東方万能録   作:オムライス_

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次回の投稿は主の都合により未定です。
4月中旬までには投稿致しますので引き続き応援よろしくお願いします


60話 博麗を継ぐ者

 

〜博麗神社〜

 

「はぁ〜最近異変って言う異変も起きないわね〜」

 

境内にある本殿の縁に腰掛け空を見上げる一人の女性

 

「昔はもっと刺激があったのに……ねぇ霊夢?」

 

「いや、私に振られても…」

 

その傍でお茶を啜る十歳位の霊夢と呼ばれた少女

 

「それに異変が無いって事はそれだけ平和になってきたって事でしょ?じゃあいいじゃない」

 

「そうは言ってもやっぱり暇な日がこうも続くと身体が鈍っちゃうわ」

 

「……変なの」

 

と、ここで本殿の外から声が掛かった

 

「暁美〜霊夢〜邪魔するぞー」

 

「あっ、隼斗お兄ちゃんの声だ」

 

「……ナイスタイミングね!」

 

そう言って縁から腰を上げたのは、現博麗の巫女である『博麗 暁美』

その様子を「……またか」と呟く少女、『博麗 霊夢』は同時に溜息を吐いた

 

「おっ、いたいた。よお、久しぶりだな」

 

「おはよう隼斗。大体半月ぶりじゃない?何してたのよ」

 

「まあ、色々とな。霊夢もちょっと見ない間に背伸びたか?」

 

「うーん……多分。隼斗お兄ちゃん、今日はどうしたの?」

 

「特に用があったわけじゃねーけど。偶々近くまで来てたから様子見がてら寄ったんだ」

 

それを聞いた暁美が含み笑いをした

 

「って事は暇なのね?」

 

「まあな。……急にどうした?」

 

「じゃあ久々に組手に付き合ってくれない?最近身体が鈍ってきちゃって困ってたのよ。どう?」

 

口では一応提案と言う形で言ってはいるが、身体の方は既に闘気を漲らせている

 

「来て早々組手に誘われるって珍しいパターンだな」

 

「良いじゃない。偶には弟子の修行に付き合うのも師の勤めよ?」

 

「弟子ならもうちょい敬意を払いなさい。……まっ、偶にはいいか」

 

「流石♪じゃあ、庭に出ましょうか」

 

「今からやんの!?」

 

 

 

ーーー

 

「なあ、境内で戦ったりしてバチ当たっても知らねーぞ?」

 

「戦うだなんて大袈裟ね。唯の組手じゃない」

 

「よく言うよ」

 

暁美はああ言ってるが、別に大袈裟なんかじゃない。アイツにとっての唯の組手は普通の人間が見れば戦そのものに見えるだろうからな

 

 

 

 

ーーー『博麗 暁美』

 

七代目・博麗の巫女にして、その実力は歴代最強。

巫女の修行は代々、俺もしくは先代の巫女が教えてきた。個人差はあれど皆博麗の巫女として相応しい実力を付けていったが、暁美だけは群を抜いていた。

特筆すべきは、己の肉体を駆使した体術だ

 

これは俺の戦闘スタイルを取り入れたらしく、内臓破壊と称して『発勁』すら習得してみせた。元々持っていた霊力も高く、霊術や肉体強化はお手の物

 

今やこの幻想郷で暁美と戦えるのは、ほんの一握りだと言われてるくらいだ

 

「張り切りすぎて神社壊すなよ?」

 

「だから考え過ぎだってば」

 

……いや、割とマジで言ってんだけど

 

「よし、行くわよ!」

 

言葉と同時に予備動作も無く一瞬で間合いを詰めた暁美。足裏に霊力を溜めて爆発的な加速力で移動した訳だが、地面にはその形跡が残っていない

 

「随分しなやかに動ける様になったじゃねーの」

 

「どー……もッ!!」

 

隼斗は間髪入れずに放たれた正拳突きを横に流しながら入り身で躱し、カウンターのストレートを打った

 

「!」

 

「はあっ!!」

 

暁美はこれを左の掌底で打点をずらしながら回転。そのまま後頭部に向け裏拳を放つ

 

「あーらよっと!」

 

隼斗は裏拳に合わせその場で前方に空中回転する事で器用に躱した

 

「まだよ!」

 

「へっ…!」

 

立て続けに繰り出された暁美の回し蹴りと隼斗の後ろ回し蹴りが交差し、均衡する

 

「相変わらずいい動きするなァ暁美」

 

「貴方もね」

 

お互い直様距離を離し、間合いを切る。

両者は自然と笑みをこぼし構えをとった

 

「はあァァァ!!」

 

先に動いたのは暁美。

同じ様に高速で間合いを詰め、突きによる連撃を叩き込む。

一発一発が空気を弾く程の速度で繰り出されているため、まるでマシンガンの様な音が響き渡る。

隼斗はその拳一発一発を正確に捌いていく

 

「そこっ!」

 

「!」

 

急速に身を屈めた暁美の足払い。

俺は反射的に空中へ逃れた

 

「あっ、しまった…!」

 

「…ふぅぅぅ」

 

空中で一瞬動きの制限された隙を突き、暁美が拳を構えた

 

「やあっ!!」

 

拳から爪先まで捻りを加えた正拳突きが隼斗の身体に突き刺さる

 

「!?……隼斗お兄ちゃん!?」

 

吹き飛ばされた隼斗を見て、近くで観戦していた霊夢が思わず立ち上がり隼斗に駆け寄ろうとしたが、即座に暁美が制止させる

 

「待ちなさい霊夢。まだ終わってないわ」

 

「だ、だって……暁美お姉ちゃんに殴られたのに…!」

 

「大丈夫よ。きっちり『躱されてる』から」

 

「えっ?」

 

暁美が向けた視線の先。社殿の屋根の上に何事も無かったかのように隼斗が腰掛けていた

 

「はっはっはー!惜しかったな暁美」

 

高らかに笑う隼斗。

先程まで羽織っていた羽織が宙を舞い暁美の足元に落ちた

 

「はぁ……まさかあの一瞬で変わり身まで使うなんてね」

 

隼斗は攻撃が当たる瞬間、羽織を脱ぎ捨て自身は高速で移動し、その場に残像を残しつつ回避していた。

その様は殻から脱した蝉の如く。

故に『空蝉』と呼ばれている技だった

 

「どうする?まだやるかお嬢さん」

 

「当然でしょ!最低一発は決めなきゃスッキリしないもの」

 

「……なら俺も少し上げてくぜ!」

 

 

 

こうして組手と称した戦は昼頃まで続いた

 

 

ーーー

 

「おっ、この味噌汁誰が作ったんだ?」

 

「私だよ」

 

俺の質問に、隣に座っている霊夢が答える。

今は組手も終わり、昼飯タイムだ

 

「霊夢か〜、お前料理上手くなったなぁ。まだ十歳だってのに大したもんだ」

 

「…へへっ」

 

頭を撫でて褒めてやると、霊夢は嬉しそうに微笑んだ

 

「あーあ、惜しかったのに」

 

焼き魚を解しながらそうボヤく暁美。

結局有効打を当てることが出来ず組手は終わった為、今も若干不機嫌だ

 

「俺だって意地があるからな。まだまだ弟子には負けられん」

 

「オマケに内臓破壊まで外されるなんて…」

 

「知らなかったのか?アレは打点さえズラしちまえば唯の打撃になるんだZE?」

 

「く・や・し・いー!!」

 

「ははっ、ドンマイ(笑」

 

「殴るわよ!?」

 

「おお?やってみろ!」

 

 

 

「二人とも食事中は静かに…!!」

 

 

「「あっ、はい」」

 

 

十歳児に怒られる大人二人の図

 

 

 

 


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