東方万能録   作:オムライス_

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今回の話は『東方永夜抄』をオリジナルストーリーに改変したもの(本編通りだと隼斗が霊夢達or永琳達に説明するだけで終わってしまう為)です

それではどうぞ






82話 月の陰謀

〜???

 

 

「重罪人、蓬莱山輝夜を地上へ追放してから千年と三百………未だその行方は掴めぬか」

 

「その数年後に姿を晦ました八意永琳も共に行方不明のままだ」

 

「ふむ………これだけ長い時間見つからないとなると地上にいるのかも怪しいのでは?」

 

「いや、以前から地上を覆っている術式がその二人を捉えた様子はない。少なくとも『地球上』にいる事は確かだ」

 

「だが一概に確実とは言えないのではないか?」

 

 

 

『………』

 

 

ーーー暫しの沈黙

 

 

「……そう言えば、軍の玉兎が一匹逃げ出したのではなかったか?」

 

「玉兎?それがどうしたと……!」

 

「どうかしたのか?」

 

「……その玉兎が向かった場所は地上。そうだな?」

 

「……成る程な」

 

騒つく会議室で、数名の重役達が顔を見合わせる

 

 

「これは極秘に行う。呉々も、上に勘付かれる事がないようにな」

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

「はぁ……またか。懲りねーな、てゐも」

 

気怠そうに突っ立ちながら、隼斗は迷いの竹林中程にて、ポッカリと空いた穴を前にしてため息を吐いていた

 

彼が歩いてきたであろう道を辿れば、所々穴だらけであり、全て故意に仕掛けられた落とし穴である

 

「毎度ここ来るたんびに仕掛けられてるな。熱心なこった………ん?」

 

本日何度目かになる不発に終わった落とし穴を流し目で見送りながら先に進んでいく隼斗は、前方に『地面から生えている兎の耳』を見つけた

 

 

「………なんじゃアリャ」

 

 

目を凝らしながら近づいていくと、それは生えているのではなく地面に埋もれているのだとわかった。

落とし穴に兎がハマり、そのまま埋もれたか?と思った隼斗は、一先ずその兎耳を鷲掴み……

 

……にはせず、手をズブズブと地面の中に突き入れ、本体を掴んで引っ張り出した

 

 

プラーン

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

 

隼斗はそのままフリーズした

 

何故なら、薄紫色の髪に女子高生の様な格好をした、兎擬きを鷲掴みにしていたからである

 

 

それは相手側も同じな様で、自分は今頭を掴まれて持ち上げられている。

謂わば殺される一歩手前の様な状態だ

 

 

この現場を他者が見れば完全に『狩る者』と『狩られる者』にしか見えない。

知っている人は某生ける屍ゲーの、タ◯ラントを想像するであろうシチュエーション。

隼斗はゆっくりと地面に降ろした

 

 

「……なんかゴメン」

 

 

「……いえ」

 

 

 

 

 

 

「えっ、じゃあお前永琳の弟子なの?」

 

「はい、以前から永遠亭の方でお仕えしてます。尤も、主君は輝夜様ですけど」

 

なんとか気まづさの壁を越えた隼斗と兎耳少女は、同じ目的地である永遠亭を目指して歩いていた。

隼斗はそこで医師をしている八意 永琳から呼ばれ、少女は薬を人里まで売りに出た帰り道で、それぞれ落とし穴の被害にあってしまった

 

暫く歩いていると、漸く永遠亭の一角が顔を出した。ここまで来るのに酷くボロボロの少女と、衣服に汚れ一つ付いていない隼斗。

前述のそれぞれの被害とは、単に落とし穴含め、トラップによる物理的ダメージか、精神的ダメージかの違いである

 

「じゃあ、俺は永琳のトコに用があるから」

 

「はい。私も着替えたら報告の為に向かいます」

 

少女は一礼すると、屋敷の裏の方へ消えた。

隼斗はそのまま玄関を潜り奥へと進み、診察室の立札を確認して中に入った

 

「隼斗、来てくれたのね」

 

「おう。久しぶりだな」

 

「あら、半年くらい私達にとっては微々たるものでしょ?」

 

「ははっ、それもそうか。……そんで話ってのは?」

 

「ここでは何だし、居間に移動しましょうか」

 

永琳は立ち上がり机の上を片付けると、診察室を出た。隼斗も後に続き、長い廊下を歩いて行くと、丁度先程別れた少女が着替えを終えて自室から出てきた

 

「あっ、師匠…!」

 

「あらウドンゲ、帰っていたの?」

 

「はい。すいません、帰ってすぐ報告に向かおうと思っていたんですが………その…」

 

「?」

 

少女はそこまで言いかけ、恥ずかしいのか渋り出したので隼斗が続けた

 

「落とし穴にハマって埋まってた」

 

「うっ……」

 

「……またてゐね、全くあの子にも困ったものだわ」

 

永琳は頬に手を当てて溜息を吐いた

 

 

因みに、その様子を廊下の陰でニヤつきながら眺めている兎耳幼女がいた訳だが、隼斗と永琳は気付いていた為、後に粛清された

 

 

「そう言えばまだ名前聞いてなかったな」

 

「はい?……あの、柊 隼斗さんですよね?」

 

 

「えっ?」

 

 

「えっ?」

 

 

 

 

『………』

 

 

ーーー暫しの沈黙

 

 

「……もしかして覚えてませんか?私の事…」

 

再び二人の間に気まづい空気が漂い始めた時、隼斗は少し考え思い出したかのようにこう言った

 

「あ……もしかして前にゼ◯伝の話題で盛り上がった服部君?やっぱ井戸の見えない床って初見だとビビるよな!」

 

「いや服部君って誰!?覚えてないならそう言ってくださいよ!」

 

「まあまあ、落ち着きなさい服部君」

 

「師匠までー!?」

 

 

 

「……鈴仙・優曇華院・イナバです。以前月で柊教官に指導して頂きました」

 

「ウドンゲは元々月の軍に所属していたの。でも事情があって月を逃亡。この幻想郷に流れ着いたという訳」

 

少女はムスッとしながら自己紹介し、永琳が補足として付け足した

 

「あー、はいはい完全に思い出したわ」

 

「……ホントですか?」

 

「アレだろ?稽古に遅刻した理由が、故障した自動ドアに挟まって抜け出せなかったって言うおっちょこちょいの……」

 

「わあああああああ!思い出さなくていいです!!それにアレは偶々運が悪かっただけですから!」

 

 

 

 

 

ーーー閑話休題

 

「二人とも、これを見て頂戴」

 

そう言って永琳は、居間の卓上に一通の手紙を置いた

 

「……これは?」

 

「差出人は不明。でも出処はわかってるわ」

 

「あの、どうして私まで?」

 

一緒に連れて来られた少女がそう尋ねると、永琳はやや表情を険しくして告げた

 

「それはウドンゲ。届け先が貴女だからよ」

 

「へっ…?」

 

「……」

 

隼斗は黙ったまま手紙を開いた。

内容は地上の者には読む事が出来ない月の言語でこう書かれていた

 

『地上へ逃れた蓬莱山 輝夜と八意 永琳の居場所を突き止めよ。従えば其方の逃亡の罪は帳消しとする。抵抗は無意味である。次の満月の夜、迎えに行く』

 

その場の空気が凍りついた

 

「そ、そんな……」

 

「差出人は言わずもがな、月の連中よ。しかもある程度位の高い重役ってところかしら」

 

「次の満月……ってもうすぐじゃないか?」

 

「ウドンゲ、正直に答えて頂戴。貴女はこの事を知っていたの?」

 

「知りません!そもそもどうして私が……!?」

 

 

 

少女の訴えに一度頷いた永琳は、隼斗に尋ねた

 

 

 

「……隼斗、貴方はこれをどう見る?」

 

「………少なくとも永琳や輝夜に理解のある月読や依姫達がこれを出したとは考えにくい。だとすればそれより下の、重役とやらの独断だろうな」

 

「……そう」

 

 

 

 

ーーー地上に、そして幻想郷に脅威が迫っていた

 

 




時オカのトラウマはわかる人にはわかる内容です。個人的には井戸のリーデットがヤバかった……^_^;


次回投稿日は主の仕事予定次第で変更になるかもです^^;
決まり次第活動報告に載せますので、ご確認下さい

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