東方万能録   作:オムライス_

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64話 悪魔の妹

 

「迷った」

 

冒頭からこの一言。

毎度お馴染み柊 隼斗による『初見迷い』が発動し、今自分がどの辺りにいるのかわからず彷徨い歩いていた

 

「どーなってんだよこの館……明らかに外観より広いじゃねーか」

 

最早どの扉から入ってきたのかわからず同じ場所を行ったり来たり

 

「まいったなー。こんな事なら霊夢達と一緒に入るんだった」

 

隼斗は霊夢達の存在に気付いていたが、美鈴と小競り合いをしていた為に敢えてスルーしてしまっていた

 

「一応気配はするんだけど其処に辿り着けない歯痒さときたらもう……」

 

などとブツブツ文句を垂れながら歩いて行くと、目の前に一際大きな扉を見つけた

 

「おっ!この先から魔理沙の気配を感じる…!」

 

知り合いの気配まで辿り着けた喜びから、心なしか歩速が速くなる隼斗。

そしてドアノブに手を掛けた時、改めて中の状況に気が付いた

 

「……戦ってんのか?」

 

この部屋の仕様なのか戦闘音などは聞こえてこないが、強い魔力を二つほど感じた。

片方は魔理沙、もう一方は知らない気配だから此処の住人だろうか

 

隼斗は一応様子見という事で室内に入った

 

「おおっ……でけー図書館だな」

 

室内はこれ又だだっ広い空間が広がっており、莫大な量の書物が棚に並んでいた。

どういう訳か漫画の様な物まである

 

「さーて魔理沙の奴はどこ行ったかなと」

 

特に本に関して興味の無い隼斗は図書館の奥へと進んでいく。

すると中央ホールの様な場所に金髪の後ろ姿を発見した

 

「なんだよ!ちょっと位見たっていいじゃないか!」

 

「ええ、見ること自体は構わないわよ?唯、貴女さっき無断で持ち出そうとしたでしょ?」

 

「失敬だな!少し借りていこうとしただけだ!!」

 

「……貴女自分が侵入者だって自覚ある?」

 

 

 

なんか揉めてんなー。聞き取った内容から察するに魔理沙が悪いっぽいけど

 

魔理沙と対峙してる髪も服装も全体的に紫の女性は溜息を吐きながら手に持っている本を開いた

 

「正直侵入者なんてどうでもいいのだけれど、図書館内での横行は黙認出来ないわ」

 

「私とやる気か?怪我しても知らないぜ…!」

 

互いにスペルカードルールに基づいたカード宣言を行う

 

 

「金符『シルバードラゴン』」

 

 

「魔符『スターダストレヴァリエ』!!」

 

 

両者の弾幕がぶつかり合い、図書館内だけあって爆発音が大きく響く。

一瞬館内の書物が無茶苦茶になるのではと気に掛けた隼斗だったが、本には術式の様なもので障壁が展開されており傷一つ無い

 

「……まっ、アイツらの問題だしほっといても大丈夫だろ。部外者は退散退散と」

 

彼も侵入している時点で部外者ではないのだが、そんな事は御構いなしに弾幕飛び交う図書館の更に奥へと歩いて行った

 

すると下の階に続く階段を発見。

此処が既に地下なので、最深部か?くらいにしか考えていなかった隼斗はそのまま下っていく

 

「……」

 

其処には術式の施された扉があり、中からは強い魔力を感じ取れた。

恐らく何かを閉じ込める為に組まれた術だろうが、扉は半分程『開いている』

 

「随分粗末な管理だな。これじゃあ術の意味無いじゃん」

 

隼斗は興味本位で部屋の中を覗いた

 

 

 

 

「…誰?」

 

部屋の奥から聞こえてきたのは幼さの残る少女の声だった。

 

「誰かいるんでしょ?隠れてないで出てきたら?」

 

「……」

 

別に隠れてる訳でも、隠れるつもりも無い隼斗は堂々と扉を開けて入った

 

「貴方誰?食事にしては早いと思うけど」

 

「俺は飯じゃねーよ」

 

中に居たのは、見た目十歳にも満たない金髪の少女で、背中からは宝石の様な羽が生えている

 

「じゃあお客様?」

 

「ん〜客でもねーな。クレーム言いに来ただけだし」

 

「ぷっ、何それ」

 

少女は小さく笑うと、隼斗の目の前まで近づきマジマジと見つめた

 

「……なんだよ」

 

「貴方は人間?」

 

「ああ、そうだよ」

 

「人間って飲み物の形でしか見たことないの」

 

「そりゃ世間知らずなこった。外歩いた事無いのか?」

 

「無いよ」

 

「あ?」

 

皮肉で言ったつもりなのに肯定されちまった……まずったか?

 

「生まれてから495年間……一度もお外には出してもらえなかったもの」

 

「幽閉でもされてたのか?」

 

先程の術式を施された扉を思い出した

 

「どちらかと言うと軟禁かな。結界も自力で抜けられるくらい柔だし」

 

ああ、じゃあアレはコイツが開けたのか

 

「人様の家庭事情に口出しする気は無いけどよ、難儀なもんだな」

 

「今更いいよ。情なんてかけて貰っても何も変わらないし」

 

声のトーンは変わらないが、明らかに表情が曇った

 

「……お前h「フラン」…あん?」

 

「お前じゃなくて私の名前はフランドール。フランドール・スカーレット。フランでいいよ」

 

「ああ、ハイハイ自己紹介ね。俺の名前は柊 隼斗、適当に呼んでいいぞ」

 

「じゃあ隼斗だね。それで何?」

 

「お前……フランを軟禁してたっつうのは此処の主人か?」

 

一拍置いてフランは答えた

 

「そうだよ。この家の当主であり実の姉でもある、私を閉じ込めた張本人。『レミリア・スカーレット』」

 

 

 

 

 


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