隼「基本自給自足。時々人里で採った物を売ったり、日雇いで働かせてもらってるよ。大工とか飲食店とか結構知り合い多いからな!」
主「要はフリーターね」
隼「幻想郷にそんな概念ねーだろ」
夏の宴会騒動から数日経ったある日。
隼斗は人里近くの広場にて、弟子である妹紅の修行に付き合っていた
普段から迷いの竹林の案内人・人里の外での護衛等を行っている妹紅は、時々こうして隼斗を訪ねては稽古をつけてもらっている
「破道の三十一『赤火砲』」
「縛道の八十一『断空』!!」
隼斗の掌から放たれた火球を、妹紅は縛道を使って防いだ
「ッ!」
パキィィィンッ!
しかし展開された防壁は数秒持ちこたえた後、音を立てて崩れてしまう。
防御を突き破って迫る火球に対し、反射的に後方へ跳ぶことで直撃は免れたが、爆風で軽く吹き飛んでしまった
「妹紅、大丈夫か…?」
「痛つつ……やっぱ駄目か〜」
隼斗が駆け寄ると、悔しそうに頭を摩りながら起き上がる妹紅。
身体には若干火傷が見られ、今日の修行で何度目かになる治癒術を師匠から施される
「…ったく。本来なら八十九番以下の破道を防げる『断空』が、三十番台に負けてどうすんだ」
「うっ……そうだけど。……師匠、何かコツとかない?」
「コツ〜?……つっても基本的に破道も縛道も原理は同じだぞ。唯一の違いは霊力のコントロール法。破道なら一撃の威力を高める瞬発性、縛道なら効果を保つ持続性。妹紅は瞬発的過ぎるんだ」
「……じゃあどうすればいいの?」
「見てろ」
隼斗は掌に霊力を込める。すると直径一尺程の球体が形成された。
しかし妹紅はイマイチ理解できず首を傾げて質問する
「………それが?」
「絶えず流動的に放出される霊力を、一定の形に保ち続ける。簡単に見えて、慣れてない内は意外と苦戦するからやってみな」
妹紅は言われるがままに掌に霊力を集中させる
「むむ……!ってあれ?」
しかし球体どころか形を保つことさえ出来ず、ただ霊力を垂れ流すばかりであった。
それでもなんとかコントロールしようと必死に粘るが、出力が強まるばかりで一向に球体が出来上がらない
「くっ……!うぅっ……」
終いには霊力を過度に消費し過ぎた為にその場に膝をついてしまった
「な?意外と難しいだろ?」
「はぁ…はぁ……師匠は初めから出来たの?」
「心配すんな。俺だって昔は霊力すら満足に扱えずに大苦戦したし、霊力の使い過ぎでぶっ倒れた事だってある。そうやって自分の身体で覚えて、何度も訓練してやっと使えるようになったんだ。大事なのは向上心!」
「!…よーし!!」
再び熱が入った妹紅は勢いよく立ち上がり、修行を再開する。
相変わらず歪な形を繰り返すと同時に、さっきより出力が弱い。
隼斗が空を見ると太陽は真上を過ぎており、時刻は昼下がり。
朝からぶっ通しでの修行の為、無理もなかった
「妹紅、ちょいと休憩。人里で飯でも食おうや」
「…あっ、そう言えば朝食も食べてないや」
丁度腹の虫も鳴った妹紅は、修行を中断し隼斗と共に人里へ向かった
・
・
・
〜人里
「おばちゃん、2人なー」
「あら隼斗さんじゃないか。誰かと来るのは珍しいね、娘さんかい?」
「娘!?」
「おいおいおばちゃん、呆けるにはまだ早いだろ」
人里の馴染みある食事処に着き、適当な席に座る二人。
あっけらかんとしている隼斗に対し、妹紅は少し落ち着きがない
「どした?」
「……ねえ師匠、私達親子に見えたのかな?」
「んん?……ああ、さっきのか。どうだろなー、俺だって外観年齢は二十歳位だし、妹紅も十六、七だろ?どっちかっつーと兄妹の方が近いよな」
「きょ、兄妹………」
その単語を聞いた妹紅の頭に、一つのビジョンが浮かぶ
「………………隼斗お兄ちゃん」
「はぁ?」
「あ、やっ…///なな、何でもない何でもない!!」
小声とは言え思わず口に出してしまった言葉にハッと我に返った妹紅は、赤面しながら手を前でバタバタと振った。
するとタイミングよく先程のおばちゃん店員が注文を取りに来た
「ご注文は決まりましたか?」
「俺は旬の焼き魚定食。妹紅は?」
「………同じのでぃぃ」
最早隼斗の顔を直視出来ない妹紅は、最後の方消え入りそうになりながら答えた。
「かしこまりました」と厨房に向かう店員の後ろ姿に、恨みの念を送りながら見送る
〜
「これ美味しいなー!」
しかし注文が来てからはそんな事も忘れ、夢中で食べ始める妹紅。朝から何も食べていない為、羞恥心よりも食欲が勝ったようだ
・
・
「まいどありがとうございました。またのお越しをー」
「師匠、ホントに奢ってもらってよかったの?」
「ああ、気にすんな。これも師匠の務め………ん?アレは」
定食を食べ終え店を出た二人は、ふと目の前の通りで知り合いの顔を見つけた
「……あっ、二人共こんにちは」
少し元気の無い声で挨拶してきたのは、寺子屋の教師、上白沢 慧音だった。
見るとマスクを付けており、心なしか顔も赤い
「どうしたの慧音。風邪?」
「ああ、普段滅多に引かないんだが……夏風邪のようだ」
「苦しそうだな。永琳のところに連れてってやろうか?」
「ありがとうございます。でも八意先生には今し方診て頂いたので大丈夫です」
見ると、手には処方されたであろう薬の入った袋を持っている。
この会話間も咳が止まらないようで、大分まいっているようだ
「慧音は普段から寺子屋で忙しいもんね。暫くは休んだ方がいいよ」
「しかし……子供達が」
「妹紅の言う通りだ。どの道その状態じゃ寺子屋には行けねーだろし、一刻も早く治せ。それまでの間は何とかしてやるから」
「えっ?師匠って先生も出来るの?」
「いや、代行を探す」
ーーー
〜〜
「私が不甲斐ないばっかりにご迷惑を掛けてしまって………本当に申し訳ありません。どうかよろしくお願いします」
「おう任せとけ」
〜〜
これが少し前の会話。
現在隼斗は幻想郷の賢者、八雲紫の屋敷に来ていた。理由は言わずもがな、寺子屋の教師の代行を頼む為だ
「紫ー、いるかー?」
隼斗が知る限りでは、教師の役を務められる程の知識を持った人物は三名。
その内の二人が、この屋敷に住んでいる紫と、その式神の藍である。
後の一人は過去に家庭教師を務めていた経験もあり、何より月の頭脳とまで言われた、八意 永琳であるが、彼女の場合医師としての仕事がある為、隼斗が候補から外した
戸を叩き、ついでに呼びかける。
程なくして戸がゆっくりと開くと、中から藍の式神である橙が顔を出した
「隼斗様?どうかしたんですか?」
「よぉ橙。紫か藍はいるか?」
開いている戸の隙間から中の様子を伺いながらそう尋ねる隼斗に、橙から衝撃の事実が告げられる
「紫様と藍様でしたら年に一度の結界調整に向かわれたのでお留守です」
「えっ……?」
予想外の事実に思わず間抜けな声が出る隼斗
「マジで!?いつ帰って来るんだ!?」
「えーとぉ……そうですね。いつも通りなら丸三日は帰らないと思います」
「マジでェェェェェ!?」
ーーー
紫の屋敷からの帰り道。隼斗は頭を抱えていた。候補の二人が揃って不在。流石に予想だにしていなかった
(どーすっかな………他に頭良さそうな奴は………幽香?イヤイヤ、なんか子供の教育上宜しくない授業とかしそうだ。じゃあパチュリーは………アイツ人前に出たがらねーし、高確率で断られる気がする。アリスも同様……。他には〜〜………!!)
脳内で必死に候補を探す中、一人の人物を思い付く
「そういや霖之助がいたじゃねーか!アイツも頭良いし大丈夫だろ!」
隼斗は早速迷いの森に向かった
・
・
・
「……」
霖之助が営む道具屋、『香霖堂』の前で佇む隼斗
『本日商品調達の為、臨時休業します
店主』
「…………こうなりゃ仕方ねーな」
隼斗は、何かを決心したようにそう呟いた
〜翌日
寺子屋の教室では、慧音が珍しく風邪を引き、数日間寺子屋に来られないと子供達が噂していた
「けーね先生でも風邪引くんだな」
「授業とかどーするんだろう」
「皆でお見舞い行く?」
すると教室の戸が開き、一人中に入ってきた。見慣れない人物の登場に、子供達の視線が一斉に向く
「うーし、朝のHR始めっぞー」
臨時教師、柊 隼斗。in 寺子屋
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次回は29日、月曜日に投稿いたします^ ^