東方万能録   作:オムライス_

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お待たせ致しました!
今回は霊夢の戦闘回になります



96話 天界の我儘娘

 

「……此処が天界って場所かしら」

 

 

黒雲での戦闘を隼斗に預けた霊夢は、ひたすら上空へと突き進み晴れた場所に出た

 

遥か地平線の向こうにまで広がっているのではないかと思える程の雲海に加え、どういった原理かその上に点々と島が浮いている

 

霊夢は一先ず近場の島に降り立ち周囲を探索した

 

「これは……桃?なんでこんな所に沢山実ってるんだか」

 

目の前に立つ桃の木。よくよく見れば浮かぶ島々の至る所に桃の木が立っている

 

 

 

 

 

「貴女が下界の解決屋ね」

 

 

「!」

 

 

 

後方とやや上空。

声のした方を見上げると、注連縄の張られた要石に座りながら此方を見下ろす少女『比那名居 天子』の姿があった。

靡く青髪の上には、桃の装飾が付いた黒帽子を被っている

 

 

「此処の住人は余っ程桃が好きなのね」

 

「そりゃあそうよ。この桃は伝説に残る程の仙果。食べ続ければ霊力や不老長寿を与えるとされる私達の主食だもの。オマケに身体も頑丈になるらしいわよ?」

 

「へぇー、なら高く売れそうね。幾つか持って帰ろうかしら」

 

「残念、この実は唯の人間が食べても意味は無いのよ。って言うか自分が食べるより売る方を先に思い付くなんて貴女がめついわね」

 

「長生きしても貧乏生活のままだったら意味ないでしょ」

 

「ふーん、下界人の考える事はよくわからないわね。まあいいわ、貴女が来たことでこの退屈な生活にも刺激が生まれるでしょ」

 

霊夢はその言葉に反応し、怒の籠った声色で尋ねた

 

「……つまりアンタは退屈凌ぎに私の神社を潰したわけ?」

 

「アレは試し打ちよ。本番はこれから。ほら、貴女って下界で異変が起こった時に解決するのが役目なんでしょ?

だから神社を潰したの。貴女が確実に此処へ来るためにね」

 

天子は傍らから刀身が緋色に揺らぐ剣を取り出し霊夢へと向けた

 

「……そうね。そこまでわかってるなら此れから自分が退治される覚悟くらい出来てるわよね?きっちり神社も元通りにしてもらうから!」

 

「ふふっ、貴女自分が負ける姿を想像しないタイプでしょ?その慢心がどこまで続くか楽しみね!」

 

 

その言葉を皮切りに両者は同時に動き出す

 

要石の上に立ち上がった天子は、気質を操る剣『緋想の剣』を振りかざしながら要石ごと突っ込み、霊夢はソレを先読みしてか後方に飛んだ

 

 

 

 

轟ッ!!

 

 

大地に要石が叩きつけられ、周囲に砕けた地盤が飛び散る

 

土煙が舞う中、霊夢は身体の周囲に札を展開しながら真上に飛翔、そして敵の頭上を取りながら弾幕を放とうとした

 

 

「!」

 

直後、土煙から勢いよく複数の何かが飛び出した

 

 

「はい、囲んだ」

 

やがて視界の晴れた大地から天子が現れ、自身の指をクルクルと回している。

それに合わせ、霊夢を囲むように旋回する複数の要石が、徐々に光を帯び始め弾幕を放ち始めた

 

 

「いくら何でも舐め過ぎよ」

 

霊夢は自身も動きながら躱し、札を四方にばら撒きながら撃ち落としていく。

更に直ぐさま体勢を立て直すと、天子に向き直り印を結んだ

 

 

「!……結界!?」

 

天子の足下から彼女を拘束する為の結界が浮かび上がる

 

「足元がお留守よ。傲慢な天人さん」

 

 

結界はやがて光を帯び始め瞬いた

 

 

「『夢想封印』」

 

 

色とりどりの巨大な光弾が炸裂し、辺り一帯が眩い光に包まれた

 

 

 

 

 

 

「……へぇ、流石解決屋ね。少し驚いちゃった」

 

 

声と共に風切り音が鳴り、辺りを舞っていた砂埃が一瞬で両断された

 

 

「そんな煙みたいな剣で夢想封印を防いだって言うの?」

 

 

霊夢は眉を細め、柄から揺らぐように伸びる刀身を指差した

 

 

「正確には『斬った』のよ。この『緋想の剣』は気質を見極め、そして斬り裂く事で対象の弱い部分を突く事の出来る剣。此れを前にして貴女に何が出来る?」

 

「これから見せてやるわよ!」

 

 

直ぐさま前方に向けて放たれた弾幕。

しかし天子はその場から動かず、自身を護る様に配置した要石でその全てを遮断した

 

 

「火力が足りないわね!打ってくるならこれ位打ちなさい!!」

 

 

要石が瞬き、一つ一つから大量の光弾がばら撒かれる。

対して霊夢は自身の周囲に陰陽玉を複数配置し、応戦するかのように弾幕を打ち返した

 

弾幕が飛び交う中、徐々に距離を詰めた霊夢はオプションである陰陽玉を動かし直接天子に向け振るう。それに合わせ天子も要石を操り、迎え討ちながら緋想の剣を構えた

 

 

「剣技『気炎万丈の剣』!」

 

振るわれた剣撃は一見滅多斬りの様にも見えたが、常人では捉えることの出来ない速度で繰り出された

 

「くっ……!」

 

次々と破壊されていく陰陽玉。

要石に加え、緋想の剣による斬撃は中・近距離に於いて霊夢を防戦一方に追い込んでいく

 

 

「あははは!どう?手も足も出ないでしょ?悔しかったら反撃してみなさいよ」

 

「一々癪に触る物言いね…!だったらお望み通り!!」

 

嘲笑う天子に向けて投擲されたのは数枚の札。札には其々異なった術式が書かれており、天子の周りを囲うように配置された

 

 

「何?弾幕を打つ気なら労力の無駄よ?」

 

 

「残念。そんなヤワな物じゃないわ」

 

 

霊夢の手元にも札が一枚あり、そこに霊力を流し込む事で術は発動した

 

 

「師・直伝『結界破道』」

 

 

周囲を漂う札が円を結ぶように繋がり、一つの結界を形成、更に書かれた『詠唱が浮かび上がる』と、それぞれに封じ込められた霊術が解放される

 

 

「!?」

 

 

カッ!!

 

 

結界内で同時発動された様々な破道が混ざり合い、凄まじい爆発を生んだ

 

 

 

「反則じゃないわよ?結界で囲うまでは時間があった」

 

 

原則として決闘ルールにおける弾幕戦は、ある程度相手が避けられる様、逃げ道を作る必要がある

 

 

「慢心だったのはそっちの方だったわね」

 

 

スペル仕様とは言え、逃げ場の無い近場での破道による一斉照射。

霊夢は静かに構えを解いた

 

 

 

 

 

「……慢心?何のことかしら?これは『余裕』と言うものよ」

 

 

「!?」

 

 

突如として結界が崩れ去り、中から平然と現れた天子は、一瞬にして霊夢の周囲を要石で包囲した

 

 

「要石『カナメファンネル』。本来なら私の周囲に配置して外側に弾を打つ技なんだけど、特別に貴女の真似をしてみたわ♪」

 

「結界をどうやって…!」

 

「あら、さっき説明した筈よ?緋想の剣は気質を見極める。貴女の術もその源は霊力で出来ている。って事はその気を私にとって無害なものに変換してしまえばどれだけ高火力だろうと関係ないって訳♪」

 

「…さっきは火力が足りないとか言っておきながら………やっぱりアンタは癪に触るわ」

 

「ふん……博麗の巫女っていうのも案外、取るに足らない相手だったわね」

 

 

天子が指を鳴らす

 

其れを合図に一斉に放たれた光弾は、一瞬の内に霊夢を呑み込んだ

 

 

「まっ、退屈凌ぎにはなったわ。死にはしないだろうから目が覚めたら帰っていいわよ。……って聞こえてないか」

 

 

 

 

ーーー背を向けた天子が違和感を感じたのはその一瞬後

 

自身の放った弾幕は確実に着弾した。

爆発が起きたのも目にしている

 

 

 

天子は静かに振り返り驚愕した

 

 

「ど、どうなってるのよ……!?」

 

「……ふん」

 

 

霊夢は何事も無かったかの様に『浮いていた』。その衣服に埃一つ付けずに先の攻撃を凌いでいた

 

 

しかし天子が驚いたのはそんな事では無く、目の前に居るはずの霊夢を『視覚でしか認識出来ない』事だった

 

 

「目の前にいるのに気配を感じない…?気味が悪いわね…!!ーーー気性『勇気凛々の剣』!」

 

 

 

緋想の剣の斬撃に合わせて放たれた弾幕を前に、霊夢は避ける動作を取らなかった。

かと言って結界を張って護るわけでも、弾幕で応戦して打ち落とすわけでも無い

 

 

 

 

ーーーただそこに留まり、迫る弾幕は霊夢の身体を透過した

 

 

「はっ!?」

 

「無駄よ。今からアンタは、『私の攻撃をただ防ぐしかなくなる』」

 

「ッ!」

 

 

途端に放たれた複数の陰陽玉に天子は初動こそ遅れたものの、緋想の剣で全て打ち落とし霊夢へと急接近。そのまま剣を振りかざした

 

 

「大方身体を霊体にでもして透過させただけでしょ?でも気質を見極めるこの剣の前では無意味よ!!」

 

 

 

一閃ッ!

 

 

……しかし天子の一撃は空を切った

 

 

「!?そんな馬鹿な…!?」

 

「……今の私は『あらゆる全てから浮いている』。逃げ道の無い弾幕だろうが、弱点を突く剣だろうが、あらゆる事象は私に干渉する事が出来ない。……故に」

 

 

ーーー『 夢 想 天 生 』

 

 

「そ、そんな無茶苦茶な……」

 

 

「言ったわよね?アンタはこれから防御に回るしかなくなるって」

 

「!!」

 

 

気付けば大量の札が周囲を取り囲み、使用者の霊夢ごと天子を狙っていた

 

(マズいッ!防御を……!)

 

「警告を無視して攻撃に回った時点で、既に手遅れよ」

 

 

 

依然として不動の霊夢は、淡々と口にした

 

 

 

「ーーー大結界 『博麗弾幕結界』」

 

 

 

多量な弾幕が一箇所に集中し、この闘いは決した

 

 




主人公(隼斗)以外の戦闘描写は中々難しいですね。
でもそろそろ原主人公の活躍も描きたかったんです(=゚ω゚)ノ

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