東方万能録   作:オムライス_

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今回から幻想郷編(現代)となります



幻想郷 現代篇
62話 移りゆく幻想郷


 

「はぁー暇ね〜」

 

神社の縁にて、足を投げ出しながらボンヤリと空を見上げる少女。

傍には竹箒が立て掛けてあり、掃除中だったようだ

 

「平和なのはいい事だけど………こうもやること無いと飽きがくるわ〜…平和に」

 

脇の開いた紅白の独特な巫女服に身を包んだ少女は、ため息を漏らす

 

「そんなため息ばかり吐いていると幸せが逃げるわよ?」

 

背後から唐突に掛かった声にも、特に驚いた様子はない

 

「そんな乙女チックな迷信気にする歳じゃないわよ、紫」

 

「……何言ってるの、真っ盛りじゃない」

 

飽くまでドライな返答に呆れつつも指摘したのは、幻想郷の賢者である『八雲 紫』だ

 

「それで、何しに来たのよ?」

 

「冷たいわね〜。折角会いに来てあげたのに」

 

「お帰りはあちらでーす」

 

少女は本殿の正面入口を指しながら紫から視線を外した

 

「ちゃんと用件ならあるから聞きなさいな」

 

「?」

 

「貴方の考案した決闘ルール、早速流行りそうよ」

 

「!……へぇ、暇つぶしで考えた制定が通るなんてね」

 

紫の言葉に少女は一瞬反応を示したが、平静を装うかのように表情を戻した

 

「暇つぶし……ね」

 

「……何よ?」

 

「何でもないわ」

 

紫はスキマを展開し、自身の身体を中に入れた

 

「貴方も素直じゃないわね、『霊夢』」

 

スキマは閉じ、再び境内は静寂に包まれる

 

「………はぁ」

 

 

 

ーーー

 

『スペルカード・ルール』

 

現・博麗の巫女、博麗霊夢の考案した幻想郷内での揉め事・紛争等を解決する為の、所謂決闘で用いられるルールの事。

 

人間と妖怪では力に大きな差があるのでそれを公平にする為に『スペルカード』に自身の技や弾幕をのせる事で戦う

 

飽くまで『遊び』の範囲だが、当然当たりどころが悪ければ死ぬ事もある

 

決闘内容を大まかに言うならば、攻撃手段はカード宣言による技もしくは弾幕のみで、それ以外の攻撃は無し。

どちらかの体力が尽きるか、技全てが攻略されれば負けとなる

 

他にも技より美しさに重点を置くなど変わった風潮もある

 

 

「……昔で言う殺し合いが今ではお遊びか。平和になったもんだ、幻想郷は」

 

俺がスペルカードルールについて聞いたのは、つい先日家に訪ねてきた紫からだった。

何故突然こんなルールを設けたのかは知らんが、確かに幻想郷で浸透していってる

 

俺も今さっき『お遊び』と称したが別に反対している訳じゃない。寧ろ平和的?に揉め事が片付くならいい事なんだろう。

唯、戦うことが嫌いではない奴からすると少し物足りないのかも知れん

 

「やれやれ、変わりゆく時代に追いつこうと必死になるのは年寄りの宿命かね」

 

などと言っているが、実際ノリノリな隼斗。

既に大量のスペルカードを製作中である

 

「んー、技らしい技が鬼道くらいしかないから必然的に破道か縛道に別れちまうな。鬼道使う時も詠唱してるし結局何時もと変わらんなー」

 

そして出来上がったのなら試してみたいのと言うもの。早速試し打ちにいこうかな

 

「ん?」

 

その時隼斗はある異変に気づいた

 

「……やけに暗いな?まだ昼時だってのに」

 

外から入ってくるはずの日の光が極端に弱まり辺りが薄暗くなっている。

隼斗は窓から外の様子を見て驚愕した

 

「な、なんだコリャ!?」

 

今日の天気は朝から快晴。

だが、雲一つ無かった空は紅い霧のようなものに覆われており、日光が遮断されていた

 

ーーー

 

「紅い霧……ってどう考えても自然現象じゃないわね」

 

徐々に空を侵食しつつある紅い霧を睨みながら博麗 霊夢は確信を持ってこれを異変と認知していた

 

「どこの馬鹿か知らないけど面倒な事してくれるじゃない」

 

このままでは幻想郷どころか、外の世界にまで影響が出てしまうと踏んだ霊夢は準備を整える

 

「おーい霊夢ー!!」

 

すると霊夢を遠くから呼ぶ声。

声のした方を見ると、そこには黒と白を強調した服と帽子、金髪の髪をした少女が箒に跨り飛んで来た

 

「あら、魔理沙。久しぶりね」

 

「呑気に挨拶してる場合じゃない!空を変な霧が……!」

 

「そんなの見ればわかるわよ。此れから其れの解決に行くところ」

 

「そうか、なら私も行くぜ!!」

 

「…別にいいけど、足引っ張らないでよ?」

 

こうして異変解決に向かう二人の少女

 

博麗の巫女『博麗 霊夢』

 

普通の魔法使い『霧雨 魔理沙』

 

目指すは霧の発生源と思われる霧の湖

 

 

 

ーーー隼斗が人里を訪れると、早くも紅い霧の影響が出始めていた。

妖気を孕んだその霧は、人体に悪影響を及ぼし体調を崩すものが続出。

人々は家に閉じこもるしかなかった

 

 

 

 

「なん……だと……!?」

 

 

 

『臨時休業』

 

 

 

そんな立札が掲げられた団子屋の前で一人項垂れる隼斗

 

「……………試し打ちの的は決まりだァ」

 

静かに憤怒の炎を滾らせながら、彼も(理由はどうあれ)異変解決へと乗り出した

 

 

 

 


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