東方万能録   作:オムライス_

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以前vs勇儀を書いた際に萃香の描写を端折っ……ゴホンッ
書けなかった為、今回はVS萃香戦をお送りします


78話 VS 小さな百鬼夜行

 

「破道の五十七『大地転踊』!!」

 

隼斗の周囲に岩石が浮かび上がり、一斉に萃香へ向けて放たれた

 

「いきなり小細工か…?」

 

萃香は避けるでもなく、只構える。

すると飛来する岩石は徐々にその形を失い、砂の様に飛散した

 

「残念、囮だ」

 

「わかってるよ!」

 

飛ばした岩と同時に駆け出していた隼斗が目の前に躍り出て拳を振り下ろす。

対する萃香もそれを見越してか後方に跳躍して躱した

 

隼斗は地面に突き刺さった拳を引き抜き、再び空中の萃香目掛け振るった

 

 

 

ガッ!! と拳の先に萃香の足裏が合わさり、下から上へ向かう撃力が殺される。

そのまま隼斗の拳を踏み台にもう一度後方に一回転した萃香はふわりと地面に着地した

 

「ありゃ残念。決まったと思ったんだけどな。やるじゃん」

 

「そっちこそ。普通なら拳が潰れてる筈なんだけどね」

 

萃香は先の攻防時に拳の勢いを利用するのではなく、『一度完全に止めて』から自らの力で跳んでいた

 

 

 

「「…ッ!!」」

 

再びぶつかり合う両者。一瞬で間合いを詰められる二人にとって、その場に留まっている時間は1秒にも満たない

 

 

ヒュガガガガガッ!!

 

大地から空中、また大地と移動しながら激しい打ち合いが行われる。

今夜は無風なのにも関わらず、辺りに小規模は突風が巻き起こり、観戦者達を驚かせた

 

 

「うわっ…!……隼斗と渡り合うなんて、何モンだあのチビ」

 

「コホッコホッ、埃を舞わせないでほしいわね」

 

「あらパチェ、涼しくていいじゃない。ねっ、咲夜」

 

「そ、そうですね(ウチじゃなくて良かった……)」

 

「ちょっと〜神社に傷付けないでよー?」

 

 

 

 

 

「そらぁっ!!」

 

「…!」

 

萃香は乱暴にわかりやすく、隼斗の頭部目掛けて大振りに腕を振るった

 

「なん……ぶっ!?」

 

隼斗は怪訝に思いながらも軽く反って躱すが、その直後に同じ軌道から伸びてくる何かが顔面にヒットした

 

「ひひっ、引っかかったなアホめ!」

 

「おまっ……それ武器だったのかよ!」

 

隼斗が鼻を押さえながら指差したものは、萃香の腕に括り付けられた瓢箪だった

 

「コイツは只の瓢箪じゃないよ!何と少量の水さえあれば酒を生成できると言う素晴らしい伊吹瓢なのだ!」

 

「……いや、それは聞いてねェよ」

 

「ほれほれ〜、余所見してていいのか?」

 

「!」

 

隼斗はふと脚に違和感を感じ、視線を下げる。

そこには一尺にも満たない背丈の、ミニマム萃香が何人も纏わり付いていた

 

「なっ…!?」

 

「スキあり!!」

 

意識が足元に向いた隼斗に向け、跳躍からのドロップキックを見舞う萃香。

隼斗は辛うじて腕を挟み込みガードしたものの、吹き飛ばされ後方の木に背中から激突してしまった

 

「痛ゥ〜くそっ…!」

 

痛みを堪えながら立ち上がると、また脚に萃香の分身が纏わり付いてきていた

 

「ンのチビ!……踏み潰してくれる!!」

 

隼斗はその内の一人を引き剥がし、地面に投げ捨てる。

そして大きく足を振り上げた

 

「ウエエエエエン!!」

 

「……」

 

途端に泣き出す小萃香に対し、(……流石に気の毒だな)と思った隼斗はゆっくりと足を戻した

 

「トリャー!!」

 

「ぐっ!?」

 

しかし他の小萃香が隼斗の身体を這い上がり殴りつけてきた。

手のひらサイズの見た目からは想像も付かないほどの力で殴られ、その表情を歪ませる

 

「わははははー!どうだ!ちっこいとは言え私の分身だ。舐めてかかると怪我するよ!!」

 

 

 

「お、おい!隼斗の奴押されてないか!?」

 

「あの小さな分身一人一人が鬼の怪力を持ってるみたいね…!流石にキツいんじゃないかしら……」

 

「隼斗…!こうなったら私が能力で…!」

 

「やめなさいフラン。一騎打ちの戦いに水をさすのは無粋よ」

 

隼斗が袋叩きにあっているのを見兼ねたフランが、能力を使用する為掌を翳すが、レミリアがそれを制止した

 

「で、でも…!」

 

「いいから見てなさい。私達に勝った男はあの程度じゃやられないわ」

 

「!」

 

 

 

 

 

 

「……破道の五十八『闐嵐』」

 

 

ゴオォォォォッ!!と隼斗を中心に竜巻が発生し、分身を纏めて空の彼方へ吹き飛ばした。

天高く吹き荒れる竜巻は隼斗の手の動きに合わせウネり、萃香本体へ向かう

 

「オマケだ」

 

更に隼斗は『赤火砲』を練り合わせる事で、竜巻に炎を纏わせた

 

「甘いよ隼斗!……せいやぁ!!」

 

萃香は掛け声と共に思い切り地面を殴りつけた。その衝撃に地盤は一気に捲れ上がり、竜巻と萃香の間に壁を作った

 

「お返しのオマケだ♪」

 

更に捲れ上がった地盤に前蹴りを加える事で、竜巻ごと地盤を押し返した

 

「縛道の八十一『断空』」

 

隼斗は目の前に防壁を張り、その攻撃を遮断する。ここで初めてこの戦いに『間』が生じた

 

「……腕を上げたな、萃香。数百年前と比べても動きが大分良くなった」

 

「そりゃあ私は一度負けてるからね。無闇に霧に変化して戦おうものなら、あっという間に結界で捕まっちまうとか、同じ轍は踏まないよ!」

 

そう言って萃香は前方に手を翳す。

すると隼斗の周囲に急激に砂塵が舞い上がり、あっという間に巨大な岩へと変化、隼斗を拘束した

 

「……ッ!」

 

隼斗はすぐに抜け出そうと力を入れるが、中々岩は剥がれない

 

「さっき隼斗が飛ばした岩だ。粉々にした後ずっと周りに漂わせていたのさ。それに岩も一つ一つの密度を濃くしてある。簡単には振りほどけないよ!!」

 

そして萃香は自身に能力を使用する。

両手を天高く掲げた萃香の身体が、みるみる巨大化していき、神社の本殿よりも大きな、マクロ化を果たした。

流石にその光景には観戦組含め、隼斗すらも驚愕した

 

 

 

「……おいおい、ウ○トラマンかよ」

 

 

「さーて隼斗。降参するなら今の内だよ。負けを認めるかい?」

 

萃香は巨大化したまま隼斗を見下ろしそう言った。『いつでも岩石ごと隼斗を打ち砕く準備はできている』と言わんばかりに拳を固く握り締めて

 

 

 

 

未だ岩石に捕らわれたままの隼斗は、微笑を浮かべてから口を開いた

 

「はははっ、萃香。そりゃ些かナメすぎ」

 

「?」

 

 

 

 

ゴパァァァンッ!!

 

突如、隼斗を捕らえていた岩石が砕け散った

 

「……瞬閧」

 

バチバチッと隼斗の身体を電気の様なものが覆い、上着の背と肩部分が弾け飛んだ。

それは肉眼で目視出来る程にまで圧縮された高濃度の霊力。以前に隼斗が吸血鬼姉妹と対峙した時に見せたモノとは違い、手足以外にも其れを纏っている

 

「なっ…!?」

 

そのあまりの圧力に一瞬たじろぎ一歩下がる萃香。逆に隼斗は一歩詰めながら、先と同じセリフを口にした

 

「さァて萃香。降参するなら今の内だぜ。負けを認めるか?」

 

 

 

「!」

 

萃香は拳にあらゆる力を集約させていく。その高密度のエネルギーはかなりの高熱を帯びているのか、周りの空気が揺らいでいる

 

「……降参させてみな、隼斗!!」

 

最早神社どころか、山一つ粉々に出来てしまうのではないかと言う程の力が溜まり、萃香は言葉と同時に其れを振り下ろした

 

 

 

 

 

トンッ

 

「!!?」

 

刹那、身体に拳の先が軽く突き付けられている事に気付いた萃香。しかし、反応するよりも速くそれは放たれた

 

 

 

 

「 無 窮 瞬 閧 」

 

 

 

 

凄まじい轟音と衝撃により、萃香はマクロ化も解かれ、踏ん張る間も無く足が地面から離れた。

そのまま一度も地に触れることなく、後方の木々をなぎ倒しながら弾丸の様に吹き飛んでいく萃香。

薄れゆく意識の中、その勢いを自力では止めることが出来ずにいた萃香を、高速で回り込んだ隼斗が受け止めた

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

「……大丈夫なわけないだろ?………はぁ、負けたよ……降参だ…」

 

掌をヒラヒラと振りながらそう言った萃香は、今度こそ意識を手放した

 

 

 

 

 

 

「……とりあえず一件落着だな」

 

 

 

 

ガシッ

 

 

「ん?だれd……」

 

突然肩を掴まれ、振り返った隼斗は固まった

 

「……」

 

そこには楽園の素敵な巫女が、にこやかな笑顔で立っており、無言でボロボロになった神社を指差していた

 

「……いや、まあ落ち着け霊夢。まずは茶でも飲んでだな」

 

「……」

 

飽くまで無言のまま、笑顔を絶やすことなく立ち続ける霊夢

 

「……この酔っ払いと一緒に直します」

 

「お願いね♪」

 

何事も無かったかのように戻っていく霊夢の後を、萃香を引き摺りながらトボトボと続く隼斗。

そしていつの間にか再開してる宴会を見て、ため息を漏らす

 

「……結局変わってねーじゃん」

 

「はいコレ」

 

縁に腰掛けた隼斗に、霊夢は大きめの盃を手渡すと、酒を注ぎ始めた

 

「霊夢からお酌してくれるなんて珍しいじゃねーか」

 

「一応異変を解決してもらったわけだしね。お疲れ様」

 

「ありがとよ。……でも神社はチャラにはならないんだろ?」

 

「当たり前でしょ?」

 

「……はい」

 

 

 

 


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