東方万能録   作:オムライス_

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次回の投稿は6月7日になります


では前回に引き続き後編、ドゾ


75話 死を呼ぶ桜(後編)

 

幽香は地に降り立ち、西行妖に向けて歩き出した

 

「あの、さっきは助けてくれてありがとな」

 

その途中で魔理沙が声を掛け、礼の言葉を述べると、幽香は立ち止まることなく視線だけを向け

 

 

「別にいいわ。貴女が死ななかったのは偶々だから」

 

 

「…どう言う事だ?」

 

 

「初見の貴女を敵が味方か判断できる訳無いでしょ?…って事よ。巻き込まれて死にたくないならそこを動かないことね」

 

「なっ…!?」

 

驚く魔理沙に冷ややかな瞳でそう言い放った幽香は、前方の西行妖に日傘の先端を突き付ける

 

「くだらない茶番は此れまでよ。さっさと消えなさい…!」

 

 

 

 

その言葉に反応するかの様に西行妖を取り巻く黒い兵士は一斉にその矛先を幽香に向け、襲いかかった

 

 

「お、おい…!」

 

それを見た魔理沙が慌てて助けに入ろうとした瞬間、一番前を走っていた黒い兵士の集団の首が刎ねられた

 

「あら、意外に脆いのね♪」

 

いつの間にか集団の真上まで移動していた幽香が、内の一匹に日傘を突き刺しながら着地する。見ると、今の今まで魔理沙の前に立っていた幽香は、植物で模った分身であった

 

「来なさい、一対多勢は大歓迎よ」

 

続く群衆を薙ぎ払いながら幽香は舌舐めずりをする。 その光景に魔理沙は茫然と眺めるしかなかった

 

 

霊夢等も同様に、遠目から幽香を観察していた。此れも西行妖の意識が幽香に向いているからこそできた余裕である

 

「あの『妖怪』……急に現れたと思ったら黒いのと戦い出すなんて、一体何者かしら?」

 

「…アレは確か花の妖怪ね。幻想郷内でも相当力の強い大妖怪だってお嬢様が言ってたけど………聞いてた通りだったわね」

 

「あっ、また一角が吹き飛んだ」

 

「あの戦いっぷりからして余程の戦闘狂かしら?怖いわ〜」

 

「嘘つけ亡霊」

 

 

 

 

 

(よし出来た…!紫のと比べて大分時間が掛かっちまったが、幽香が来てくれて助かったな)

 

漸く封印術式を組み上げた隼斗は、下の様子を伺った。幽香は相変わらず集団相手に一歩も退く事なく寧ろ善戦している

 

隼斗は霊力の足場から飛び降りると、幽香の真横に着地した

 

「……封印術式とやらはできたのかしら?」

 

「ああ、今し方な。…そっちの様子はどうだ?」

 

「愚問ね。私がこの程度の奴らに負けるはずないでしょう?」

 

「そりゃ悪かったな。………後は野郎に封印術式をぶち込んでやるだけだ。サポート頼むぜ」

 

「…まっ、仕方ないわね。この借りは大きいわよ?」

 

二人は西行妖を前に再び身構える。

隼斗の掌には封印術式の印が浮かび上がっており、それを西行妖本体に叩き込むことで、再封印が完了する。

故に隼斗は、その術式を保ったまま本体に接近する必要がある為、無駄な戦闘は出来なかった

 

 

 

ーーーゾワッ

 

 

 

「「!!」」

 

その瞬間、西行妖から発する妖気の質が変わった。今まで至る所に散らばっていた意識が、纏めて一点に向けられたようなプレッシャー

 

「な、何だ?黒いのが一箇所に集まってやがる…!」

 

次に隼斗等が目にしたのは、現在数十匹にまで増えた黒い兵士が、二つの形を成す様に集まり始める異様な光景

 

 

「……おいおいマジかよ」

 

 

ゴキゴキッと鈍い音を発しながら黒い兵士は、二匹の巨大な巨人兵となった。

身の丈はざっと見ても十間はあり、腕は両腕合わせて計六本。其々剣や槍に加え、盾も持っていた

 

「……何がどうあっても封印されたくないようね」

 

「……やるしかねェ。行くぞ…!!」

 

 

 

ブオォンッ!!

 

 

同時に駆け出す二人は、早速飛んできた一匹目の剣による斬撃を、身を屈めて躱す。

だがその速度は巨大な見た目に反して極めて速く、二人とて余裕を持って躱し続ける事は困難だった

 

「チッ…!」

 

幽香は舌打ちして一匹の斬撃を弾くと、その頭部まで一気に跳躍し、日傘でぶち抜いた

 

「…!?抜けない……っ!?」

 

だが刺し入れた日傘を逆に絡め取られてしまい、横から盾による殴打を受け、吹き飛んでしまった

 

「幽香ァァ!!……ッ!」

 

下手に攻撃する事が出来ない隼斗は、吹き飛ばされた幽香に駆け寄ることも出来ず、唯巨人兵の攻撃を躱すしかなかった

 

(くそッ!普段ならこんな奴ら…!だがここでヘマしたら全てがパアだ。何とか隙を見て接近しねェと…!!)

 

 

 

隼斗が必死で感情を押し殺しながら策を見出そうとした時だった

 

 

 

 

 

「恋符『マスタースパーク』!!」

 

 

「人鬼『未来永劫斬』!!」

 

 

 

宣言と同時に、巨大レーザーと無数の斬撃が巨人兵二匹を捉えた

 

 

 

「やっぱり黙って引き下がるなんて出来ないぜ!…隼斗!デカブツは私が何とかするから隙を見つけて一気に畳み掛けろ!!」

 

 

「誰だか知らないけど、これ以上幽々子様のお屋敷で好き勝手させない!!」

 

魔理沙と銀髪の少女は其々巨人兵の前に躍り出た

 

「魔理沙……銀髪抜刀斎…!」

 

「誰が抜刀斎よ!私には魂魄 妖夢って名前があるんだから、何処ぞの人斬りと一緒にしないでくれる…!?」

 

何だかんだ初めて名前を明かした妖夢は、隣で吹き出している魔理沙に若干の殺意を向けながら尋ねた

 

 

「この黒い巨人は何なの?」

 

 

魔理沙はニカっと笑い一言で答える

 

 

「敵」

 

 

「なら斬り捨てるわ」

 

魔理沙は箒で飛び上がり距離を保ちながら、得意のパワー弾幕を放つ

 

妖夢は呼吸を整え、振るわれる攻撃の一つ一つを見切り、そして斬撃を加えていく

 

だが二匹の巨人兵の狙いは飽くまで隼斗一人。二人の攻撃など二の次にその猛威を振るった

 

「おい白玉娘!しっかり止めろ!!」

 

「貴女こそ!……って言うか白玉娘って何!?」

 

「お前ら喧嘩してねェで集中しろっての!!」

 

巨人兵は頭が吹き飛ぼうが、身体に風穴が空こうが本体を黙らせない限り永遠に倒す事が出来ない。魔理沙も妖夢も、何とか足止めするものの、後一歩足りなかった

 

 

 

 

「はあァァ!!」

 

 

ズガアァァッ!!

 

 

一匹の巨人兵の腰から上が、横一閃に両断される。更にその力無くズリ落ちる上半身に日傘の先端を突き刺し、そのまま『マスタースパーク』を照射、バタバタと動く下半身を残して一瞬で消し炭になった

 

 

幽香は額から流れる血を拭いながら隼斗に向け叫んだ

 

「今よ!行きなさい隼斗!!」

 

「!」

 

隼斗は足裏に力を込めて一気に跳躍する

 

もう一匹の巨人兵が打ち落とそうと腕を振るうが、魔理沙と妖夢が同時に攻撃を行いそれも阻止した

 

 

「行けぇぇ!隼斗ォォ!!」

 

 

 

 

「……あばよクソッタレ!!」

 

そして隼斗はガラ空きになった西行妖本体に向け、封印術式の組まれた掌底を叩き込んだ

 

 

 

カッ!!

 

 

その瞬間西行妖を中心に眩い光が発し、同時に辺りを包んでいた禍々しい妖気も途絶える。黒い巨人兵は先程までの猛攻を止め、煙のように消え去った

 

 

光が晴れ、その場には再び封印された西行妖が佇んでいた

 

 

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