東方万能録

54話 VS 龍神 目覚めた狂気

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依姫と戦闘時にも使った解放状態。

自身の霊力を貯める器を犠牲に全盛期の力を取り戻す禁じ手。

制限時間があり、発動中は霊力の類が一切使えない為、霊力で形成していた足場は消失。

だがそんなもの空中を蹴って進めば大した問題はない

「！」

龍神まで一瞬で詰め寄り拳で下から突き上げるが、龍神はいとも容易く受け止めた

「……ふふ、惜しかったな」

「余裕こいてんじゃねェよ」

受け止められた拳に更に力を込め、振り抜く事で龍神を大きく吹き飛ばす。

龍神は直ぐに体勢を戻したが追撃として放たれた拳の衝撃波が既に目前まで迫っていた

「これも惜しい」

軽く指を鳴らすと同時に龍神の目の前に風の防壁が展開され衝撃波は飛散した

「そら、お返しだ」

龍神が目の前の空間を手で払う様な動作をすると、何もない空間から竜巻が発生。

隼斗に向けて真っ直ぐ放たれた

「ふっ！」

迫る竜巻に対して身体を大きく捻っての回し蹴りを行い空間の破裂する音と共に竜巻が掻き消された

「出鱈目な力だな」

「お前が言うな」

両者笑い合い、次の攻撃に移る。

龍神は指を曲げ爪を立てるように構えると、指先から風を纏った巨大な4本の鉤爪を形成。それを横薙ぎに振るうが隼斗は空中で身を捻り爪の間を潜って躱すと、そのまま突進して龍神の首筋を貫手で狙った

「……正直驚いてるよ。ある程度力を持った妖怪ならいざ知らず、人間であるお前が私に傷を付けるとは」

「俺もこの状態で血を流したのは2度目だ」

龍神の首筋には貫手を躱した際の擦り傷、同様に隼斗も鉤爪を躱しきれず脇腹を掠めていた

「それと間合いを詰めてきた相手に対して油断し過ぎだ馬鹿」

「なんっ……がっ！？」

隼斗の繰り出した『発勁』により吐血しながら吹き飛ぶ龍神

「……痛み分けだな」

「！？」

龍神が隼斗のいた場所から『離れた』瞬間、それまで不可視にしていたのか突如白光の球体が複数現れ、隼斗を包み込むように大爆発を起こした

直様爆発範囲から逃れる隼斗だが、追尾してきた龍神に足を掴まれる

「ビリビリっとな♪」

バチチチチチッ！！

凄まじい閃光が迸り、零距離で雷撃を食らう隼斗

「ぐっ…！」

「……これも耐えるか」

再び距離を離した龍神がそう呟く

ーーーマズいな、コイツ予想以上に強い…

この状態もそう長く続かない。一気に畳み掛けねェと……！！

「ッッ！」

「なっ！？」

未だ雷撃を受けた身体から煙を上げながらも、急速に間合いを詰めてきた隼斗に一瞬驚いた龍神が僅かに体を強張らせた

「おおおおォォォ！！」

顳顬・顎・首・肩・心臓・鳩尾・脇腹……

急所や神経の集中している部分に連撃を叩き込んでいく

「がっ…ぁあ！？」

ーーー何でもいい。兎に角コイツを止めねェと……！！

そして龍神が衝撃で後方に仰け反ったのを見計らい拳を固める隼斗

「これで終わりだ…！」

空気が弾け、音速を超えた速度で打ち出された拳が、『文字通り』龍神に突き刺さった。

力無く崩れる龍神に最早宙に浮かぶ力も残されていなかった

「…悪く思うな」

「ああ、気にするな」

「！？」

声は背後から聞こえた

「しっかし容赦が無いなお前は。一応私も女だぞ？」

其処には何事も無かったかのように龍神が浮いていた。

未だ隼斗の手元には腹を貫かれた龍神『だったもの』がいる

「どういう事だ……これは！」

「なんだ、珍しく動揺するじゃないか。……分身だよ。驚く程のものでも無いだろう？」

やれやれと言った感じで種明かしをする龍神。

珍しく動揺していると言った指摘も的を射ていた

普段の隼斗なら相手が分身か否か、更には戦いの最中に入れ替わる瞬間を見逃しはしないだろう。

だが今回は相手の力量が『解放状態』の隼斗と互角に渡り合う強敵であり、尚且つ時間が迫っている。

更には相手の能力も未知数。

こうした幾つもの要因が隼斗に焦りを生じさていた

「私の力はあらゆる現象を起こす事が出来る。光を爆発物に変えたり身体能力を向上させてお前と打ち合う事も容易い」

ガシッと腕を何かに掴まれた。

視線を腕に向けると今し方倒した龍神の分身がニタリと笑いながら腕にしがみ付いていた

「……勿論、分身を爆弾にすることも出来る」

「！！」

分身は白光に包まれ爆発した

「クソっ…！」

片腕を焼かれながらも何とか爆炎から抜け出し、龍神に向かっていく

「……残念だよ」

「！？」

しまっーーー

『時間切れ』

身体から力が抜け、反動からか激しい頭痛が襲い意識が薄れる。

龍神まで後一歩届かず、逆に頭を鷲掴みにされた

「てめェ…！」

「頭が高いぞ人間」

そのまま急降下し、隼斗は地上に叩きつけられた

「がふっ…！？」

凄まじい衝撃が身体全体を襲い、口からは血反吐が溢れ出た。

既に龍神の手を退かそうとしている腕にも力が入らない

「どうやらこれ迄だな。まあ、この龍神相手にあそこ迄戦えたんだ。あの世で自慢出来るぞ、良かったな」

トドメと言わんばかりに隼斗を持ち上げ、貫手をつくる龍神

「さようなら、柊 隼斗」

……畜生

ドクンッ

「！？」

ーーーこの瞬間、隼斗から発する力の質に変化が現れた

「……」

「これは……妖力…」

人間である筈の隼斗から感じる妖力。

それは並大抵の妖怪では出すことの出来ない禍々しい妖気を孕んでいた

やがて隼斗の体から黒い邪気が溢れ始め、龍神の腕を掴んでいた手に桁違いの力が加わる

メキメキッ

「ぐっ…！」

「……」

思わず掴んでいた手を離し後方へ下がった龍神は驚愕した

「貴様…！」

隼斗の身体からはハッキリ視認できる程の邪気が溢れ、瞳からは生気が感じられず瞳孔が無くなっていた

「……」

意識があるかさえも定かではない状態で確かにそこに立ち、龍神と対峙している

「漸く出てきたな……『西行妖』！！」

………To Be Continued