東方万能録   作:オムライス_

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今回若干のグロ描写があります。苦手な方はご注意を




86話 それぞれの戦い(前編)

輝夜side

 

 

 

「神宝『ブリリアントドラゴンバレッタ』!!」

 

 

輝夜の前方にカラフルな弾幕とレーザーが放たれる。

文は空中を縦横無尽に飛び回りながら持ち前のスピードで、不規則に動く弾幕の間をくぐり抜けていく

 

 

一通り弾幕が止んだ後、手刀を作った文は輝夜に向けて斜めに振るった

 

 

 

「!」

 

眼前の笹が真っ二つになったのを見て、輝夜は咄嗟に横に跳んだ。

着物の端に切れ込みが入り、後方の竹が音を立てて倒れた

 

「今の、見えなかったわね。もしかして鎌鼬ってヤツかしら?」

 

視認出来ない攻撃にも大して慌てる様子のない輝夜は、逆に興味深そうに尋ねた

 

 

 

 

「…」

 

文は無表情のまま続けて手刀を振るった。

あらゆる角度から連続で鎌鼬を飛ばしていく

 

「……ツレないわね」

 

輝夜の目の前に障壁が展開され、風の鎌を遮断した

 

「見えなくとも、狙いがわかれば防ぐ事は簡単よ」

 

障壁には傷一つ入っておらず、やがて攻撃の手を止めた文はゆっくりと浮かび上がり、次の瞬間には周囲に烈風を巻き起こしながら高速で飛翔し始めた

 

「撹乱する気?……神宝『サラマンダーシールド』!」

 

輝夜の周囲を回るように二つの光玉が現れ、全方向に向けて火炎弾が放たれた

 

しかし驚異的な速力を誇る鴉天狗を捉えることは出来ず、今度は四方八方から空気の弾丸が雨のように降り注いだ

 

「いくらやっても同じ事……!?」

 

障壁を張って防ぐ彼女の身体に異変が起きる

 

(…息が………まさか…辺りの空気を…!?)

 

周囲の酸素濃度が下がり始め、輝夜は酸欠状態に成りつつあった

 

輝夜は堪らず障壁を解き、その場から大きく離れたが、それを狙っていた文に一瞬で追いつかれ、鎌鼬により背部を斬り付けられた

 

「……っ!」

 

ギリギリで身を捻った為に両断は免れたが、艶やかな着物に赤い染みが広がっていく

 

輝夜は追撃を防ぐ為にすぐ様障壁を展開した

 

「くっ…!油断したわね……はぁ、折角の着物が台無し」

 

再び輝夜の周囲から酸素が除外されていく

 

「また同じ手?……少し侮りすぎじゃないかしら」

 

そんな言葉を聞いてか知らずか、文は飛び回りながら『次で確実に仕留めるために』掌へ力を溜め始めていた

 

 

 

 

 

 

「……仕様がないわね。『少しだけ本気出しましょうか』」

 

 

 

輝夜は微笑を浮かべつつも、障壁を解き、酸素の失われていく空間から飛び出した

 

 

 

ゴオオォオオッ!!

 

凄まじい轟音を発しながら背を向ける輝夜に向けて放たれた巨大竜巻は、周囲の物を削り取りながら着弾した

 

 

「……」

 

砂塵が舞い上がり、クレーターの出来た地面を無表情のまま赤い瞳で見下ろす文。

対象は塵すら残っていなかった

 

 

 

そして何故か文の視界がブラックアウトする

 

 

 

 

 

「だーれだ?」

 

「!?」

 

文は自身の目を覆っていた物を払いのけ大きく距離をとった

 

見ると今し方殺したはずの標的が、両手を広げ、払いのけられた姿勢のままクスクスと笑っていた

 

「あら、殺したと思った?残念。私殺されても死なないの」

 

彼女は「それと」と付け加え、ゆっくりと歩みを進めた

 

「いくら死なないって言っても貴女の思惑通りに喰らうのは癪だから、『キッチリ避けといたわ』」

 

「……!」

 

文は再び輝夜の周囲を高速で飛び回り始める。先程よりもスピードが速く、常に弾幕を展開して彼女をその場から動かさない様に立ち回った

 

「いい加減落ち着きなさいな」

 

直後、飛び回る文は小さな弾幕に被弾する

 

「!?」

 

思わず停止した文は表情こそ変化が無かったものの、驚愕した

 

「うふふ、お久しぶり」

 

目の前には先程まで自身が翻弄していた筈の標的が笑みを浮かべながら、『同じ高さ』に浮いていた

 

 

文は確かに地上で立つ輝夜の姿を目撃していた。

それがほんの一瞬。方向転換のために視線を外した刹那の瞬間に『追いつかれていた』

 

「止まってていいの?私の攻撃、始まってるわよ?」

 

その言葉に文が反応した時には既に遅かった

 

 

ーーー否、初めから反応出来ていたとしても避けられる筈が無かった

 

 

彼女の能力の一部。『極限の加速』により、幻想郷最速すらも置き去りにその技は放たれた

 

 

「神宝『蓬莱の玉の枝 -夢色の郷-』」

 

 

虹色に輝く弾幕が迫り、辺り一帯も同様の色に染まった

 

 

 

ーーー

 

 

 

鈴仙side

 

 

 

「わっ!?」

 

 

ガゴンッッ!!っと吸血鬼の拳が振り下ろされ地盤が砕き割れる。

鈴仙はバックステップで下がりながら躱し、手を銃の形にして目の前の敵に照準を合わせた

 

「くっ……速い…!」

 

しかし、見た目幼かろうと吸血鬼。鴉天狗程では無いにしろ、それに近い速力を有している為、攻撃を当てるのも容易ではない

 

フランは四体に分身する技『フォーオブアカインド』を使い、更に場を掻き乱しながら鈴仙へと迫った

 

 

「波符『赤眼催眠』!!」

 

宣言と同時に弾幕が四方八方にばら撒かれる。更に物の波長を操る能力の一部である『狂気の瞳』を発動させ、弾幕を次々分散させる事によりフランの進路を塞いだ

 

 

フランは一瞬速度を緩めるも、手にレーヴァテインを構えると、アカインドと共に弾幕を撃ち落としながら突っ込んだ

 

「!」

 

鈴仙は身構え瞳を紅く輝かせる。

目の前まで躍り出たフラン等は、一斉に攻撃を行った

 

 

 

 

 

ズシャッ!と鮮血が飛び散り鈴仙の身体が四つに裂ける。

地面に血溜まりが広がっていき、重力により、その上にズタズタの身体が落ちてきた

 

 

 

「……」

 

フランはアカインドを解き、尚も無表情で血溜まりを眺めた

 

 

 

 

 

 

「ーーー狂視『狂視調律』!!」

 

「!?」

 

突然フランの後方から壁の様に配置された弾幕が押し寄せた

 

フランは慌てて上空に飛んで躱すが、突如目の前に現れた新たな壁弾幕をモロに受け、吹き飛びながら竹藪に突っ込んでいった

 

「ふぅ……上手くいった」

 

自分の狙い通りに攻撃が決まり、一先ず安堵の息を漏らす鈴仙。

いつの間にか消えた血溜まり、そして不可視にしていた弾幕も、彼女がフランに見せた幻視であった

 

(あの娘、力は物凄いけどあんまり戦い慣れてない感じだった……このまま押し切れば…!)

 

 

 

 

そう思ったのも束の間。

次の瞬間には竹林の一部が爆散して消滅した

 

 

「……」

 

「…ッ!?」

 

そこから拳を身体の前で握り込んだまま近づいてくる少女。

瞳が鈍く輝き、発するプレッシャーが大きくなっていく。

鈴仙は悪寒を覚え、反射的に後方へ跳んだ

 

 

ボンッッ!!と弾ける音が鳴り、一瞬前まで彼女が立っていた空間が爆ぜた。

地面には丁度人一人分の穴が開いている

 

(何っ…!?竹林の爆発といい、対象を爆発させる能力!?)

 

その場の状況だけでは決定的な見解は出せないが、一つだけ言える事があった

 

 

 

 

(あの娘に狙いを定めさせてはいけない…!)

 

鈴仙は走り出し、同時に狂気の瞳を発動させる。弾幕と合わせて幻視による分身を幾つか作るだけでも撹乱する事が出来る

 

(てゐと同じ要領で正気を取り戻すなら、多少危険だけど急接近して瞳を合わせれば……!)

 

長年軍に所属していた過去があってか、敵に対する立ち回り方や、戦闘中に於いて自身を冷静に保つ訓練を受けてきた鈴仙は、飽くまで倒すのではなく無力化を狙っていた。

それが一番被害を最小限に抑えられる選択だとわかっていたからだ

 

 

しかし彼女の行動が最善策とは言えなかった。相手は手数で押されようがそれを力押しでひっくり返す事が出来る吸血鬼……

 

フランは迫り来る分身含め弾幕に応戦すべく高密度の魔弾を周囲に打ち出した。

更にはその手に真紅の大剣を構え、近づく者全てを薙ぎ払った

 

「ならこれでどう!ーーー『幻朧月睨』!!」

 

鈴仙は跳躍し、自身を中心に不規則に停止と消失を繰り返す大量の弾幕+幻覚作用によりフランの五感を狂わせた

 

「……!……!!」

 

フランは平衡感覚を狂わされ、視覚・聴覚すらもグチャグチャの中、せめてもの足掻きとして渾身の魔力を込めた、今までの物とは比較にならないほどの、超巨大な『レーヴァテイン』を形成し、デタラメに振り回した

 

大剣が通過した箇所には高熱と同時に弾幕がばら撒かれ、今まで竹林だった景色が一瞬で更地へと変わる

 

 

 

 

フランは息も絶え絶えに辺りを見渡すと、地面に横たわる標的の姿があった。辺りには何もなく、ひたすら荒野の様な景色が続いている

 

 

標的はピクリとも動かず、自身の感覚が戻っていた

 

 

 

ーーーつまり

 

 

 

『死んだのかァァあ?』

 

 

「!?」

 

頭の中で声が響いた

 

『どこを見てるの?こっちだよぉお……』

 

フランは反射的に振り向いた。

そして狂気化により表情の変化が無いはずの彼女の顔が、驚愕に染まる

 

『ーーー』

 

そこには焼け焦げ、爛れ、最早誰なのか認識出来ないナニかが剥き出しの歯をチラつかせながらニィイと笑っていた

 

 

ゆっくりとフランに向けて腕が伸びる

 

 

身体が動かない

 

 

黒い手が首に添えられる

 

 

悲鳴すら上がらない

 

 

そのまま力が込められ徐々に締まっていく首

 

 

抵抗出来ない

 

 

意識が遠のく

 

 

 

 

死にたくない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくなアアアアアアアア……

 

 

 

 

 

「ーー!ーー!ーーー!!!!」

 

声の出ないまま、フランは絶叫した

 

 

 

 

 

 

 

「あちゃー、やり過ぎたかな?」

 

 

 

パチンッ

 

 

指を弾く音と共にフランは目覚めた

 

「えっ…?………えっ?」

 

状況が飲み込めず放心状態のフランは周囲を見渡した

 

自分は竹林に囲まれた場所に横たわっていた

 

次に目にしたのは、申し訳なさそうに頭を下げる兎耳の少女

 

「………誰?」

 

「大丈夫?ごめんね……少し『幻覚』が強過ぎたみたい」

 

「……幻…覚…?」

 

微かに震える声と身体。

徐々に先程見た悪夢の記憶は薄れていった

 

 

 




次回は永琳and隼斗の戦闘回です

お楽しみに!
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