1918年、5月。春がもう終わりに近づきかけたころ、ここ帝都ももう初夏の兆しが見えてきていた。
「なぁ聞いたか稲葉。
俺の前の席に座った、2回生に上がって最初にできた友達、
「玉砕者って……あぁ、美兎さんか」
「みんなもいい加減諦めればいいのに。どう頑張ってもあれは堕とせないでしょ」
「ばっかお前、堕とせないからいいんだろうが!」
「……俺にはわかんないなぁ、そういうの」
「まぁ……稲葉だもんなぁ」
勝手に納得されたのが引っかかるが、気にしないことにする。そんな他愛もない話をしていると、鐘の音が4回鳴った。下校時刻を知らせる音だ。
「さて、と。俺はもう行くよ」
「おー、そうか……今日も仕事?」
「まぁね」
「はぁ……よくやるよほんと。流石は社畜」
「はいはいなんとでも言え」
呆れたように口を開く八坂を横目に、手早くしたくを整え、帽子をかぶり教室を後にする。校門を出たところで、ちょうど路面電車が近づくのが見えた。校門から駅までは徒歩で約3分、走れば1分半。駆け足で駅まで向かい、ホームに着くと同時に電車が着いた。車内に乗り込み、一番後ろの座席の端に座る。いつもの場所だ。
電車に揺られること約30分。目的地である〝桜横丁駅〟に着いた。電車を降りて改札を通り抜け、徒歩2分と30秒、バイト先である喫茶店「葉桜」に到着した。
「おはようございまーす」
裏口から入り、事務室を通り抜けてスタッフルームへ。手早く制服に着替えてホールに出る。今のところお客はいない。
「お、稲葉くぅん。今日も頼むよー」
「……涙香さん、煙草はやめてっていつも言ってますよね?」
店長、
「アタシは
そう言いうと涙香さんは手を振ってバックヤードの方に向かって言った。あみんは2つの顔がある。1つはこうして喫茶店として客の憩いの場としてていきょうすること。そしてもう一つは———。
「ミートパイとレモンティーをお願いします」
涙香さんがバックヤードに入ってすぐ入ってきたお客に注文を聞く。
「……砂糖はどうしますか?」
「
この店には5種類の砂糖が置いてある。
「かしこまりました。どうぞこちらへ」
薄暗い廊下を通り、1つの部屋に辿り着く。眩しくない蛍光灯がチカチカと灯り、机をはさんでソファーが2つと、観葉植物が植えられた植木鉢が3つ置いてある。
———この店のもう一つの顔、それは探偵業だ。探偵、と言っても警察の手伝いではない。現実では有り得ない不可思議な事件専門の探偵だ。注文時に決まった注文をすることで依頼人かどうかを判別する。ちなみに、ミートパイはメニュー表には載っていない、
「店長、依頼人です」
お客や依頼人がいる今だは、涙香さんを店長と呼ぶ。俺の前では怠惰なこの人だが、仕事となると人が変わったようになるからだ。だから仕事中は、尊敬の念を込めて店長と呼ぶことにしている。
「あいよ、稲葉くん。コーヒー淹れてきて。2杯ね」
店長の指示を受けて俺はすぐにキッチンに入り、手早くコーヒーを淹れる。コーヒー豆を挽き、ペーパーフィルターを入れてお湯を注ぎ、ドリッパーを温める。挽いた豆10グラムをフィルターの中に入れ、平坦にならす。沸かしたお湯150㏄を粉の中心に落とし、気泡が消えたらまた中心に注ぐ。反応する範囲が広がったら、お湯を〝の〟の字に落としていく。150㏄全て使い切り、ドリッパーを外してカップに移し替える。
「店長、コーヒーッ持ってきました」
2つのカップを起き、ついでにアップルパイも置く。パンプキンパイを出そうと思ったが無かったので、アップルパイにした。
「うむ、ご苦労。ではでは、キミの名前と依頼内容を教えてくれるかい?」
店長はコーヒーを少しだけ啜り、目のまえに座る少年に話しかけた。
「……か、
依頼人、神原さんは少しためらった後、再び口を開けた・
「依頼内容は……親友を殺した犯人を見つけてほしいんです」
初執筆、初投稿です!
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