東方万能録   作:オムライス_

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遂に50話!
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50話 幻想郷巡り 妖怪の山

 

幽香との激闘(組手)を終え、結局その日は幽香の家に泊めてもらった。

今俺が歩いてるのは人里から見て太陽の畑の真反対にある妖怪の山。此処には天狗の長である天魔の彩芽や鬼の勇儀、萃香がいる筈だ

 

「取り敢えず先ずは彩芽のとこに挨拶に行こうかね」

 

向かうは天魔の家がある頂上。

進路を決め再び歩き出そうとした時だった

 

「そこの人間、止まれ」

 

突如凛とした声が聞こえ、視線を上げると上空から犬耳のついた白毛の天狗が見下ろしていた。手にはやや太めの剣と紅葉の描かれた盾を装備している

 

「此処は我ら天狗の縄張りだ。他所者を入れるわけにはいかない」

 

ん?前にもこんな展開あったな。あの時のクソ生意気な天狗とは違うみたいだけど

 

「他所者って……俺一応天魔と友達なんだけどな……」

 

「天魔様と…?嘘を言うな。そんな訳がないだろう」

 

やはりと言うか何と言うか………相変わらず融通が効かないところは変わってない

 

「今すぐ立ち去るならこのまま見逃そう。怪我をしないうちに帰れ」

 

おっ、でもいきなり排除するとか言わない辺りこの天狗は良心的だ

あの時もこう言う感じだったら俺も大人しくしてたのになぁ

 

「じゃあさ、天魔に確認取ってみてくれよ。柊隼斗が来たって言えば通じるから。それまで俺はこれ以上進まないし、必要なら出直すからさ」

 

「柊 隼斗?何処かで聞いたことがあるような……?」

 

俺の名前を聞いた白狼天狗は暫く考え込んだ後目の前に着地した

 

「幾つか確認したい。天魔様の御芳名は?」

 

「陽高 彩芽」

 

「先程柊隼斗と言ったがそれを証明する手立ては?」

 

「さっきも言ったじゃん。彩芽に聞けって」

 

「悪いが素性がハッキリするまでお前から目を離す訳にはいかない。それ以外では?」

 

「じゃあ俺を拘束するなりして天魔のとこまで連行してけば?」

 

「…何?」

 

 

 

ーーー

 

山の頂上に向けて山道を歩く白狼天狗と隼斗。

白狼天狗の手には荒縄が握られており後方を歩く隼斗に伸びている

 

 

「いや、確かに拘束しろとは言ったけども………なんで簀巻き?」

 

簀は足首辺りまでしっかり巻かれているため隼斗に出来る歩法は精々ヒョコヒョコ歩きか両足跳び位しかない。

それを前から引っ張られている為此処に来る迄にも何度かツンのめり顔面ダイブを決めている

 

「人間とはいえ万が一のことがあっては困るからな。暫く我慢して歩け」

 

「いや超歩き辛いんだけど……」

 

結局隼斗の文句も聞き入れてもらえず相変わらずのペンギン歩きで頂上へと向かっていると、頭上から声がかかった

 

「あやや〜そこに居るのは椛と……誰?」

 

見上げると、背中から黒い羽を生やし、頭に山伏風の赤い帽子を被った天狗がいた

 

「……文さん、何か用ですか?今侵入者を連行しているところなんですが」

 

「連行?侵入者は山に入れない掟の筈でしょ?」

 

「この人間、天魔様の友人だと言うんですよ」

 

「はぁ?」

 

文と呼ばれた天狗は、呆れながら隼斗に視線を向けた

 

「……とてもそうは見えないけど」

 

「だから連行という形で天魔様に確認を取りに行くんです」

 

「ちょ、天魔様のトコ連れてく気なの!?」

 

「仕方ないじゃないですか!確かに信憑性は薄いですけど、万が一の事があっては大変でしょう!?」

 

何やら口論が始まった。

 

……会って早々仲悪いなコイツら

 

「なあ、行くならさっさとしてくれよ。いつまでもこんな格好御免だ」

 

「大体文さんは担当区域が違うでしょう!!此処は私の管轄なんですから口出ししないで下さい!!」

 

「アンタこそ!先輩の意見には耳を傾けなさい!!」

 

聞いちゃいねーし

 

「……しゃーねー、先行こっと」

 

ギャーギャー騒がしい二人を置いて一人頂上を目指す隼斗

 

 

 

 

 

「……でな?俺そっちのけで喧嘩しだしちまってよ、一人で来ちまった」

 

「な、成る程……それはすまんかったな、隼斗」

 

あの後特に他の天狗と出くわすこともなく彩芽のいる頂上に到着。

彩芽は最初簀巻きのまま現れた隼斗をみて持っていた湯呑みを落とした

 

「兎に角その拘束を解こう。こっちに来てくれ」

 

「ああ、大丈夫大丈夫……よっと」

 

隼斗は軽く力を入れて簀を強引に解いた

 

「な、なんじゃ……自力で解けたのか」

 

「まあな。一応信用してもらう為に縛られてたけどその必要も無くなったし」

 

「お主意外と律儀なんじゃな」

 

「失敬だな。俺はいつでも誠実な好青年だぞ?」

 

どこがよ!っと天の声が聞こえた様な気がしたが気のせいだろう

 

「まあ上がってくれ、茶でも出そう」

 

彩芽に促され後に続こうとした時だった

 

「待てェェ!侵入者ァァ!!」

 

叫びながら此方に猛スピードで向かってきたのは先程まで喧嘩していた白狼天狗と黒天狗だった

 

「なんだやっと来たのか。勝敗はついたか?」

 

「はぁ…はぁ……そんな事より何故勝手に動いた!しかも拘束まで……!!」

 

「全く、椛が噛み付いてくるから面倒な事になったじゃない!」

 

若干息を切らしてる白狼天狗に対して、余裕の表情の黒天狗

 

「一応声掛けたろ、先行くぞって」

 

「えぇい!やはり人間は信用できない!直ぐに追い出して…!!」

 

「やめんか二人共」

 

ここで彩芽が止めに入った

 

「て、天魔様…!?」

 

「犬走、それに射命丸。この人間は私の友人じゃ。無礼は許さんぞ」

 

「!?」

 

「えっ…!ホントだったの!?」

 

彩芽から直接友人である事を明言された二人の天狗は目を丸くして驚いた

 

「まあまあ、誤解は解けたしいいんじゃねーの?いきなり来た俺も悪いしさ」

 

「むぅ…お主がそう言うならば」

 

 

 

「じゃあ仲直りしようぜ。俺は柊 隼斗ってんだ。お前たちは?」

 

「あや〜何だか申し訳ないですね……ゴホンッ 鴉天狗の射命丸 文です。先程は失礼しました、よろしくお願いします」

 

射命丸 文と名乗った天狗は初めの頃と打って変わって礼儀正しくなった。

隣の白狼天狗の方も何だか申し訳なさそうに犬耳が垂れている

 

「……犬走 椛です。先程はとんだご無礼を……申し訳ありませんでした」

 

「ああ気にすんな気にすんな。さっきも言ったけど突然お邪魔した俺も悪かったんだ。寧ろ任務を全うしようとした犬走に非はねーって」

 

頭を下げて謝罪する犬走に対して隼斗がフォローを入れた

 

それにしても犬走は真面目だな。射命丸くらい軽くてもいいのに。

依姫タイプだなこの娘。射命丸は豊姫タイプか?

 

「和解は済んだようじゃな。ならばお茶にしよう」

 

ーーー

 

彩芽の家に上がらせてもらい俺の持ってきた差し入れの饅頭をツマむ面々。

何故か文と椛も一緒だ(苗字だと長いので下の名前を呼ぶことにした)

 

 

「えっ!あの鬼と戦った事あるんですか!?」

 

「ああ。流石に強かったよ」

 

「人間が鬼を…!これはネタに使える!隼斗さん、是非!詳しくお話を聞かせてください!」

 

「別にいいけど……何か記者みたいだな」

 

「文さんは主に報道が担当ですからね。一度喰いつくとしつこいですよ」

 

……それから小一時間は質問攻めだった

 

「ではこれで終わりです。ありがとうございました!」

 

「はぁーこんな喋ったの久々だ」

 

流石に喉が渇いたので茶を啜りながら彩芽にある事を訪ねた

 

「そういやさ、勇儀達は元気にしてんのか?さっきから気配を感じなくてよ」

 

文と質疑応答している時にチョロっと山の気配を探ってみたが、勇儀達の気配を感じ取れなかった

 

「……鬼はおらん。山から出て行ってしまった」

 

「!?……何で?」

 

彩芽は一拍置いて話し始める

 

「鬼が勝負事が好きなのは知っているな?数百年前より鬼達は人里から人間を攫っては勝負を仕掛けておったのじゃ。初めは成すすべが無かった人間もやがて対抗勢力が出来上がり始め、あらゆる手段を使って鬼を退治しだした。その多くが鬼達の嫌う卑劣なものだったと言う」

 

「…それで山を?」

 

「ああ。今となってはどこにいる事やら」

 

正々堂々を好む鬼にとって人間のとった手段が許せなかったのか……

でも鬼と人間の力量差を考えれば偏に人間が悪いとは言えないか

 

「そうか……そりゃ残念だなー」

 

隼斗は茶を啜りながら、あの日鬼達と飲んだ酒の味を思い出していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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