東方万能録   作:オムライス_

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今回カチコミ回です
隼斗がガラ悪いです


63話 紅魔館

霧の湖上空を飛ぶ霊夢と魔理沙

 

「あっ!さっきの妖精が言ってた館ってアレじゃないか?」

 

「そのようね」

 

先程霧の湖にいた氷の妖精他一名(何れも瞬殺)の情報から、この先にある館から異変の現況である紅い霧が出ている事を知り得た二人は一直線に向かっていく

 

「さっさと終わらせて帰りましょ」

 

「うわっ…目に悪そうな色だ」

 

やがて見えてきたのは、全体的に紅い配色の館。それを見た二人は思わず目頭を抑えた

 

「目がチカチカするわ。全面真っ赤ってどう言うセンスよ」

 

「霧も紅いし、意外とここの主は吸血鬼かもな」

 

 

〉〉ーー!ーーー!!

 

「ん?やけに騒がしいな」

 

「!…彼処に誰か居るわね」

 

近づくにつれて何やら館の方が騒がしい。

最初に魔理沙が気づき、霊夢が辺りを見渡すと、館の門前に誰か立っていた

 

二人は怪訝に思いながらも、高度を下げ館付近に降り立った

 

 

 

ーーーそして二人は目を丸くする

 

 

「くらァァァァ!!責任者出さんかいワレぇぇぇぇぇ!!! 」

 

「だから駄目ですってば!!」

 

彼女らが見たもの……それは、仁王立ちの姿勢から巻き舌気味に怒声を上げる男と、恐らく此処の門番であろう赤髪の女性

 

二人とも男の方には見覚えがあった

 

「おどれ等の出した霧の所為で団子が食えんのじゃァァァァ!!今すぐ止めんかいコラァァァァ!!」

 

ーーーその男は博麗霊夢の顔馴染みであり、霧雨魔理沙のご近所さんだった

 

 

「「……」」

 

 

二人はそっと浮かび上がり門を越えて館の中へと向かった

 

 

ーー

 

〜???

 

「随分表が騒がしいな」

 

「はい、どうやら人里の者が責任者を出せと捲し立てているようで……直ちに追い返して参ります」

 

「放っておけ、人間一匹美鈴だけで十分だろう。其れよりも館に鼠が二匹紛れ込んだようだ。お前は其方の処理に向かえ」

 

「畏まりました、お嬢様」

 

 

 

 

〜門前

 

未だ続く葛藤に一歩も譲らない両者は互いに睨み合ったまま動かない

 

「……どうやっても責任者を出す気は無いんだな?」

 

「当然です。貴方の様な人にお嬢様を会わせるわけにはいきませんから」

 

お嬢様……此処の主は女か

 

「だったら仕様がねェ……こっちから乗り込んで直接クレーム入れてやるよ」

 

「させると思いますか?」

 

門番の声色が変わり、辺りを覆っていた空気が重くなる。

そしてゆっくりと『構えた』

 

「……へぇ、お前武闘家か」

 

「そうですけど、それが何か?」

 

「いや、珍しいなってよ」

 

対する隼斗も構えをとる

 

「!……貴方も」

 

「……原則として幻想郷の揉め事はスペルカードルールに則って解決する決まりだ。だがそんなもんは飽くまでお遊びの範疇に過ぎない。肉弾戦が得意な者同士それじゃあ些か物足りないだろ?」

 

「ルール無用……という事ですか?」

 

「『お遊び』か『闘い』か……好きな方を選びな」

 

隼斗は敢えて挑発紛いに問いかけた。

その事を理解してか目の前の門番は微笑を浮かべ、答えた

 

「上等ッ!ならば手加減は出来ませんよ!」

 

「決まりだな。精々後悔がない様に本気で来な!」

 

両者の距離は互いに一歩で踏み込める間合いのギリギリ外。どちらかが内に踏み出せば即座に迎撃されても可笑しくない。

それ程空気は張り詰めていた

 

 

 

「紅魔館が門番、紅 美鈴!参ります!!」

 

「団子愛好家、柊 隼斗。受けて立つぜ!」

 

 

美鈴が後ろ足で地面を蹴り付け一気に前に出ると、その勢いのまま拳が放たれる。

隼斗は一歩も動かず重心を前にかけて受け止めた

 

「見た目に反して重い拳だな」

 

「それはどうも」

 

突き出した拳を引き戻し、その交換作用で打ち出されたアッパーを隼斗は上半身だけずらして躱し、胴目掛けてフックを打ち込んだ

 

「…っ!」

 

美鈴は腕を挟んでガードしたものの、その衝撃に顔を顰めた

 

「いい反応だ!」

 

「はあっ!!」

 

隼斗の首目掛けて放たれた回し蹴り。隼斗は当然反応してガードに移るが、途中で蹴りの軌道が変わり、首ではなく側頭部に打ち込まれた

 

「ぐっ…!?」

 

「まだまだ!!」

 

回転の勢いそのままに、下から上へ隼斗の顎を蹴り上げたが、咄嗟に上体を反らすことで直撃は免れた

 

「痛っつ〜!器用な真似しやがって……!」

 

「側頭部に食らって痛いで済む貴方も大概です!」

 

今度は両者同時に動き、拳や蹴りを打ち合う。だが互いに武闘家であり捌きや入り身といった動きを常に行う為、決定打はそう簡単に入らない

 

繰り出された蹴りを捉え、攻撃に移ろうとすればもう片方の蹴りが飛んでくる。

単発で繰り出された拳には必ずカウンターが入れられる。

ある程度パターンの決まった連撃など瞬時に見切ってしまう。

そんな攻防戦が人外の速度・力で繰り広げられていた

 

当然踏み込みの起点となる地面は大きく抉れ、闘いは地上だけでなく空中にまで及んだ

 

「ふっ!」

 

隼斗の打ち出した拳は真っ直ぐ美鈴の顔面に入る。しかし美鈴はそれでも前に出ながら衝撃が伝わり切る前に打点をズラし、隼斗に己の背面部を添える

 

「なっ!?」

 

「ふぅ……」

 

美鈴は短く息を吐き、次の瞬間には強い衝撃を受けて吹き飛ばされる隼斗

 

「がはっ…!」

 

震脚から肩と背中による至近距離からの突進。所謂『鉄山靠』という技だった

 

「腹を支点に内蔵の幾つかに痛手を与えました。暫くはまともに動けないでしょう。医者に行けば助かります、諦めて帰って下さい」

 

「……くっはは、帰れだァ?生意気言ってくれるじゃねェかこの野郎…!」

 

隼斗は喀血した血を吐き捨て立ち上がった

 

「……まだやる気ですか?死にますよ?」

 

「……言ってろ」

 

ブンッ

 

「……!?」

 

刹那、隼斗の姿がブレ始める。

決して高速で動いた訳ではなく、極めて緩やかに、しかし美鈴は隼斗の動きを目で追えなかった

 

「お返しだ」

 

「ぐぅっ…!?」

 

気付いた時には急接近していた隼斗に吹き飛ばされる美鈴

 

「身体引いて衝撃を逃したか。最初反応出来てなかったのにやるじゃねェか」

 

「ゲホッ…!……確かに目では追えませんでしたけどね。私の能力は『気を使う程度の能力』なので」

 

気……ってドラ◯ンボール的な?コイツひょっとしてかめ◯め波とか打てんのかな

 

「……とは言え決して無視できないダメージを負っちゃいましたからね。次で決めさせていただきます」

 

美鈴は構え、身体から視認できる程の闘気を漲らせる。

身体を赤い気が包み込み、彼女から感じる力が飛躍的に上昇した

 

「じゃあそれに打ち勝ったら通っていいんだな?」

 

「いいでしょう……!」

 

それを聞いた隼斗は小さく笑い、この闘いで『初めて』拳に霊力を纏わせる

 

「いざ!」

 

 

「尋常に!!」

 

 

『勝負!!!』

 

 

互いの拳がぶつかり合った

 

 

 

 

門前で横たわる人物。

相変わらず空は紅く、視線を館へと向けると開け放たれた門が風に揺られてギシギシと鳴っている

 

「はぁ〜負けちゃったなぁ」

 

身体から走る痛みに満足に動くことができず、ただ一言呟いた

 

「申し訳ありません……お嬢様」

 

 

 

 





少し伝わりにくい部分があったかと思いますので補足しますと
『「身体引いて衝撃を逃したか。最初反応出来てなかったのにやるじゃねェか」

「ゲホッ…!……確かに目では追えませんでしたけどね。私の能力は『気を使う程度の能力』なので」』

これは気を使う能力により、隼斗の気の流れを感じ取る事で反応出来たという意味です

表現力不足ですいません

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