俺が幻想郷に家を構えてから凡そ300年。
外の世界では既に明治時代に入り、人間の文明も発展していっている。
だがそれと同時に妖怪と言う存在、更には霊術や妖術と言った非科学的なものは迷信とされ、徐々に世の中から消えていっている
そろそろ『幻と実体の境界』効果も追いつかなくなり始めてるし、新たに手を打たないといけない
そんなある日の事。俺がいつもの様に朝起きて、顔を洗い、適当に作った朝食を食べようと席に着いた瞬間だった。
唐突に浮遊感に襲われ、次の瞬間には外の景色へと変わり、椅子に座り損ねた俺は手に持っていた味噌汁入りの椀を頭から被っていた。
何を言っているのか(ry
まー要するに突如開いたスキマに落とされて、外に放り出されたわけだ
「はあーい、隼斗。ご機嫌いか……が?」
すると後ろからスキマを開いた張本人である紫が陽気な感じで挨拶してきた
「……」
「あは、あははは……大丈夫?お、お食事中だったかしら?」
俺は無言で立ち上がり顔や頭に着いた味噌汁を拭いながら踵を返した
「待って待ってぇ!!ごめんなさい!謝るからせめて何か言って!?無言で立ち去ろうとしないでー!?」
「放 セ 潰 ス ゾ」
「ひいぃっ!?」
・
・
・
「ったく!朝っぱらから何しやがんだオメーは」
「ほ、本当にごめんなさい。悪気は無かったのよ?」
割とガチ謝りしてくる紫をこれ以上怒る気にはなれず、一先ず本来の目的を聞く事にした
「……で?何の用だよ」
「そうそう、外の世界で起こってる問題を解決する方法を思いついたのよ」
「マジで?どんな方法だよ」
「それにあたっては中で改めて話すわ。貴方に紹介したい娘もいるし」
「中?」
そう言えば此処はどの辺なのか聞いてなかった。
辺りを見渡すと前方には森、振り返れば簡素な造りの神社が建っていた
「此処は幻想郷の東の端にある場所。名は博麗神社よ」
神社って……いつの間に建てたのやら
「で、会わせたい娘ってのは?」
「中にいると思うから行きましょう」
神社に向かって歩き出す紫に俺も続く。
向かいに見える森、よく見りゃ俺の家がある森じゃん。
地名としては魔法の森なんて呼ばれてる。幻想郷で森と言ったらこの場所だが、何故か森内部は瘴気の様なものが充満していて、人間の体には毒なんだと。
俺は能力の恩恵で平気だったから、紫に改めて言われるまで気づかなかった
話が逸れたが、自宅からそう離れていない場所に神社が建っていたなんて気が付かなかったな
鳥居を潜り、神社内部に入ると、一人の少女が境内を箒で掃いていた。
見た目12.3歳の少女は此処の巫女だろう。紅白の巫女服を着ている
「あれ、紫さんお早うございます。それと……そちらの方は?」
此方の存在に気付いた巫女が挨拶をしてきた
「隼斗、この娘は博麗 鏡花。貴方に合わせたかった人よ。鏡花、挨拶しなさい」
鏡花と呼ばれた少女は此方に駆け寄り深々とお辞儀をした後自己紹介を始めた
「初めまして、博麗 鏡花です。この神社の巫女をやらせて頂いてます」
「俺は柊 隼斗、コレの友人だ。よろしくな鏡花」
「ちょっとコレって何よ!」
「味噌汁」
「ぐぬぬっ……!」
悔しがってる紫は置いといて、鏡花と握手を交わし、いよいよ本題に入る
「コホンッ。さて、自己紹介も終わった所で本題に入るわね?隼斗、貴方にはこの娘に霊力の扱い方を教えて貰いたいのよ」
「はあ?いきなり何言ってんだよ」
「まあ聞きなさいな。これからの幻想郷を変えていく為に必要な事なのよ」
「必要な事?」
「貴方も知っての通り、外の世界では妖怪と言った所謂非科学的な事情は姿を消し始めている。何れは此処にも影響が出てくるわ。だから新たな手段として幻想郷に大規模な結界を張ろうと思うの」
結界……って事は外とこっちを遮断しちまうって事か?随分思い切った事を考えたな
「でも結界を張った位で解決するもんなのか?」
「勿論唯の結界じゃないわ。此処と外の世界の常識を分ける結界よ」
常識を分ける……ってどゆこと?
流石にピンと来ない
「えーと、つまり?」
「外の常識を此方の非常識に、此方の常識を外では非常識に置き換える事よ。そうする事で外の世界で存在の消えた妖怪や物が幻想郷に辿り着くと言うわけ」
まだ頭の中を???が駆け巡ってる俺は独自の解釈を口にしてみた
「要は『幻と実体の境界』の強化版って事?」
「……ちょっと違うけど、まあそんな感じよ」
「それで俺が鏡花に霊力の扱いを教える理由は?」
別に教える事自体は全然構わない。問題はその目的だ。紫の口振りからして単に護身の為だけではなさそうだからな
「結界を張るなら、それを管理する役職が必要になってくるわ。私は幻想郷の賢者としてその事だけに構っていられない。だからその管理者として『博麗の巫女』と、この『博麗神社』を造ったわけ」
「でもそれを人間である鏡花にやらせるってのは些か荷が重くないか?」
「前提として巫女は人間でなければ務まらない。それに彼女は私が選んだ才能を秘めた人間よ。それだけでも『唯の人間』じゃないわ」
「……鏡花、お前はどう思ってる?」
「は、はい?」
ここで先程から紫との会話を黙って聞いていた鏡花に尋ねた
「もし紫が無理を言っていて、お前が本当はやりたくないのであれば俺が紫を説得してやる。ハッキリ言って危険も伴うだろうからな」
だが鏡花から返ってきた言葉は意外なものだった
「心配して下さってありがとうございます。でも私は自分が巫女に選ばれた事が嫌だなんて思っていません。寧ろ私でもお役に立てるなら喜んでお力になる所存です」
鏡花のあまりに献身的な姿勢に違和感を感じ、紫に耳打ちして尋ねた
「……紫」
「……なぁに?」
「お前と会う前の鏡花がどうしていたか知ってるか?」
「……孤児よ」
「……」
ーーーやっぱりか
これが決め手となった
「はぁ…わかった、引き受けよう」
「ありがとう隼斗。貴方ならそう言ってくれると信じてたわ」
「調子いい事言いやがって全く……」
紫の和かスマイルを尻目に鏡花に向き直る隼斗
「やるからには生半可な事はしねーぞ?いいな?」
「はい!お願い致します!!」