東方万能録   作:オムライス_

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今回より東方花映塚編です




89話 百花繚乱

 

 

「異変だー!!」

 

 

突如として扉を開け放ちそう叫ぶ白黒魔法使い。睡眠中叩き起こされた隼斗は、ベッドからムクりと起き上がり時計を見る

 

「……『まだ7時』じゃねーか。起こすなら後2時間後にしてくれ」

 

「『もう7時』だよ!…ってそんな事言ってる場合じゃないってば!」

 

「はあ?朝っぱらから何騒いで………異変っつったか?」

 

寝起きで頭が回っていない隼斗は、ついさっき彼女が叫んでいた事を思い出す

 

「いいから外出てみろって。エライことになってるぜ」

 

「……わかったわかった」

 

気怠そうにベッドから這い出た隼斗は、適当な下駄を履いて寝間着のまま外に出た

 

「…………一夜明けて随分華やかな景色になったもんだ」

 

玄関を出てすぐに欠伸をしながらそう呟いた。

目の前に広がっている光景は、寝起きの隼斗から見ても異常だと思える程

 

 

そこには皐月や禊萩、菊や蕗といった、同じ季節間では揃って見ることが出来ないはずの花々が咲き誇っていた

 

「確かにこれは異常だな」

 

「だろ?兎に角原因を探って……」

 

魔理沙はそう言って振り返ったが、隼斗の姿はなかった。

そして視線を家の中へ向けると、いそいそとベッドに潜り込む隼斗の姿を見つけた

 

「じゃ、おやすみ」

 

「おおぉおおおィィ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

青空の下、箒に跨り空を飛ぶ少女と、それにぶら下がりながら便乗する男。

隼斗は今朝から何度目かになる欠伸と溜息を繰り返しながら文句を垂れていた

 

 

 

「ハァ……かったりーな。なんで俺まで駆り出されなきゃならねーんだよ。かったりー……」

 

「二回も言うなよ……。いいじゃんか、どうせ暇だろ?いつもは張り切って異変解決してるじゃん」

 

「別に張り切ってはねーよ。それに今回のは唯花が咲いてるだけで害があるわけじゃねーんだから別にいいじゃんほっとけば」

 

「何があるかわからないだろ?乗っけてやってんだから文句は無しだぜ」

 

「……これ乗っけてるって言うの?」

 

風に揺られながら、隼斗と魔理沙は博麗神社を目指した

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

〜博麗神社

 

「おーい霊夢ー!」

 

「あーあ、降りる時もうちょいスマートに降りてくれよ。最後の方足先が、ガガガガガッてなってたろうが。靴の先微妙に削れちまったよ」

 

「私はいつも通り着地しただけだぜ。霊夢ー!いないのかー?」

 

「賽銭投げたら来るんじゃね?」

 

「そっか。ほいっ」

 

 

 

キンッと指で硬貨を弾く魔理沙。

 

隼斗の財布から抜き取られた硬貨は、放物線を描きながら賽銭箱の中へ吸い込まれていった

 

「……おい、なんで俺のチャリ銭投げた?つーかいつの間に取った」

 

「細かい事は気にしちゃダメなんだぜ」

 

「細かくねーよ窃盗だろーが」

 

 

 

 

そして待つ事数分。未だ巫女の姿はない

 

「あれー?可笑しいな……金にがめつい霊夢ならすぐ飛んでくると思ったのに」

 

「留守なんじゃねーの?とっくに異変解決に向かったとか」

 

「そうかもな。じゃあ私達も行こうぜ…!」

 

「いや、俺帰って寝たいんだけど……」

 

「さあ、レッツラGOー!!」

 

再び箒に跨った魔理沙は、隼斗の襟首を掴んで飛翔した

 

 

 

「……強引な子に育ったもんだ」

 

 

隼斗は宙吊りのまま呟いた

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

「太陽の畑?」

 

「ああ、幻想郷内で『花』っつったらそこだろ。丁度そこの奴とは友達だし」

 

「へー、なんて言う奴なんだ?」

 

「風見 幽香。前にお前も会ったろ。桜異変の時だ」

 

「げっ、アイツか……」

 

「なんだよ、幽香となんかあったのか?」

 

「いや、まあちょっとな。大した事じゃないぜ」

 

「ふーん。まっ、悪い奴じゃねーからよ」

 

 

 

暫く幻想郷の空を飛んでいると、前方に鮮やかな花々が密集している区域を発見した2人。

入り口の立て札には『この先太陽の畑』と書いてあり、隼斗と魔理沙は高度を落としながら畑上空を飛んだ

 

「……そう言えばさ」

 

「うん?」

 

「魔理沙も幽香もデカいレーザー撃つ技を『マスタースパーク』って呼んでるよな。あれは本来そう言う名前の魔法なのか?」

 

「いや、あれは私がそう呼んでるだけだぜ。元は違う人の技だったんだけどな。

……昔妖怪に襲われてた処を助けて貰った事があるんだ。その時にその人が使ってた技がマスタースパークってんだ」

 

「へぇ……じゃあ案外ソイツが幽香だったりするかもな」

 

「うーん……そうか〜?前に会った時は私の事知らないみたいな事言ってたしな……」

 

 

 

「おっ、あそこだ。幽香の家」

 

隼斗の指差す方向には、広大な花畑に佇む一軒の家があった

 

魔理沙は高度を更に落とし、開けた場所に着地する。

隼斗も足が地面に擦れる前に箒から飛び降りていた

 

「おっ、学習したじゃん」

 

「……うっせ。おーい幽香ー!」

 

先の博麗神社同様、今度は隼斗が家に向かって幽香の名を叫んだ。

すると前回とは違い、ガチャリと扉が開き、中から緑髪の女性が出てきた

 

「あら、隼斗いらっしゃい。そろそろ来る頃だと思ってたわよ」

 

「ん?って言うと?」

 

「ちょっと前にも紅白の巫女がやってきたのよ。今回の異変に心当たりはあるかってね」

 

「そんで?」

 

「面白そうだったから態と含みのある言い方をしたら戦闘になったわ」

 

「………そんで?」

 

「博麗の巫女だけあって、人間にしてはそこそこやるんじゃないかしら?でも残念。暫く戦いを楽しんだ後、『やっぱり違った』って言ってどこかへ行ってしまったのよ」

 

「………じゃあ幽香はやってないんだな?」

 

「当然よ。花っていうのは季節毎に色々な姿で咲き誇るのが美しいの。それを一変に咲かせてしまうなんて邪道だわ」

 

幽香は周りに咲く花々を一見した後、ふと自身を見つめる魔理沙に気がつく

 

「……何かしら?」

 

「あっ、いや……何でもない」

 

どうにも煮え切らない返事をする魔理沙を、幽香は暫く見つめた後、日傘を畳んで家の戸を開けた

 

 

 

「……『アレから』少しは上達したかしら?小さな魔法使いさん」

 

「!」

 

そう言い残し、家内へと戻っていった幽香を、魔理沙は黙って見送った

 

「……聞かなくてよかったのか?」

 

「まあその内な。……今は異変に集中だ」

 

 

魔理沙は再び歩き出し、隼斗も後に続いた

 

 

 





次回投稿は来週の木曜日になります
それではまた来週^_^
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