長もいないな。どこ行ったんだろ」

 

「!…まさか」

 

ーー

 

「おおおらァァァ!!」

 

次々と突っ込んで来る妖怪に対して俺は防戦一方だった。

 

 

超人の体を持つ俺が拳を振るえば一気に妖怪の一角が、吹き飛ぶ

 

妖怪を掴んで地面に叩きつければ地鳴りと共にクレーターができる

 

妖怪の猛攻にも耐えることができる強靭な肉体

 

ーーならば何故攻めあぐねているのか?

 

「麻矢ァァ!しっかりしろ!!」

 

「…」

 

麻矢の背中からは夥しい量の血が流れていた

 

当初は優勢に立ち回っていた麻矢だったが圧倒的な数の波に飲まれ、背後から爪で斬りつけられてしまったのだ

 

出血量から見ても傷は決して軽くない。

寧ろ瀕死の状態と言える

 

手当しようにも群がる妖怪が邪魔でそれもままならない

 

「クソが!!てめえ等邪魔だァァ!!!」

 

周囲に纏わり付く妖怪を薙ぎ払うが、後から後から湧いて来る

 

 

ドオォォォン!!

 

 

っとその時都市の方角から爆音。

 

月に向けて第一便のロケットが飛び立った

 

 




前編終了です

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