ーーーあれから途方もない年月が経ち俺の歳も1億歳を超えた。
あの後あった事を簡潔に述べるなら、核爆弾が落とされた地上に残ったのは俺一人だけだった。
当時の妖怪達は全滅。と言うことは、あの日妖怪達は全勢力を掛けて都に襲撃して来たってわけだ。
そしてここからは皆も知っての通り恐竜が姿を現し始めた。
やがて隕石衝突による異常気象により恐竜は絶滅、氷河期に入った。
因みに俺は能力のお陰で恐竜が襲って来ようが撃退できたし、氷河期に入っても少し肌寒いと感じる程度だった
そして現在。
俺は人間の集落を発見して涙腺が緩んでいた。
だって1億年ぶりの人だぞ?今まで途方もない時間を一人で過ごしてきてやっと意思を通わせられる存在に巡り会えるんだと思うと、そりゃ感極まるってもんだ
早速人里に下りようとした瞬間、背後から声が飛んだ
「そこの者止まれ!!」
ーー
「神奈子様、見張りの神が人里に続く山道で侵入者を捕らえたそうです」
「侵入者だと?複数か?」
御付きの巫女の言葉に眉を顰めて確認する、此処 大和の国を治めている神、八坂 神奈子
「いえ、一人のようです」
「ほう、随分と大胆な侵入者だな。で、そいつは何処に?」
「間もなく此方に連行されて来るかと」
っとそこで外が騒がしくなる
「来たか。どれ、たった一人で侵入したという阿呆の顔でも見るとするか」
そう言って立ち上がり、部屋を後にする神奈子。
「神奈子様、侵入者を捕らえました!」
神奈子の姿を確認した神の一人が姿勢を正して報告する。
一言「ご苦労」と言おうとした瞬間、
「神奈子様、侵入者として捕らえられました!」
何故か侵入者である男にも報告された
「貴様!侵入者の分際で軽々しく神奈子様の御名前を呼ぶなど無礼であるぞ!!」
「いいじゃん別に。お前だって呼んでたんだから」
「私は神奈子様直属の部下だからいいんだ!」
「固いこというなよ。ほら本人もああ言ってることだし」
「指を指すな!!それに神奈子様はまだ何も仰ってないだろうが!!」
っと部下の指摘を受けハッと我に帰った神奈子は口を開く
「ゴホンッ。さて侵入者よ、一体何の目的があって此処に来た?」
凛とした声で問いかける神奈子
「いいや、間違いなく聞こえた!寧ろ「様」もいらん!友達だろ?的なノリだった」
「んな訳あるかァァ!!貴様巫山戯るのも大概にしろよ!?」
しかし当の本人は部下と何やら議論をしていて聞いてない。
今度は咳払いを強調し、もう一度同じ問いをする
「ゴホンッ、ウオッホン!あー、侵入者よ、一体何の目的があっt…」
「いや!確かに、多分恐らく、あいつの心はそう言ってた気がする!」
「じゃあそれ聞こえてねェんじゃねえかァァァ!!しかもどんどん自信無くなってるし!」
「おい…」
「大体お前さっきから何だよ。アレか?もしかして俺と友達になりたいのか?」
「ンな訳なーーぶぅ!?」
「なんーーおっ」
突如飛来した柱が顔面に直撃する両者
「貴様ら人の話を聞かんかァァァ!!!」
今日、大和の国に神の怒号が木霊する
・
・
・
「いやー悪い悪い、久しぶりについ熱くなっちゃって」
「それはもういい。と言うよりもお前は何故ピンピンしているんだ?加減したとはいえ私の御柱を顔面に貰ったというのに」
現に同じ目にあった部下である神は数メートル吹き飛んだ後、意識を失った
「まあ頑丈にできてるからな」
そう言う問題か?っと首を傾げる神奈子だったが、考えるのが面倒になったのかどうせ当たりどころが良かったのだろうと勝手に結論付けて話を戻す
「で?お前は何の目的があって此処に侵入した?」
「目的?そんなモンないけど」
「嘘をついても無駄だ。大方他国の神の間者か何かだろう?」
「いや、だからさっきから何言ってんだ?」
なんだよ間者って。神同士でそんな敵情収集みたいな事するのか?
此処に来たのだって偶々だし
「ほう、飽くまで白を切るか。見上げた忠義心だな」
「いやだからさ…」
「ならば此方も力尽くで聞き出すとしよう」
おーい、会話のキャッチボールしよう!
ドッジボールじゃなくってさ
ーー
「で、何か闘技場っぽい何処に連れて来られたわけだが…」
今俺が立ってるのは古代ローマで言うところのコロシアムみたいな所だ。
まあ実際のものより遥かに小さいだろうし、客席もなければ武器を持った対戦相手がいるわけでもない。
いるのは神奈子含む複数の神と何やら神官みたいな奴が俺と向かい合って立っている
「人間よ、今一度お前に弁明の余地をやろう。侵入した目的はなんだ?」
「だから偶々だって」
「そうか……ならば致し方ない。始めろ」
神奈子の合図に目の前に立つ神官が頷くと、右手を前に翳して槍の様な物を生成した。
「人間、口を割らねば命を落とすことになるぞ」
「ンな事言ってもな…」
そうこうしている内に槍を構えた神官が目前に迫り、鋒を俺の顔面に突き立てようとしていた
「まあ当たらないけどな」
軽く首を動かして躱すと、神官は少し驚いた顔をする
「ほぉ、少しは出来る様だな」
神官は改めて構え直すと槍に力を込め始めた。
「はあ!!」
掛け声と同時に連続の突きを放ってくるが、正直俺にとっては遅すぎて欠伸が出るくらいだ。
俺は槍による連撃を避けながら神奈子に話し掛けた
「なあ、もうやめね?言ってんじゃん。俺は偶々此処に立ち寄っただけで、侵入したつもりはなかったんだ」
その光景に神奈子は驚いていた。
先程まで唯の人間だと思っていた者が、神官の攻撃を躱している。更には此方に話しかける余裕さえある。
「ぜえ、はあ、はあ」
見ると神官が息を切らしている
「ありゃ、大丈夫か?」
対する侵入者は息どころか汗一つかいていない。
「……そこまで。お前はもう下がってよい」
「なっ!?人間相手に引けと言うのですか!?」
神奈子の命令に食い下がる神官
「その人間に一撃も与えられなかったのは誰だ?もう一度言う。下がれ」
「くっ……!」
神官は渋々といった感じで下がっていった
「…信用して貰えんのか?」
「良いだろう。ただし」
フワッと俺の前に降り立つ神奈子
「私に勝つことができたらな!」
瞬間、無数の御柱からレーザーが放たれた
「結局戦うのかよ」
それをサイドステップで躱しながら距離を積めて拳を引く
「甘い!!」
今度は俺を取り囲む様に御柱が設置され四方八方からレーザーが射出された
「ほいっと」
「なにっ!?」
だがこれも上に跳ぶ事で回避。
流石に避けられると思っていなかったのか、驚きの声をあげる神奈子
「猪口才な!!」
次に来たのはレーザーによる薙ぎ払い。加えて無数の照射。
空中で身動きの取れない相手には良い手だが、それは常人での話。
「秘技!空中マトリックス!」
次々と襲いくるレーザーを空中で身体を捻りながら回避して着地。
うーん、最近平和で体鈍ってんな〜
少し裾の先が焦げちまった
「…お前ホントに人間か?」
神奈子が顔を引きつらせながら問いかけてきた
「残念。俺は超人だ」
「ちょう…じん?」
聞いたことのない単語に怪訝な顔をする神奈子だが、今説明するのは面倒臭いので強引にに話を終わらせるとしよう
「うしっ!そろそろ仕掛けるぜ!」
「…くっ!」
得体の知れない相手の攻撃宣言に一瞬たじろいだ神奈子だったが、直ぐに迎撃体制に入る。
神奈子の頭上に八つの御柱が円を描く様に配置され、そのまま回転。
円の中心には莫大なエネルギーが溜まっていく
「超人だか何だか知らんがこれで終わりだ!!」
御柱から放たれた極太レーザーは隼斗の眼前まで迫る
「ふっ!」
短く息を吐いた隼斗から繰り出されたのは小さなジャブ
それだけ
たったそれだけの攻撃で大和の神の本気は掻き消された
「はっ……?」
それを見て素っ頓狂な声を漏らし、立ち尽くす神奈子
「…満足したか?大和の神様よォ」
俺はキメ顔でそう言った
神奈子の口調がよくわからん……